理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
起立性低血圧、神経因性疼痛、異常感覚を呈した症例の車いす作製
─急性自律性感覚性ニューロパチーの症例を通じて─
廣島 拓也杉山 真理武川 真弓
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p. Eb0646

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抄録
【はじめに、目的】 起立性低血圧と神経因性疼痛、異常感覚を呈した症例の車いす作製を経験した。本症例は急性自律性感覚性ニューロパチーによる起立性低血圧があり、立位姿勢では失神する危険があった。また、座位では殿部の神経因性疼痛・異常感覚が増強し座位困難であった。そこで起立性低血圧を予防し、かつ疼痛なく座位が可能な屋内自走車いすが必要であった。今回、起立性低血圧、神経因性疼痛、異常感覚、駆動方法、家屋環境の因子を考慮した車いす作製までの過程を報告する。【方法】 症例は35歳男性、身長180cm、体重79kgであった。平成22年6月発熱、両下肢全体の皮疹、四肢の疼痛にて発症し近医に入院となった。その後、疼痛増悪、起立性低血圧が顕在化し歩行困難となり、同年8月にリハビリテーション目的で当センターへ転入院となった。四肢の神経因性疼痛はVisual Analogue Scale(以下VAS)で上肢7/10、下肢9/10であった。同年12月に脊髄硬膜外電気刺激療法を施行しVASは上肢7/10、下肢6/10となった。さらに、疼痛を伴う痺れと四肢冷感の異常感覚もあった。翌年2月に車いすを処方し、3月に自宅退院となった。四肢に運動麻痺がなかったが、立位では起立性低血圧が出現するため、実用歩行は困難であった。座位では殿部痛が増強するため、保持時間は約5分で、食事などの日常生活動作に制限が生じていた。車いす駆動時にハンドリムを把持すると異常感覚が増強したため両下肢にて駆動を行っていた。車いす作製目的は連続乗車時間の延長と自宅内を自走することとし、連続乗車時間は食事に要する時間を目安とした。座位では全身倦怠感と視界が霞む低血圧症状が認められた。バックサポートから背部を離し脊柱を伸展させた姿勢では、疲労感が出現し低血圧症状が増強した。症状軽減のためには、バックサポートに寄りかかり、骨盤が軽度後傾・胸椎後弯がやや強い座位姿勢となる必要があった。座位時の疼痛については、坐骨部に圧集中し疼痛が増強されると考え、圧分散させるために厚さ10cmのウレタン素材クッションを選択した。坐骨部の疼痛は軽減されたが、殿部・大腿部が沈み込み、接触面が広くなることとクッションの反発力により、車いす駆動時に異常感覚が増強された。そこで、反発力の弱い、低反発ウレタン素材クッションを選択した。また、両下肢駆動では回転半径が長くなり、自宅内の移動が困難であった。体幹を前傾させ重心を前方に保持して駆動するため、後方への転倒リスクは少ないと判断した。そのため、車軸を前出しし、回転半径を短くした。【倫理的配慮、説明と同意】 発表内容および個人情報の取り扱いについて口頭及び書面にて説明を行い、書面にて同意を得た。また、当センター倫理委員会にて承認を得た(承認番号H23-7)。【結果】 倦怠感と視界が霞む症状を軽減させるため、体幹を後方に10°傾かせ、バックサポート角度は95°とした。張り調整式バックサポートで胸腰椎の形状に合わせた。バックサポート高は肩甲骨下角より3cm下とした。低反発クッションでは静止座位時の神経因性疼痛と車いす駆動時の異常感覚を軽減することができた。車軸位置前出し距離は7cmとした。上記の車いすで疼痛と低血圧を軽減することができた。連続乗車時間は30分以上となり車いす上での食事が可能となった。また自宅内を両下肢駆動で移動可能となった。【考察】 車いす作製目的は、食事に要する時間を車いす上で過ごすことができ、自宅内を自走することとした。車いす作製の過程において的確な評価を行うためには、目的動作と使用環境を明確にすることが重要であると考える。疼痛のように客観的な評価が困難である場合は、車いす上で食事が可能となるなどの生活の変化が評価として重要になると考える。【理学療法学研究としての意義】 起立性低血圧、神経因性疼痛、異常感覚を呈した症例の車いすに関する報告は少ない。このように稀な症例に対する車いす作製の報告を積み重ねることにより、思考過程の体系化に繋がると考える。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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