理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
簡易ドライビングシミュレーターを用いた駐車能力評価
─駐車ソフトを利用した健常者における練習効果─
山本 純一郎平野 正仁金 美恵子斎藤 正洋大場 秀樹山嵜 未音野村 庸子高井 真希子林 泰史武原 格小野 浩
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p. Eb1237

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抄録

【はじめに、目的】 当院では簡易ドライビングシミュレーター(以下:DS)を用いた脳損傷者の自動車運転再開支援を行っている。その一環として自動車運転で走行操作と共に必要な駐車操作に着目して本研究を行った。一般的に駐車操作は難しいと認識され、DSを用いた走行操作の研究報告は見られるものの、駐車操作についての研究はない。そこでホンダ技研工業の協力を元に駐車ソフトを作成し、健常者を対象に1)簡易DSを用いた駐車操作能力評価、2)繰り返し練習による学習効果を検討することにした。【方法】 対象者は当院職員24名(男性16名/女性8名)で、運転免許を保持しない者・1年未満の運転免許保持者・1年以上運転を行っていない者は除外した。年齢34.1±6.8歳(平均±標準偏差)、運転歴14.5±7.2年で、乱数表により対照群と介入群とに分け、当院にある簡易DSに搭載された駐車練習ソフトを用いて測定した。全対象者が1回の駐車練習を行った後、対照群では初回測定→最終測定の流れで計2回、介入群では初回測定→3回練習→最終測定の流れで計5回の駐車を実施した。介入群では毎回の駐車練習後に上空から自動車の軌跡が見渡せるリプレイ機能を用いて、自己操作に対するフィードバックを行った。測定項目は、駐車位置に関する評価として駐車区画中央に対する1)車体の左右偏位距離、2)車体軸の角度、3)切返し回数、時間に関する評価として4)駐車所要時間の4項目とした。両群間の左右偏位距離、車体軸角度、切返し回数、駐車所要時間について初回と最終とを比較検討した。また、各々の測定項目において、同一群内での比較検討も行った。群間の差の比較にはMann-Whitney検定、同一群内の差の比較にはWilcoxon符号付順位検定を用いた。なお、すべての統計処理はSPSS ver11.5J for winを使用し、有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者に本研究の目的と方法を説明し、同意の後に測定を行った。なお、本研究は東京都リハビリテーション病院安全倫理委員会の承認を得た後に実施した。【結果】 対照群12名(男性10名・女性2名・平均年齢34.1±6.3歳・運転歴14.6±6.1年)、介入群12名(男性6名・女性6名・平均年齢34.1±7.6歳・運転歴14.3±8.4年)で両群間の年齢、運転歴には差がなかった。対照群の各測定項目について、左右偏位距離は初回が2.2±19.2cm、最終が2.2±18.9cm、車体軸の角度は初回が0.4±3.1°、最終が1.1±3.3°、切返し回数は初回が1.7±1.0回、最終が2.3±0.9回、駐車所要時間は初回が50.8±23.5秒、最終が54.7±26.4秒であった。介入群の各測定項目について、左右偏位距離は初回が8.2±14.8cm、最終が5.9±19.9cm、車体軸の角度は初回が1.1±3.8°、最終が0.6±2.5°、切返し回数は初回が3.2±1.8回、最終が1.8±1.0回、駐車所要時間は初回が90.2±43.4秒、最終が51.5±22.7秒であった。左右偏位距離と車体軸の角度については、両群間および同一群で有意差はなかった。切返し回数については、初回測定時に介入群で有意に高い値を示し、介入群内で初回に比べ最終測定時に有意に低い値を示した。駐車所要時間については、初回測定時に介入群で有意に高い値を示し、介入群内で初回に比べ最終測定時に有意に低い値を示した。その他、切返し回数・駐車所要時間については、両群間および同一群内で有意差はなかった。【考察】 先行研究において、DSを用いた走行操作における健常者群と頭部外傷者群での比較で、3度ほど同じコースを走ることで学習効果が現れ両群の違いが明らかになったとしている。本研究の測定結果からも切返し回数・駐車所要時間において3回練習が有効であった。切返し回数については、位置に関する測定項目として扱ったが、実際は駐車操作のなかで時間にも大きく関わる中間的な要素であると考えられ、介入群において初回測定時に有意に切返し回数が多かったものの、3回練習にて自己の操作に対するフィードバックができ、短時間で学習効果が高められたと推測できる。駐車所要時間は切返し回数が軽減したしたことと画面上の空間認知や身体的な道具操作の能力が高まり、全体的な駐車能力が向上したことが介入群の駐車所要時間短縮につながったものと推測した。【理学療法学研究としての意義】 障害者自動車運転は、社会参加のうえで意義があり、自動車運転能力の再獲得は重要なリハビリテーションプログラムである。そこで、本研究において駐車能力に着目し、医師、理学療法士、作業療法士などがチームで介入することは、理学療法の研究としても意義があると考える。

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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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