理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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テーマ演題 口述
高齢者に対する不安定板を用いたバランスエクササイズの実施時間による効果の違い
出口 直樹, 岩本 久生, 金澤 浩, 濱田 智, 白川 泰山, 浦辺 幸夫
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p. Ec1044

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抄録
【はじめに、目的】 バランスエクササイズ(以下,エクササイズ)は転倒の予防に有効であり(Hu et al,1999),転倒予防に必要な運動療法である.筆者らは,不安定板を用いた約7分間のエクササイズを考案し,運動器不安定症を有する対象のバランス能力が改善したことを報告した(出口ら,2010).しかし,高齢者に対し,エクササイズ時間の短長で効果に差を認めるかは不明である.本研究の目的は,難易度が統一可能な不安定板を用いたエクササイズを高齢者に実施し,時間の短いものと長いもので効果の違いを検討することである.【対象と方法】 対象は65歳以上の高齢者30名(平均年齢72.3±6.3歳)である.エクササイズはバランスシステムSD(BIODEX社)を用いて実施した.エクササイズはランダムコントロールの項目で、難易度がもっとも高いレベル1に設定した.対象は,不安定なプラットフォーム上で立位姿勢をとり,画面に表示される移動する円の枠内に重心をおさめるものである.このエクササイズを5分間実施する群(以下,5分群)15名と10分間実施する群(以下,10分群)15名に割り付けし,理学療法士の指導でエクササイズを週2回8週間実施した.効果判定は,バランスシステムSDに付属したテスト項目で、動的なバランスを計測する転倒リスク評価を用いた.計測のプロトコルはPatermo et al(2004)の方法を基準に,1回のテスト時間を20秒とし,測定回数を3回とし平均値を算出した.静的なバランス能力として左右の開眼片脚起立時間,歩行能力として10m歩行時間,5m back ward test(以下,5mBWT)をそれぞれ3回測定し最良値を用いた.すべての検査を介入前と介入8週間後に実施した.統計学的処理は,5分群および10分群の介入前後の比較を対応のあるt検定を用いた.また,5分群と10分群における介入前後の改善した差の比較を対応のないt検定を用いて実施して,有意水準を5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究の目的と方法を対象に十分に説明し同意を得た.本研究は(医)エムエム会マッターホルンリハビリテーション病院倫理委員会の承認を得て行った(MRH1124).【結果】 本研究のエクササイズを8週間継続できたものは5分群で15名(脱落者なし),10分群で11名(脱落者4名)であり,5分群と10分群の間で身体的特徴や身体機能に差はなかった.介入前後の比較では,5分群の転倒リスク評価,両側の片脚起立時間,10m歩行時間,5mBWTのすべての項目で有意な機能の向上を認めなかった.一方,10分群では転倒リスク評価(p<0.01),右側の片脚起立時間(p<0.05), 10m歩行時間(p<0.01),5mBWT(p<0.01)で有意な機能の向上を認めたが,左側の片脚起立時間のみ有意な向上を認めなかった(p=0.08).5分群と10分群における介入前後の差の比較は,転倒リスク評価(p<0.01),右側の片脚起立時間(p<0.05), 10m歩行時間(p<0.01),5mBWT(p<0.01)の項目において10分群で有意に大きく改善したが,左側の片脚起立時間のみ有意な改善を認めなかった(p=0.10).【考察】 本研究のエクササイズは難易度をコンピュータで制御することで統一できる.筆者らの先行研究(2007)で,エクササイズの難易度は簡単すぎると効果が少ないことを報告しており,本研究のエクササイズの難易度は13段のうちもっとも難易度が高いものとした.しかしながら,5分間のエクササイズでは8週間行っても動的および静的なバランス能力,歩行能力,5mBWTの改善は認めないことがわかった.先行研究で川本ら(2010)は,5mBWTを転倒群と非転倒群に実施し,転倒群で5mBWTの値が高値であり,転倒リスクを反映したテストだとしている.したがって,本研究の5分間のエクササイズでは,転倒リスクを軽減させることに不十分ではないかと考えた.一方,10分間のエクササイズでは,動的バランス能力,右側の静的バランス能力,歩行能力を向上させ,転倒リスクを軽減させる可能性があるが,4名の脱落者を認めていた.これは,同じ内容のエクササイズを10分間実施することで集中力を低下させ,運動への継続意欲を低下させた可能性や10分群は5分群と比較しエクササイズ時間が長いため対象に対する身体への負荷も大きいことなどが考えられ,これらが10分群で脱落者を出した原因かもしれない.しかし,脱落者についての原因は本研究では不明であるため今後検討が必要である.【理学療法研究としての意義】 高齢者での不安定板を用いたエクササイズの時間について5分間のエクササイズでは,バランス能力,歩行能力,5mBWTの向上を認めず,10分間で効果を認めたことは,理学療法を行う際に有用な情報となると考える.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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