抄録
【はじめに、目的】 昨今、高齢者世帯や要介護者等の増加、障害者の地域生活への移行や待機児童の増加等に対応し、高齢者・障害者及び子育て世帯が安心して生活することができる住まい・住環境の整備の必要性が高まっている。居住の安定確保を推進するとともに、地域の活性化などを図ることを目的に、国が事業の実施に要する費用の一部を補助し支援するという形態で、国土交通省・厚生労働省協業事業として、高齢者・障害者・子育て世帯居住安定化推進事業の提案募集がされた。今回、高齢者・障害者・子育て世帯居住安定化推進事業の特定部門ケア連携型バリアフリー改修体制整備事業(以下、本事業)において、共同事業者として提案の申請に参加し選定を受けた。本事業の概要と理学療法士としての関わりについて報告し、その意義について考察する。【方法】 本事業は、住宅改修グループとして地域のケアの専門家(医師、看護師、理学療法士、作業療法士)と設計者・住宅改修事業者等により団体・グループを構成し、連携して事業を実施することを要件に、その団体・グループが研修・情報提供・普及啓発等の事業を行うことに関しては補助率2/3(上限1000万円/グループ・年)、個々の住宅の改修を行うことに関しては補助率1/2(上限200万円/戸)を補助するという形態で提案が募集された。個々の住宅の改修における対象は、「要介護認定、要支援認定又は障害等級認定を受けている者」、「身体に機能障害や機能低下があり、継続して移動等に困難を伴うと医師が認める者」が居住する住宅とされていた。以上の募集に対して、共同事業者の代表である特定非営利活動法人さっぽろ住まいのプラットフォーム(以下、本NPO法人)を中心にケアの専門家2事業者、設計者5事業者、住宅改修6事業者が共同して提案を申請した。提案内容として、研修については医療・福祉関係者や建築関係者等の各専門職が互いの専門知識を学び、専門家同士の共通言語・知識の共有による意思疎通の向上からバリアフリー改修などの相談改修工事を行う際の実務対応能力向上を目指す内容を計画した。情報提供・普及啓発については、本NPO法人と活動連携を図っている札幌市や住まいに係わる分野の社団法人やNPO法人の窓口・催事において周知を進め、本事業の市民利用の機会拡大に繋がるよう計画した。個々の住宅の改修については、建築士とケアの専門家が依頼に対応し、改修が必要な場合は住宅改修事業者を交え検討会を実施することで適切な対応を確保するよう計画した。理学療法士としては主に個々の住宅の改修の際に、改修しようとする住宅の訪問相談・改修プラン作成への助言・改修工事完了後の評価を担当することとした。【倫理的配慮、説明と同意】 今回の事業報告に関して、共同事業者の代表である本NPO法人の理事長、理事の同意を得た。また、本発表には利用者等の個人情報を特定できる内容は含まれていない。【結果】 学識経験者からなる高齢者・障害者・子育て世帯居住安定化推進事業評価委員会の評価を受け、国土交通省より選定を受けた。【考察】 本事業において理学療法士は、身体機能・ADL能力・QOLなどに関しての専門家であり、対象者と住環境の適合を図れる職種の一つであると認識されているため、医師・看護師・作業療法士とともに事業提案申請の要件の一つであるケアの専門家の一員として選定されたと推察される。対象者の個別性に配慮した適切な住宅改修は、対象者のADL・QOLなどの向上に繋がるだけでなく、介護者の負担軽減に対しても有効であり、住み慣れた住宅・地域での生活を長期に渡り継続していくことの可能性を向上させる。医療・介護・予防・住まい・生活支援サービスを切れ目なく提供する「地域包括ケアシステム」の構築が求められている現状において、理学療法士はサービスの提供というソフト面だけでなく、住環境というハード面に対しても有効なアプローチが可能な職種の一つである。時代の変革とともに理学療法士に期待されることは多種多様になってきている。今後、更なる理学療法の発展のためにもそれぞれの分野において、期待に応えるべく専門職としての責任を果たすことが重要である。また、理学療法士としての知識・技術は更に広域な分野において活用できるものであると考える。【理学療法学研究としての意義】 理学療法士の活動分野の一つとして本事業の報告を行った。理学療法士の参加が求められている様々な事業・活動分野に対して、積極的に参加することは、多面にわたって社会への貢献に繋がると考える。