理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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急性期理学療法実施患者における骨粗鬆症性骨折のリスク評価
田中 直樹斉藤 秀之渡邉 大貴宮本 明輝美後藤 吾郎近野 宏知大山 由紀子金森 毅繁柳 久子長澤 俊郎小関 迪
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p. Gb0786

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抄録
【はじめに、目的】 骨粗鬆症は,骨強度の低下によって骨折リスクが高くなる骨の障害と定義され,近年の高齢化に伴い患者数は増加傾向にある.骨粗鬆症患者に対して運動療法を実施する際のリスクとして骨折があり,斉藤らの報告では関節可動域練習中の3症例,財団法人日本医療機能評価機構が行った医療事故情報収集等事業第13回報告書ではリハビリテーションに関連する事故5症例中2症例で骨折が報告されている.いずれの報告も骨粗鬆症や運動量低下に伴う骨の脆弱化が要因と考察している.このような背景から理学療法実施患者の骨粗鬆症に伴う骨折リスクを評価することは,運動療法時の骨折事故を予防する上で重要であると考えるが,理学療法実施患者を対象とした骨粗鬆症による骨折リスクに関する報告は少ない.そこで本研究は急性期理学療法実施患者の骨粗鬆症性骨折のリスクを評価することを目的とした.【方法】 平成22年12月1日から平成23年2月28日の3か月間に当院急性期病棟に入院した患者で,新規に理学療法を処方された患者を対象に,急性期理学療法開始時にアンケートを実施した.アンケートは,国際骨粗鬆症財団が作成し骨粗鬆症財団が日本語訳した骨粗鬆症リスク1分間テストと対象者の特性情報で構成し,自己および家族による記入,または担当療法士による問診で行った.対象者の特性情報は性別,年齢,身長,体重,入院の契機となった診断,骨粗鬆症治療の有無とした.アンケートで得られた結果をWHO骨折リスク評価ツールのFRAXTM(Fracture Risk Assessment Tool)を用いて主要骨粗鬆症性骨折リスク確率を求めた.FRAXTMは,年齢,性別,体重,身長および骨折歴,両親の大腿骨近位部骨折歴,現在の喫煙,糖質コルチコイド,関節リウマチ,続発性骨粗鬆症,アルコール摂取の有無,大腿骨頚部BMDを用いて10年間の主要骨粗鬆症性骨折リスク確率,大腿骨近位部骨折リスク確率を算出できるツールである.主要骨粗鬆症性骨折リスク確率15%以上が骨粗鬆症の薬物治療の開始基準となっている.FRAXTMの解析は,FRAXTMの対象とならない40歳以下の患者およびアンケート回答に欠損があった患者を除外した患者を解析対象とした。データ分析は記述統計による単純集計を行った。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は院内倫理委員会の承認を得て実施した.また,対象者には本研究の趣旨を説明し同意が得られた上で調査を実施した. 【結果】 アンケートを実施した対象者は462名であり,そのうち40歳以下の患者23名とアンケート回答に欠損があった患者88名を除外した351名を解析対象とした.対象者は,平均年齢70.4±12.2歳,平均身長155.6±10.5cm,平均体重54.4±12.8kgであった.入院の契機となった診断名は,骨関節疾患31.9%(骨折11.1%,その他の骨関節疾患20.8%),脳血管疾患16.5%,心疾患13.4%,悪性腫瘍疾患17.4%,その他21.1%であった.骨粗鬆症の治療を受けていた者は9名であった.FRAXTMにおける主要骨粗鬆症性骨折リスク確率は,5%以下52名,5-10%以下96名,10-15%以下57名,15-20%以下29名,20-25%以下42名,25-30%以下20名,30-35%以下11名,35-40%以下20名,40-45%以下11名,45-50%以下8名,50%以上5名であり,主要骨粗鬆症性骨折リスク確率15%以上は41.6%であった.主要骨粗鬆症性骨折リスク確率15%以上の年代別割合では,50歳代6.7%,60歳代9.8%,70歳代42.2%,80歳代66.4%,90歳代以上76.2%であった.性別別は,男性では主要骨粗鬆症性骨折リスク確率15%以上が16.1%,女性では主要骨粗鬆症性骨折リスク確率15%以上が73.0%であった.【考察】 本研究の結果,新規急性期理学療法実施患者のうち約40%が急性期理学療法開始時に骨粗鬆症の治療対象であり,70歳代で約40%,80歳代で約60%,90歳代で約70%が骨粗鬆症の治療対象であった.このことから,理学療法士は骨粗鬆症による骨の脆弱性に対する認識をより一層深め,運動療法時等の骨粗鬆症性疼痛および骨折事故の防止とともに,医師へのコンサルテーションにも努めなければならないと考える.そのため,より簡便に臨床で骨粗鬆症性骨折のリスクを評価できる本ツールを普及しうる急性期理学療法実施体制の構築が必要であると考える.【理学療法学研究としての意義】 急性期理学療法実施患者の骨粗鬆症性骨折のリスクを評価することが運動療法時等の骨折事故防止につながるのではないかと考える.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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