理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
会議情報

テーマ演題 口述
学習‐評価一体モデルによる実践能力評価の妥当性について
─学内評価と臨床実習成績の比較による分析─
我妻 浩二有馬 慶美郷 貴大
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. Gc1036

詳細
抄録

【はじめに、目的】 学生が有する臨床実践能力を適正に評価することは,学習成果基盤型教育(OBE)の根幹をなす.OBEとはHardenらにより提唱された学習の帰結を重視した教育方法である.理学療法領域の学内教育においては臨床教育と同様に実践能力の向上を教育目標とし,教育介入をおこなっている.しかしながら,学内の学生評価と臨床実習における評価が乖離する学生を多く経験する.臨床評価を基準とした場合,学内における実践能力評価は適正でない,つまり学習帰結を適正に評価できていないということになる.この問題に対して本校では,状況学習法にもとづき症例経験と能力評価が環を成す,学習‐評価一体モデルによる実践能力評価を行っている. 学習‐評価一体モデルによる実践能力評価は,臨床場面を設定し理学療法士役の学生が症例を診断および治療する場面を教員が観察・評価しフィードバックを与える.さらにその後に提出された症例報告書を評価しフィードバックを与える過程を1クールとし,それを2クール行った過程と結果を評価するものである.そこで本研究では,本モデルによる評価結果と臨床実習成績を比較し,本モデルの妥当性を探ることを研究目的とした.【方法】 対象は,3年制理学療法士養成課程に在籍する2年生35名とした.2年次後期に行われる上記モデルを取り入れた授業において,1名の学生に対し2症例の症例基盤型学習を行った.その過程を通して学習‐評価一体モデルにもとづく実践能力の評価を行い,それを学内での実践能力評価結果とした.この授業は,評価実習前に行われたものである.一方,臨床実習成績は,4週間の評価実習において情意面を含めた臨床技能の到達目標を8項目に分類し,それぞれについてVASで評価し,100点満点換算し求めた.なお,学内評価も同様の項目および方法で行った.評価結果の妥当性は,学内評価結果と臨床実習成績をSpearmanの順位相関係数を用いて確認した.なお有意水準は5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】 対象となる学生には臨床実習終了後に十分な説明を行い,臨床実習の成績と学内成績の使用について同意を得た.【結果】 学内評価結果の平均は70.7±10.4点で,臨床実習成績の平均は65.0±8.7点であった.両者の相関係数は0.46となり,正の相関を認めた(p<0.01,95%信頼区間0.16~0.69).【考察】 今回の結果から,学習‐評価一体モデルによる実践能力評価は,おおむね臨床における実践能力を投影していることが確認された.この結果は,複数症例における実践能力を評価したこと,また,学習経過も含めた学生の能力を評価したことに由来すると考えられる.しかしながら,個々の評価項目の精度が十分であるとは言い難い.今回の結果で学内評価と臨床実習成績に大きな乖離のある学生については個々にその要因を探る必要があり,それが妥当性のある評価方法の開発につながると考える.【理学療法学研究としての意義】 学生の実践的な臨床能力を適正に評価することは,学内教育の改善点の明確化に必須である.学内教育と学生の実践的な臨床能力の乖離を改善することは,高いレベルの理学療法士を養成することになる.

著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top