理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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テーマ演題 口述
理学療法学生の高齢者に対するエイジズムの調査
高橋 かおり加藤 仁志佐藤 絢
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p. Gc1039

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抄録
【はじめに、目的】 我が国の高齢化率は2011年に23.3%に達し,超高齢社会となっている.介護を必要とする高齢者は,寝たきりに繋がる疾患が多く虚弱な印象を強めているため,高齢者に対して否定的偏見がもたれエイジズムという言葉が存在している.エイジズムとは,「高齢者を高齢であるという理由で系統的に類型化し,差別する過程」(Robert Butler,1995)と定義されている.高齢者に対する否定的なイメージや態度は,高齢者への接し方や目標設定に悪影響を与える可能性があるため,正しい知識を身につける必要がある.今後,医療に携わる学生は,高齢者に対して適切な知識や実態の把握が必要であると考える.先行研究では,短期大学看護学科の3年生が1年生より否定的偏見をもつことが示唆されている(小川,2001)が,他の研究(佐野ら,2010)によると,デイサービスにおける高齢者看護学実習の前後で比較すると,実習後にエイジズムが弱くなると報告されており,看護学生においては見解が一致していない.また,看護学生を対象とした調査はされているが理学療法学生を対象とした調査はなされていない.本研究では,理学療法学生の高齢者に対するエイジズムを明らかにすることを目的とした.【方法】 対象は,A大学理学療法学科の4学年計209名,1年生55名(男31名,女24名 平均年齢18.4±0.5歳),2年生51名(男27名,女24名 平均年齢19.3±0.5歳),3年生57名(男29名,女28名 平均年齢20.5±0.6歳),4年生46名(男26名,女20名 平均年齢22.0±2.7歳)であった.E.B.Palmoreが作成したThe Fact of Aging Quiz(以下,FAQ)の下位尺度をもたない全3部・75項目のうち,第1部の25項目から成る質問紙を用いてエイジズムに関する調査を実施した.FAQは,加齢についての知識をテストするだけでなく,加齢に対する態度をはかる間接的な尺度としても利用することができる.各学年の正解率を比較するためにTukeyの方法を用いて多重比較した.危険率は5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】 対象者候補に対し,研究の目的,調査方法,参加による利益と不利益,自らの意志で参加し,またいつでも参加を中止できること,個人情報の取り扱いと得られたデータの処理方法,結果公表方法等を記した書面と口頭による説明を十分に行った.同意書への署名により研究参加の同意を得た者を対象者とした.【結果】 FAQの正解率は,1年生59.1±9.8%,2年生58.1±9.8%,3年生62.7±10.7%,4年生62.6±11.6%であった.学年間の正解率に有意差は認められなかった.【考察】 大多数の人は高齢者に対し消極的で,否定的なステレオタイプを持っている(Palmore,1988).そのため,理学療法学生においても高齢者に対し否定的偏見をもっているという仮説を考えたが,有意差は認められず仮説とは異なる結果となった.学年ごとで考えると高齢者に対するエイジズムには変化が生じていると考えられ,それらは知識による変化と実習による変化の二つが挙げられると考えた.知識による変化として,老年医学や高齢者理学療法学などの講義において,高学年になるにつれ高齢者に関する具体的な疾患や障害の知識を習得するため,高齢者に対してより否定的なイメージを持ちやすくなり,エイジズムが強くなったと考えた.一方,実習による変化は,実際に高齢者と接することで実態を把握することができエイジズムが弱くなったと考えた.つまり,二つの側面からみるとエイジズムは変化していると考えたが,この二つの要因の相互作用により,結果的に1年生と4年生の間に有意差がみられなかったと考えた.低学年では,高齢者と接する機会を増やすことで実態の把握ができ高齢者に対するエイジズムが弱くなる可能性があると考えた.また,高学年では,高齢者に関する知識を深めるだけでなく高齢者の実態を正確に把握できる教育内容によりエイジズムが弱くなる可能性があると考えた.今回は横断的研究であったが,今後は縦断的に研究することで対象者の成長過程をみることができ高齢者に接する機会も明確となるため,より信頼性の高い結果が得られると考えた.【理学療法学研究としての意義】 本研究の結果から,理学療法学生に対する高齢者の適切な知識・実態の把握ができる教育体制や高齢者と接する機会を作るなどの環境設定が必要であることが示唆された.以上のことは理学療法教育において意義のある結果であったと考えられる.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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