理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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臨床実習における複数スーパーバイザー制とデイリーノート活用の効果
田中 恩宇野 健太郎古川 一徳
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p. Gd1487

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抄録
【はじめに、目的】 第45回大会において,臨床実習システム構築に向けた取り組みとして,実習生の心理状態について検討し,臨床実習に臨む学生は,実習開始時から極度の緊張状態にあり防衛機制が働いていることについて報告した.これは、特定の学生にみられる特徴ではなく実習生全般にみられる傾向で、実習環境が与える影響が大きいといえる.実習生は,カリキュラム上の課題を形式上クリアしているが,臨床現場で必要な考え方や経験は不十分なまま長期実習を終了している.こうした実習が十分に機能しない現象を改善するため,受け入れ施設側の取り組みとして,実習環境を変えることを目的に“複数スーパーバイザー制”と“デイリーノートを中心とした指導方法”について検討・実行した.これらの取り組みにより,実習生の傾向に変化が見られたので報告する.【方法】 平成23年1月から11月の間に長期臨床実習を行った実習生24名に対し,実習生1名に対し,スーパーバイザー(以下、SV)とサブスーパーバイザー(以下、サブSV)の2名以上で学生指導を担当する複数SV制を実施した.見学等はSV以外のスタッフ(以下,他スタッフ)についても自由に行えるようにし,必要に応じて他スタッフへ質問およびフィードバック可能な体制とした. また,デイリーノートは,以下6項目,1)スケジュール,2)疑問に思ったこと,3)ディスカッションしたこと,4)分かったこと,5)課題,6)感想 について記入後,SVおよびサブSVがフィードバックを行うこととした.実習生による記入時間は,17時から30分間とし17時30分からフィードバックを行い18時30分までに終了する.早めに帰宅させ自宅学習の時間をなるべく多くとれるようにした. 効果判定については,実習終了時のアンケート調査および描画テスト(HTPPテスト,動的HTPテスト等)を用いた.実習生に対するアンケートは,実習最終日もしくはその前日に、SVおよびサブSVに対するアンケートは実習終了後に実施し,昨年の実習生に実施したアンケート結果と比較した.また,描画テストは,臨床心理士による1対1の面談形式で,実習開始3日以内と実習最終週に実施し,心理状態の変化について比較検討した.【倫理的配慮、説明と同意】 当院,倫理委員会の承認および指示に従って研究を行った.また,臨床心理士による面談時に対象者(学生)承認の上で実施した.【結果】 1.アンケート結果 1)実習に対する印象・考えなど(実習生)絶対数が少ないため十分な比較はできないが,前年より「楽しかった」という回答が多い傾向がみられた.2)複数SV制について(SV)指導の偏り防止,様々な意見(アドバイス)が聞ける,SV間で意見交換できる,SV間で気付きがある,気持ちの面での重圧が軽減できるなどの意見があった.2.描画テスト(実習開始時と終了の比較) 人物画:後ろ向きで小さい → 正面を向き大きくなる.目が空白で小さい → 目が大きくなり年齢も上がっている.樹木画:上下で切断(用紙の上と下に収まっていない)→ 四方で切断.【考察】 実習生のアンケートから「楽しかった」という意見が比較的多かったこと,描画テストにおいても,描画サイズの拡大にみられるような活動性の増大傾向がみられたことから,実習環境に対する緊張や不安等が低減し,主観的には自己拡張的,能動的に実習に取り組むことができたものと解釈される.また,実習受け入れ側(SV)は、実習生というより新人理学療法士を受け入れる感覚に近くなったのではないかと思われる。デイリーノート中心の指導では,フィードバック時間の短縮やディスカッションの機会を持つことで,実習生にとっては,その日行うこと(課題)が明確になり自宅学習が行いやすくなったと考える.また,フィードバック方法を定めることで,SVは実習生との距離を保った(入り込み過ぎない)対応が可能となったことや複数SV制により指導の偏りや一人で抱え込むことを防ぐことができ心身負担軽減につながったと思われる.【理学療法学研究としての意義】 近年の実習生の傾向に合わせ,実習方法を検討・試行した.この結果,実習生にとっては学習しやすいというより,過ごしやすい環境を提供することは可能であった.この方法により,早く実習環境に慣れ、ある程度の臨床経験を積むということは可能となると思われる.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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