抄録
【はじめに、目的】 当院では、新人教育システムを2006年度に導入した。それ以前は主に役職者が指導者として教育を担当していた。On-the-Job Trainingで臨床教育を中心に指導し、理学療法士(PT)と作業療法士(OT)はそれぞれの職種毎に教育を行っていた。当時の新人教育は確立されたシステムがなく、指導者は業務負担が増大すること、周囲のスタッフには新人の力量や課題が見えないこと、明確な目標がないことなどが問題点として指摘されていた。そこで、それまでの教育の現状とこれらの問題解決を目的に、新人教育システムを導入した。期間は3年間と定め、1~3年次のそれぞれで臨床、教育、研究および社会性の目標を設定した。当院ではPTOTは同一フロアで業務を行っていること、急性期病院でありPTOT区別なくリスク管理能力を要求されることから、PTOT共通の新人教育システム(システム)とした。また当院はチーム制を採用しており、1~3年次に新人はチームをローテーションする。1年次は主に役職者が指導者として教育を行うが、新人がチームにローテーションすると、役職の有無を問わずチームの指導者が教育を行う方法を採用している。特に中枢チームと救急チームはPTOT混合であり、中枢チームの指導者はPTが、救急チームのそれはOTが担っている。それらのチームに新人がローテーションすると、PT(あるいはOT)の指導者はPTOTの職種を問わずに教育を行う。そこで今回は、当院で導入したシステムの成果と課題、またPT(あるいはOT)がOT(あるいはPT)を指導することについての成果と課題について明らかにすることを目的に調査を行ったので報告する。【方法】 PTとOTにアンケート調査を行った。調査内容は、新人教育を受けたスタッフ以外には「システムを導入した成果と課題」について、PTが新人のOTに指導した経験のあるスタッフにはそれに加えて「PTがOTに指導する際の工夫点と課題」を調査した。また、新人教育を受けたスタッフには「新人のPTがOTの指導者から教育を受けることに対する利点と問題点」について調査した。アンケートの返答は全て自由記載とした。【説明と同意】 対象者であるPTとOTに研究の目的と趣旨を説明し、アンケートの回収をもって同意を得たものとした。【結果】 アンケート結果から、システムの導入により病態理解やリスク管理の徹底、チーム医療の早期体験、目標の明確化と共有化、透明化などが成果として挙げられた。課題としては、指導者に対する教育体制の不備、研究に対する教育が不十分、システムありきのため新人からの意見の吸い上げが不十分、などが挙げられた。PTがOTに指導する際の工夫点は、症例にPTOT区別なく1人の人として何ができるかを強調して学習させた、リスク管理にはPTOTの区別は必要ないと認識させた、OTが指導者においてPTの専門性を追求する質問には返答可能なPTに援助を求めた、などが挙げられた。課題としては、PTがOTに対しての専門的な指導は困難、OTの新人に対するOTの上司からの指導と指導者であるPTからの指導に矛盾がないように配慮する必要があることが挙げられた。新人のPTがOTの指導者から教育を受けることに対する利点は、OTの視点の指導により、OTは何を目標や問題点にしているかを考慮しながら臨床を考えられるようになった、OTから高次脳機能障害や生活リハを学ぶことができた、などが挙げられた。問題点としてはOTの指導者と新人PTの上司との間の情報共有に疑問があった、OTの指導者にPTの専門的な意見を聞くことにためらいがあったことが挙げられた。【考察】 システムを導入したことが第一の成果と考えられた。調査結果から、指導者を教育する体制を整備すること、新人からの意見の吸い上げを十分に行い、常に進化したシステムを構築していくことなどが課題であると思われた。また、PT(あるいはOT)がOT(あるいはPT)を教育することは、概ね良好であると思われた。今後はPTがOTを教育することについての目的と限界について事前に新人に十分な説明をしておくこと、PTの指導者とOTの上司との連携を強化していくことがより重要であることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】 新人を教育するシステムは、到達目標を明確化し、PTおよびOTの質の向上に寄与するものと考えられる。一方、病院の特性に合わせた新人教育であることや、改訂を重ねながらより良いシステムを構築していくことも重要であると思われる。