抄録
【はじめに】 当院は救命救急センターを持つ急性期病院であり経験年数の浅い若年層スタッフが多いことが特徴であり、部署内の卒後教育プログラムを実践している。臨床現場では医療依存度が高いことから、プログラムの内容は卒後1~3年目のPT、OT、STを対象に医学的知識や病態・リスク管理についての座学を中心とした構成となっており、また受講スタッフによる症例検討も実施している。しかし、受講者と指導者の間には少なからず卒後教育の認識や意見の違いが生じていると考える。そこで、両者の認識を明らかにし、より良いプログラム作成に繋げることを目的にアンケート調査を実施したので以下に報告する。【方法】 対象は受講者34名(内訳:PT26名、OT7名、ST1名)、指導者48名(内訳:PT36名、OT7名、ST5名)の2群とした。質問項目は「卒後勉強会の実施頻度はどうですか」などのカリキュラムの実施頻度や構成・内容、「今後取り入れてほしい講義・内容はありますか」などのカリキュラムに対する希望、「卒後勉強会で学習した内容を臨床現場で反映できましたか」の臨床現場での学習効果、症例検討の必要性、卒後教育に対する課題など計13問とした。また臨床現場での学習効果の質問には、受講者の臨床現場での学習効果を指導者に客観的に判断させた。回答は1~5段階評価(不十分である~十分である)を用い、各項目には自由記載欄を設け詳細な理由を記述させた。各質問項目に対し4段階(まずまず十分である)以上の回答を肯定回答として集計し、自由記載欄はKJ法を用いて分類分析した。【説明と同意】 対象者には研究に対する説明を行い、同意を得た上で実施した。またアンケートは匿名性とし個人情報に配慮した。【結果】 アンケート回収率は75.6%、有効回答率は90.3%であった。両者のカリキュラムの実施頻度・構成は肯定回答率73.7%、カリキュラムの内容は肯定回答率89.8%であった。カリキュラムの内容に対し受講者は意見の多い順に「配属科以外の幅広い知識の習得」、「急性期リハで必要な基礎知識の習得」、「配属科以外の知識不足」、の意見が挙げられた。指導者は「臨床現場へ反映しやすい内容」、「各専門分野の知識の習得」、「臨床推論過程の不足」、「講義内容・各スタッフへの配慮」の意見が挙げられた。次にカリキュラムの希望に対し受講者は「その他専門分野の講義」、「治療手技・実技」の意見が挙げられ、その理由は「知識・学習不足」、「治療技術の向上」であった。指導者は「臨床推論過程」、「研究方法」、「機器・検査データの管理、理解」、「接遇・対応」の意見が挙げられ、その理由は「臨床への応用力が必要」「学術・研究活動の啓発」、「医療者としての対応不足」であった。次に受講者の臨床現場での学習効果は肯定回答率35.7%であった。その理由は「知識・理解不足」、「臨床に応用できなかった」であった。指導者側からの受講者の学習効果は肯定回答率32.2%で「知識・理解不足」、「臨床に応用できていない」、「受講者とのコミュニケーション不足」であった。次に症例検討の必要性に対し、受講者は肯定回答率39.1%で、その理由は「意見交換・情報共有できる」、「達成感・学習効果がない」であった。指導者は肯定回答率53.1%で、その理由は「スタッフの理解度が客観的にわかる」、「発表・討論の場の必要性」であった。次に卒後教育の課題に対し受講者は「個人・指導者の知識や技術差」、「配属科以外の幅広い知識の学習」が挙げられた。指導者は「個人間の指導方法の工夫・配慮」、「業務・プライベートによる時間制約」、「受講者の意図・理解度が不明確」が挙げられた。【考察】 カリキュラムの構成や内容に対する受け入れは概ね良好であったが、受講者と比較し、指導者は臨床への応用力だけでなく、より幅広い視点をもつことを重要視していると考えられた。また卒後教育プログラムの学習効果は、両者共に低かったが、互いの意見交換の不十分さも一要因と考えられた。また症例検討の必要性は受講者と指導者で捉え方が異なり、実施方法の再考が必要と思われた。今後の課題として職場環境の特性、受講者・指導者の習熟度により学習方法や指導方法が異なるため、教育方針が統一されていないことが考えられる。よって教育方針やスタッフ間のコミュニケーションを充実させる手段を検討していく必要がある。【理学療法学研究としての意義】 卒後教育をより充実させることは重要であり、特に受講者と指導者の認識の違いを明らかにすることは、より良いプログラム作成のために必要なプロセスであると考える。