理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-P-20
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ポスター発表
糖尿病合併の有無による慢性心不全患者の上下肢骨格筋筋力の差異に関する研究
井澤 和大渡辺 敏平木 幸治長田 尚彦大宮 一人
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抄録
【目的】糖尿病(DM)合併慢性心不全(CHF)例は, 非DM例に比し, 最高酸素摂取量(PeakVO2)や6分間の連続歩行距離などの運動能力は低下する(Tibb et al., 2005., Ingle et al., 2006).一方, CHF患者のPeakVO2と上下肢筋力には正の相関関係があることが明らかとなっている. そこで, 本研究では,“DMを合併したCHF患者の上下肢筋力は非DM例に比し低値を示す ‘という仮説を立て, それを検証すべく以下の検討を行った. 本研究の目的は, CHF患者におけるDM合併の有無による上下肢筋力の差異について明らかにすることである.【方法】1. 対象対象者は, 当院の診療科に外来通院中で上下肢筋力の測定に同意が得られたCHF男性患者372例(平均年齢58.3歳)である. 除外基準は, 診療記録より各指標の調査不能例, 重篤な不整脈, 呼吸器疾患, 整形外科疾患を有する例であった. 全対象者は, DM合併の有無により, DM合併CHF(DM)群101例と非合併(NonDM)群271例の2群に選別された. また, 上下肢筋力の指標は, 握力, 膝伸展および屈曲筋力とし, 各指標の左右最高値の平均をそれらの指標とした. 解析は, 2群間における年齢, Body mass index (BMI), 左室駆出率(LVEF), ヘモグロビンA1c (HbA1c), 基礎疾患, 薬剤などの患者背景および上下肢筋力の各指標の比較には, 対応のないt検定を用いた. 統計学的有意差判定の基準は5%未満とした.【説明と同意】 本研究は, 当大学生命倫理委員会により承認されている. 本研究の実施にして我々は全対象者に研究の趣旨を説明後, 書面にて同意を得た. 【結果】患者背景は, HbA1c以外2群間に差はなかった. DM群はNonDM群に比し, 握力(33.2 vs. 36.7 kgf, P<0.01), 膝伸展筋力(1.58 vs. 1.79Nm/kg, P<0.01)および屈曲筋力(0.88 vs. 1.00 Nm/kg, P<0.01)各指標において低値を示した.【考察】本研究は, DM合併CHF患者の上下肢筋力について非合併例を対照として明らかにすることであった. 患者背景は, HbA1cを除く全てにおいて2群間に差はなかった. しかし上下肢筋力は, DM群はNonDM群に比し低値を示すことが明らかになった. Andreassen et al. (2009)は, DM患者の下肢筋力低下の一つの要因として, DM性多発性神経障害の関与を示している. 本研究では多発性神経障害の有無について調査していないことから上下肢低下の要因について詳細は不明である. したがって, 上下肢筋力の低下の要因については, 多発性神経障害を含め, 今後更なる検討を要する. 一方, 生命予後や日常生活活動レベルの低下に関する運動耐容能5METSレベルの男性CHF患者の握力は35.2kgf, 膝伸展筋力は, 1.70Nm/kg, 膝屈曲筋力は0.90Nm/kgとされている.本研究におけるDM群の上下肢筋力の各指標は, これらの各指標を下回る結果であった. 以上より, DM合併CHF患者の上下肢筋力は, 運動耐容能や日常生活活動レベルの下限値という点からみて著明に低下していることが明らかとなった. しかし本研究は, 横断的研究であるため, 上下肢筋力の向上が, 運動容能や日常生活活動レベルの向上に直接寄与するのかについては言及できない. 【理学療法学研究としての意義】本研究は, DM合併CHF患者の上下肢筋力は, 運動耐容能や日常生活活動レベルの下限値という点からみて著明に低下していることが明らかとなった. 以上より, 本研究の成果は, 理学療法学研究における運動指導方策の一助となる可能性がある.
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© 2013 日本理学療法士協会
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