理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-P-20
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ポスター発表
light touch contactが異なる照度条件における往復歩行に及ぼす影響
島谷 康司島 圭介田尻 梓田中 聡長谷川 正哉金井 秀作沖 貞明小野 武也大塚 彰Paolo MorettiPietro Morasso
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抄録
【はじめに、目的】高齢者の転倒はトイレと居室の往復歩行中にも起こり、特に就寝時間帯には「眩しい」「家人を起こしてしまう」などの理由から約3割が点灯していない状態でトイレへ行っていることが報告されている。周囲が暗く十分に視認できない状況では、何かに触れることによって安心感・安定感を得ることができると考えられる。しかし、暗い環境でも指尖で軽く物に触れることによって安定した歩行が可能であるかどうかは明らかではない。そこで本研究は、異なる照度条件下における往復歩行時のlight touch contact(以下、LTC)の有効性を検証することを目的として検証した。【方法】対象は、20歳代前半の若年健常成人25名(男性12名、女性13名)であった。歩行の安定性指標には、3軸加速度計MVP‐RFA3(MicroStone社製)を使用した。加速度計は被験者の第2仙骨の高さを身体の重心位置とみなしてベルトで身体に固定した。照度の設定は、照度調整が可能な部屋で照度計(照度計LUX-2三和社製)を用い、蛍光灯、豆電球、真暗の照度とした。測定条件は、touchの2条件(LTCとNo contact、以下NC)と照度の3条件(蛍光灯、豆電球、真暗)の組み合わせにより計6条件で行った。LTCはA3サイズの紙を歩行距離と同じ長さにつないだものを垂らしてそれを指尖で触れることとし、touchする高さや身体と紙との距離は被験者の任意とした。なお、紙に触れた指尖にかかる力が1N以下になることを確認した。計測は、被験者が立位で紙に触れた状態(LTC)または上肢を体側においた静止立位(NC)で、被験者自身が身体が安定したと感じた時点で、「はい」と合図をさせて開始し、約5秒間立位を保持した後に歩行を開始させた。歩行路は日常生活を想定し3mの直線往復歩行とした。LTC条件では、方向転換の際に紙から手を離さないように指示し、真暗LTC条件時には指尖が紙から離れていないかどうかを赤外線ビデオカメラで確認した。また、真暗NC条件の場合は安全性を考慮して片道のみの計測とした。データ解析は、歩行開始から終了までの3軸方向の加速度データを抽出し、各施行時間内の加速度データから前後方向(Z軸)・側方(Y軸)・上下方向(X軸)の二乗平均(root mean square、以下RMS)を算出し、さらに、体幹加速度のRMSが歩行速度によって影響をうけることから、RMSを各条件の歩行速度の二乗値で除すことで調整した。統計解析はtouch条件には対応のあるt検定、照度条件には一元配置分散分析を用いた。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は、被験者への本研究の趣旨、参加の自由や同意撤回など、ヘルシンキ宣言に基づいて十分に説明したうえで、書面にて同意を得たのちに実施した。【結果】各条件の歩行速度についてはLTCの真暗条件が高値を示した。NCの真暗条件は片道であるため純粋に比較することはできないが、LTC条件のように高値は示さなかった。すべての照度条件において、NC歩行と比較してLTC歩行が3軸でRMSが有意に低値を示した。LTC条件における照度の影響は、3軸で蛍光灯条件と豆電球条件は同等であり、また蛍光灯条件と豆電球条件は真暗条件と比較して有意に高値を示した。NC条件における照度の影響は、3軸で蛍光灯条件と豆電球条件は同等であり、また蛍光灯条件と豆電球条件は真暗条件と比較して有意に低値を示した。【考察】本研究の結果から、全ての照度条件下、また3軸方向で、LTCのRMS値はNCに比べ有意に低値を示した。shimataniらは静止立位時の照度とLTCの関係について検証し、LTCは照度に依存することなく身体を安定させることを報告している。歩行においても、照度に関係なくLTCは身体動揺を減少させることができ、LTCが歩行の補助になる可能性が示唆された。LTC条件における照度の影響については、蛍光灯条件と豆電球条件のLT歩行が同等であり、LT歩行時には豆電球以上の照度が必要である可能性も示唆された。また、真暗条件が他の2条件と比較して低値を示した。真暗条件のLTC歩行で加速度が減少した理由は、低速歩行により歩幅と歩行率が減少した結果であると推察された。これは真暗条件のNC歩行では他の2条件と比較して高値を示していることからも、歩行速度が大きく影響していると考えられる。【理学療法学研究としての意義】LTC歩行は身体動揺を減少させることが明らかとなり、日常生活における有用性が示唆された。本研究によって、より効果的な日常生活環境を提案することができる可能性があり、理学療法研究として意義のある研究であると考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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