抄録
【はじめに、目的】 当院リハビリテーション療法科では、以前より新人に対し担当の指導者1名を6ヶ月間配置する制度と当科独自のカリキュラムで設定した講義を中心に新人教育を実施してきた。その経過の中で複数の課題が挙げられた。そこで我々は科内全職員で当科の卒後教育制度改善のためのワークショップ(WS)を開催し、WSでの検討内容をもとに科内教育制度の見直しをしたので報告する。【方法】 科内全職員参加で卒後教育に関するWSを開催した。WSに参加したのは当科全職員11名(理学療法士6名、作業療法士4名、言語聴覚士1名)であった。これを職種混合で3つのグループに分け「職場における教育制度に関する意見、提案等を挙げる」ことを指示したうえで意見交換、検討をした。WSのルールとして他者を批判するような発言、表現をしないことと規定した。また、WS実施後に別の機会を設け、WSにおいて提案された意見を具体的に教育制度改善に反映させる計画とした【倫理的配慮、説明と同意】 本研究に関わる症例は無い。本研究の発表にあたり関わった全ての職員に対し個人情報の保護に関する説明の上、同意を得た。(横須賀市立市民病院倫理委員会:承認番号24-29号)【結果】 WSにおいて提案された意見は32件であり、これらを分類したうえで意見交換をした。各グループに共通して挙げられた主要な意見を統合すると「高い専門性を身に付けたい」「いつ・何を教える(教わる)べきか明確にする必要がある」「教育は良好なコミュニケーションの基に実践される必要がある」「他職種との連携ができる(他職種にも認められる)専門職になりたい」「職員同士で意見を共有し、共に問題解決をするための機会が必要」という内容であった。 WSでの検討内容を基に以下の3つの取り組みを開始することを決めた。1.望む、望まれる職員像、専門職像の可視化(キャリアパス) 高い専門性を身につけるという臨床スキルのみではなく、自己開発、教える側の資質、管理、連携、倫理、接遇、研究など職員から提案された具備すべき能力について「何ができるようになるべきか」という具体的プランをパスシートとして可視化した。2.業務規範の見直しと充実 施設への入職とともに知っておくべき事項は以前より規範として存在したが、規定・手順などに関する記載にとどまらず、科内で蓄積された経験上のノウハウを適時更新するものとした。特に安全管理、感染症対策、緊急時対応に関することは実際に発生した事象等を反映するよう毎年更新する運用とした。3.1対1の新人教育からチーム内教育への変革 従来、当科では新人の教育は1名の先輩職員に任せる形式となっていたが、この先輩職員の上位に位置するチームリーダーと、その上位の科長職が定期的に関わり教育の進捗確認や問題解決のための検討を共にすることとした。また、「新人教育は診療単位のチーム内で全員が関わるもの」と定義し指導内容や方針の一致のために、前述のキャリアパスに則って教育をすることを決めた。【考察】 我々は職員からの意見をWSという場で抽出し、職場における卒後教育の在り方について検討した。患者のために役立つことのできる専門職となるため高い専門性を磨きたいという意見は当然と言えるものの、教育には教える側の資質として高いコミュニケーション能力が求められることや科内で統一された教育方針、計画に則って教育が行われることの必要性、さらには他職種と連携する能力についての必要性等についても言及された。 WSで検討された内容についてできる限り改善、解決がされるよう教育制度改善の作業を職員全員で協力して行った。全ての過程に多くの職員が関わることで、各職員が職場における教育制度の在り方や望む、望まれる職員像について再考する機会としたことは重要であると考えた。【理学療法学研究としての意義】 現在、理学療法における施設ごとの卒後教育制度はそれぞれで整備されており統一された具体的指針、方針は無い。施設ごとの教育制度はその業務内容・特性が大きく異なるため、施設が必要性に応じ個々に教育制度を確立、改善するための能力を持ちこれを高めていく必要があり、今回の我々の取り組みは有効であったと考えた。また、他施設の教育制度について情報を得る機会は少ないが、施設ごとの取り組みについて情報共有されることは、各施設における卒後教育制度の充実を図るためには重要であると考えた。