理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-P-26
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ポスター発表
車いすの背もたれ回転軸位置の違いがリクライニング時における臀部ずれ力に及ぼす影響
小原 謙一藤田 大介大坂 裕伊藤 智崇高橋 尚渡邉 進
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抄録
【目的】】近年,ずれ力は褥瘡発生要因の一つとして注目されている.我々は先行研究(2012)の結果から,「車いすの背もたれをリクライニングさせる際に臀部ずれ力が変動するのは,背もたれと体幹・骨盤の回転軸位置の相違のためである」と仮説を立てた.しかしながら,その仮説の検証は今後の課題として残されていた.そこで本研究は,車いすのリクライニング時における臀部ずれ力と背もたれからの力の変動を測定し,上述の仮説を検証することで,リクライニング車いすでの褥瘡発生予防の基礎的資料とすることを目的に実験を行った.【方法】対象者は,健常男性12名(年齢:23.6±6.3歳,身長:173.1±3.1cm,体重:68.7±8.5kg)であった.電動リクライニング機能付き実験用椅子(背もたれ高:97cm,座面奥行き:40cm,座面角度:0度,リクライニング角速度:秒速3度)の座面上に床反力計を置き,その上で背もたれに後頭部及び身体背面が接するように座る安楽座位を測定肢位とした.この椅子は,背もたれと座枠の接合部にL字型の部品を差し込み調節することで,背もたれと座枠の位置関係を変えることなく,背もたれ回転軸位置を変化させることが可能である.測定肢位における臀部は,背もたれと仙骨後面の距離を3cmの位置とした.さらにずれ力に対する下肢による抵抗をできる限り減ずるために,下腿の向きが鉛直方向となるように足部位置を設定し,足部の下にはローラー板を設置した.実験条件である背もたれ回転軸の位置は,座面後端で背もたれとの交点(後方軸)と,そこから13cm前方(前方軸)の2条件とした.臀部ずれ力の測定には,40cm×40cmの床反力計(共和電業社製座位解析システムK07-1712)を使用し,周波数100 Hzでデータサンプリングを行った.背もたれからの力の測定には,圧力・ずれ力同時測定器(molten社製PREDIA)を使用し,データロガー(オムロン社製ZR-RX20V)を介して周波数10Hzでデータサンプリングを行った.センサーの貼付位置は,安楽座位時に背もたれからの圧力が最も高い部位とした.背もたれリクライニングは,10度後傾位(Initial Upright Position: IUP)から開始し,続いて,40度後傾位まで後傾させた(Full Reclining Position: FRP).その後,背もたれを起こしていき,10度後傾位(Returned Upright Position: RUP)までに戻るよう操作した.測定時間は,各期保持時間(IUP5秒,FRP10秒,FRP5秒)に,移行期を含めた40秒間とした.なお,各条件の測定順序は不規則とした.統計学的解析には,上述の3期における安定した2秒間の平均値を用い,形体学的な影響を考慮して臀部ずれ力は各対象者の体重で除して正規化した値(% Body Weight: %BW)を採用した.各期において得られた値をpaired t-testを用いて2条件間で比較した(p<0.05).さらに,背もたれからの力の変動パターンを比較・検討した.【説明と同意】本研究は,演者の所属施設の倫理委員会の承認を得た後に実施した(承認番号:074).各対象者には事前に本研究の趣旨と目的を文書にて説明した上で協力を求め,同意書に署名・捺印を得た.【結果】( )の前に前方軸,後に後方軸の数値(%BW)を示す.臀部ずれ力は,IUP(10.6±1.3,10.0±1.3),FRP(14.1±2.5,11.2±0.8)RUP(13.8±1.7,17.1±3.1)であり,前方軸は後方軸よりもFRPで有意に高値を示し,RUPで有意に低値を示した(p<0.01).測定値の変動パターンについて,臀部ずれ力は,回転軸位置の違いによって変動の開始が異なり,前方軸ではIUP-FRP間で,後方軸ではFRP-RUP間で大きく変動していた.背もたれからの力に関して,前方軸ではずれ力の変動は少なく,圧力は背もたれ後傾に伴って低値を示した.後方軸では,FRP-RUP間で下方へのずれ力が上方へと急激に反転し,圧力は増大していった.【考察】臀部ずれ力は,FRPにおいて前方軸が後方軸と比較して有意に高値を示した.回転軸位置を調節するために用いた部品の形状がL字型であることから,背もたれは後傾のみならず下方へも移動する.そのことによって背もたれで受ける圧力は減少し,それに伴う背部と背もたれ間の摩擦力の減少が,臀部ずれ力増加を引き起こしていると推察される.そして,RUPにおいて前方軸が有意に低値を示し,背もたれではずれ力に大きな変動は認められなかった.これは,背もたれと体幹の回転軸を近付けることで背もたれと体幹・骨盤の回転方向が近似したためと考える.よって本研究結果から上述の仮説は証明された.しかしながら,FRPにおける臀部ずれ力軽減のための方策の検討が残された課題である.【理学療法学研究としての意義】リクライニング時における臀部ずれ力を軽減させる方策として,リクライニング車いすの背もたれ回転軸を体幹・骨盤の回転軸に近付けるように調整することの必要性が褥瘡予防の観点から示されたという点で意義がある.
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© 2013 日本理学療法士協会
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