理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-P-26
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ポスター発表
車いすクッションが片麻痺者の車いす駆動動作に及ぼす影響
駆動開始以降の時間的変化に着目して
川田 教平髙梨 晃宮島 恵樹勝木 員子松田 雅弘塩田 琴美山本 澄子
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抄録
【はじめに、目的】 片麻痺者の車いす駆動は,比較的早期に獲得可能な動作であるが,駆動により骨盤後傾してくる者が多い.この問題に対して木之瀬らは車いすクッションの必要性を指摘している.我々は前回,車いすクッションの形状より骨盤後傾を抑えることの効果を静止座位と片側下肢駆動開始時の骨盤後傾角度を中心とした分析から,アンカー機能があり,駆動側大腿部のパッドを外すことで骨盤後傾を抑えることができることを報告した.しかし,その後の骨盤後傾角度を中心とした時間的経過について検討することで静止座位時に骨盤後傾を抑えることができた効果をより詳細に把握する必要があると考えた.そこで本研究の目的は、駆動開始以降の骨盤後傾角度を中心とした時間的経過について検討し,車いすクッション効果の継続性を明らかにすることとした.なお,本研究では駆動開始以降から3駆動周期までを駆動開始直後と定義した.【方法】 対象は端座位保持自立レベルの片麻痺者18名(男性17名,女性1名,年齢44‐73歳,右片麻痺9名,左片麻痺9名)とした.使用機器は,3次元動作解析装置,筋電計,採型用車いすを使用した. 計測条件は,クッションなし,クッション1,クッション2の3条件とした.クッション1は厚さ4cm(高低差0cm),材質は1層構造のウレタンフォーム,クッション2は厚さ8cm(高低差2.5cm),材質はポリエチレン発泡体,低反発高密度ウレタンでアンカー機能があり,駆動側大腿部のパッドを外した物を使用した.統一条件として,身体寸法から車いす寸法を算出し,採型用車いすの調整を実施した. 計測課題は,静止座位から駆動開始直後までの片側下肢駆動における直進走行とし,最後に大腿二頭筋長頭の最大随意収縮(以下,MVC)の計測を実施した.MVCの計測は,5秒間実施し,間の3秒間の波形を全波整流し,積分値を算出した.3条件の計測順番はランダムとした. 評価項目は,3条件における静止座位から駆動開始直後までの骨盤後傾角度と大腿二頭筋長頭%IEMG,駆動速度とした.骨盤後傾角度はBody Builder ver.3.6を用いて算出した.駆動速度は,足関節点と第5中足骨頭のマーカー位置から算出した.得られた筋電波形は,フィルター処理後に全波整流し積分値を算出した後,MVCに対する割合(以下,%IEMG)を算出した. 骨盤後傾角度と駆動速度,大腿二頭筋長頭%IEMGについては,計測条件(以下,クッション要因)と駆動周期(以下,時間要因)を対応ある要因とした二元配置分散分析を実施した.主効果を認めた場合は,時間要因では静止座位,駆動開始を対照とした多重比較法(Dunnett)を,クッション要因では多重比較法(Bonnferroni)を用いて検討した.危険率は5%未満を有意とし,統計解析にはSPSSver15.0J for windowsを用いた.【倫理的配慮、説明と同意】 国際医療福祉大学研究倫理小委員会にて承認を得て,計測実施前に被験者と主治医に研究内容とリスクに関する説明を文書と口頭にて同意を得た.【結果】 骨盤後傾角度と駆動速度では,クッション要因と時間要因において交互作用を認めず,変化のパターンは同じであった.クッション要因間では,クッション2において有意に骨盤後傾角度は小さく,駆動速度は速かった.時間要因間では,静止座位と駆動開始,静止座位と2駆動周期,静止座位と3駆動周期において有意差を認めた.大腿二頭筋長頭%IEMGでは,クッション要因と時間要因に交互作用を認めた.駆動開始時において,クッション2で大腿二頭筋長頭%IEMGは有意に小さく,2駆動周期,3駆動周期では有意差を認めなかった.【考察】 車いすクッション効果の継続性を明らかにするために,静止座位から駆動開始直後までの時間経過に伴う骨盤後傾角度,大腿二頭筋長頭%IEMG,駆動速度について検討した結果,アンカー機能があり,駆動側大腿部のパッドを外したクッションの使用により,静止座位から駆動開始直後で有意に骨盤後傾角度は小さく,駆動速度は速くなることから,静止座位で得られたクッション効果は駆動開始直後まで継続していると考えられる.大腿二頭筋長頭%IEMGでは,時間要因間において駆動開始と2駆動周期,駆動開始と3駆動周期において有意差を認め,クッション要因間において駆動開始以降で有意差が認められなかった.このことから,駆動開始において片麻痺者と車いすの重量を含めた質量を動かすために大きな大腿二頭筋長頭の活動が必要であり,得られた加速度でその後は必要な力を発揮すれば車いすは動くことが考えられるため,2駆動周期以降は力が少なくても前方に推進できていると考えられる.【理学療法学研究としての意義】 車いす使用者が多い片麻痺者に対する車いすクッションの効果検証を行うことは臨床場面で車いすやクッションを提供する際の一助になると考えられる.
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© 2013 日本理学療法士協会
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