理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: G-P-12
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ポスター発表
老人福祉・介護施設への就職動向と意識調査
鈴木 敏和
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キーワード: 理学療法士, 就職, 介護施設
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抄録
【目的】 近年,1万人に近い数の理学療法士国家資格合格者が毎年誕生し,就職状況が大きく変化している中で,日本理学療法士協会でも職域拡大が重点事業の一つに挙げられ,理学療法士が今後活躍する場として介護保険分野が注目を集めている.今回,日本理学療法士協会が公開している会員の就労状況を分析し,求人サイトに登録されている求人状況と比較することにより,現状での求人状況に考察を加え,職域拡大の一指針として貢献することを目的とする.また,アンケート調査により介護施設に就職した理学療法士の就職動機を量的に分析し,就職動機が何に重点を置かれているのかを分析する.【方法】1.日本理学療法士協会が行った「日本理学療法士協会会員所属施設の調査(2011年4月調べ)」より,就労先を老人福祉・介護施設(以下:介護施設)と医療施設に分類し,就労人数,就労施設数の分析を行う.2.インターネット検索サイトYahooにて「理学療法士 求人」にて検索を行い,上位に検索された3社の静岡県内における求人状況を集計し,方法1と同様に介護施設と医療施設に分け,その求人状況の調査を行う.3.当法人内介護施設で就労している理学療法士に,就職動機についての記述式アンケート調査を行う.記述式アンケートをKHcoder(Ver2.beta.29e)にかけ,その内容に計量テキスト分析を行い,その結果より就職動機に関するキーワードを模索,検討する.【倫理的配慮、説明と同意】 本調査研究は,医療法人社団新和会倫理委員会の定める倫理規定に則り,同倫理委員会より承認を受け,対象者には書面と口頭で説明し,書面にて同意を得て行った.【結果】1.日本理学療法士協会会員66,256人への調査、有効回答者64,913人の内,介護施設所属8,022人(12%),医療施設所属48,483人(75%)であり,介護施設での就労者は医療施設と比べて1/6であった.所属施設数は,介護施設4,228施設(33%)に対し,医療施設8,038施設(62%)であり,介護施設は医療施設の1/2となった.1施設あたりの就労平均人数は,介護施設1.8±0.2人,医療施設5.9±2.6人と介護施設の一施設あたりの所属人数が有意に低かった.2.検索された求人サイト3社より集計を行った結果,対象法人数205施設(重複あり),内上位より,通所介護施設21%,介護老人保健施設,17%,回復期病院17%,療養型病院14%となった.求人の52%は介護施設となり,45%が医療施設となっている.また医療施設の70%は,回復期または療養型病院となっていた.3.アンケートの計量分析の結果,「介護保険」「医療保険」のキーワードが多く出現し,就職先の決定に関して,理学療法士としてのスキル向上を意味するキーワードが多く出現した.【考察】 所属施設数は,介護施設が医療施設の1/2になっており,大きなシェアとなっていることがわかった.しかし,1施設あたりの就労人数は医療施設の1/6と非常に少ない.富山県士会が全国の養成校に対して行った調査によると,卒業予定学生の就職選定条件として,理学療法士所属人数が多い施設を希望する傾向があるとの報告があることから,介護施設の求人は学生の選定条件として不利であると言える.求人状況では,半数以上が介護施設での求人であり,数の少ない医療施設の求人を分析すると,その大半は回復期・療養型病院が占めていた.富山県士会の同調査によると,学生就職者の希望就職先として,順に急性期病院,リハビリテーション病院,一般病院となっていることから,学生の希望と求人状況に差があることが明らかになった.アンケートによる計量分析より,介護保険と医療保険の制度に着目をしているのだが、動機として大きく作用するのが就職してから理学療法士としてのスキルが向上できるか否かにあった.【理学療法学研究としての意義】 多くの理学療法士が誕生する現在において,最初に決定する就職先は,職域拡大を促すに重大であると言える.しかし,今回の調査では,就職者と求職状況の不一致が考えられた.今後も介護施設の施設数の増加が考えられるが,その上限は間近であると言われている.求人数確保のためには,介護施設1施設あたりの理学療法士就労人数を上げるような法的な措置が行われるように働きかける必要性を痛感した.また,介護施設でも,少人数の中でスキルアップを行える環境を構築していくことが,求人の改善に繋がると考えられた.
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© 2013 日本理学療法士協会
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