理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-17
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ポスター発表
サイドブリッジ時の最大呼気併用が腹部筋活動に及ぼす影響
石田 弘渡辺 進
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キーワード: 筋電図, 外腹斜筋, 内腹斜筋
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抄録

【はじめに、目的】すべての体幹筋は体幹の安定性に寄与する。スポーツを行っている際など、体幹筋の寄与する割合は変化するが、腹部筋群は中核をなす。そして、腹部筋群は努力呼気を行うための筋でもある。そこで我々は、腹部筋群の運動時に最大呼気を併用することで、より強い筋活動を腹部筋群に加えることができるのではないかという仮説を立てた。本研究では、腰部の安定性を図るために一般的に用いられているサイドブリッジに最大呼気を併用し、腹部筋群の活動強度への影響を筋電図学的に定量化することを目的とした。【方法】対象は健常男性12 名(平均年齢21.2 ± 2.8 歳、身長172.7 ± 5.1cm、体重66.9 ± 8.5kg)とした。筋電計はNoraxon 社製のMyosystem1200 を用い、観測周波数帯域は10-500 Hz、サンプリング周波数は1kHzとした。被験筋は右の腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋とした。電極中心間距離は2.5cmとし、腹直筋は臍の2.5cm外側、外腹斜筋は第8 肋骨外側下縁、内腹斜筋は上前腸骨棘と恥骨結合との中間に貼付した。運動課題は、1)背臥位で最大呼気位まで息を吐き、声門を閉じずに保持すること(最大呼気)、2)サイドブリッジで安静呼気位を保持すること(サイドブリッジ)、2)サイドブリッジで最大呼気位を保持すること(サイドブリッジ+最大呼気)の3 種類とし、各課題を3 回行わせた。各運動とも呼気保持の完了を被験者に合図してもらい5 秒保持している間の筋電図を記録した。筋疲労の影響を考慮して、課題施行の順序は無作為とした。その後、正規化の基準とするため、上記3 筋の最大随意収縮(maximum voluntary contraction:MVC)を5 秒間各1 回記録した。MVCでは、両手を頭の後ろで組んだ背臥位で胸郭と大腿遠位部を非伸縮性のベルトで固定し、腹直筋は体幹屈曲、外腹斜筋は体幹屈曲左回旋、内腹斜筋は体幹屈曲右回旋を最大努力で行うこととした。記録した5 秒間の筋電図の中間3 秒間の平均積分値を解析に用い、各課題3 回の平均値を求め、MVCで正規化した(%MVC)。統計にはSPSS 16.0 を用い、反復測定による一元配置分散分析とBonferroniによる多重比較を行った(p<0.05)。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は、被験者全員に対し十分な説明を行い、同意を得てから計測を行った。【結果】以下に(最大呼気、サイドブリッジ、サイドブリッジ+最大呼気)(%MVC)の順で示す。腹直筋は(9.5 ± 5.9、17.6 ± 7.9、31.7 ± 10.9)で、すべての課題間に有意差があった。外腹斜筋は(48.2 ± 25.4、26.9 ± 9.9、75.5 ± 25.0)で、すべての課題間に有意差があった。内腹斜筋は(61.1 ± 30.7、20.3 ± 17.7、55.7 ± 26.2)で、最大呼気とサイドブリッジ間、サイドブリッジとサイドブリッジ+最大呼気間に有意差はあったが、最大呼気とサイドブリッジ+最大呼気間に有意差はなかった。【考察】本研究の結果から、サイドブリッジを行う際に最大呼気を併用するとサイドブリッジ単独で行うよりも腹部筋群(腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋)の筋活動量は増加することが分かった。腹部筋群の活動量は、サイドブリッジ単独では持久力や安定性を目的とした強度であるが、外腹斜筋と内腹斜筋においては最大呼気を併用することで筋力強化を目的とした強度になることが分かった。腹直筋の活動量は、最大呼気での筋活動量が低く、サイドブリッジと最大呼気を併用しても持久力や安定性を目的とする強度にとどまった。先行研究において、安静呼気では腹横筋、内腹斜筋、外腹斜筋、腹直筋の順番に動員されやすいことが示されており、最大呼気でも同様な動員順序があるのかもしれない。そのため、最大呼気における腹直筋の活動量は低く、併用効果も低かったと考える。腹直筋や外腹斜筋はサイドブリッジ+最大呼気において、サイドブリッジを単独で行った場合の筋活動量に最大呼気の筋活動量を加算した様な影響が認められた。しかし、内腹斜筋ではサイドブリッジ+最大呼気でも、最大呼気を単独で行った場合と同じ程度の筋活動量であった。最大呼気の併用効果が内腹斜筋だけ異なっていたのは、より深層の内腹斜筋の活動はサイドブリッジという姿勢保持よりも最大呼気のために主要に働いた可能性がある。今後、異なる運動種目でも最大呼気の併用効果を研究していく予定である。【理学療法学研究としての意義】本研究の結果は、腹部筋群の運動を行う際に意識的な呼気を併用すると活動量が増すことを示し、体幹の運動方法のバリエーションを増やすための基礎的資料として意義がある。

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© 2013 日本理学療法士協会
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