理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-02
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ポスター発表
長期にわたって運動療法を行った思春期特発性側弯症の一症例
細野 健太田島 進
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抄録
【目的】思春期特発性側弯症(Adolescent Idiopathic Scoliosis ;AIS)の治療は、観血的治療より装具や運動療法などの保存療法が主体となっている。一般に、保存療法はCobb角が20°未満に対しては運動療法とADL指導を行い、可能な限り脊柱変形の進行を予防することが大切である。AISは進行性の疾患であるため、経過に関する長期的なデータは重要と思われる。本研究の目的は運動療法を5年間継続して実施した症例について治療経過を示し、Cobb角、身長、体幹筋力、体幹関節可動域の推移について検討した。【方法】症例は当院に通院する特発性側弯症と診断された当初8歳(現在14歳)の女子で身長は144.0cm、体重は32.0kg、BMIは16.3kg/m²、利き手は右手である。運動習慣として水泳を7歳から週1回行っている。レントゲン所見はTh9-L4が左凸のシングルカーブを呈しており、Cobb角は6°であった。立位姿勢では左肩峰の高さが右側に比べて約1横指高く、前屈検査では凸側へのrib humpを認めた。Risser signはgrade 0であった。今回は弯曲の進行予防を行い、装具装着に至らないようにすることを目的として運動療法を開始した。運動療法は自宅で行うホームエクササイズを主体とし、内容は側弯体操を毎日約20分間実施するよう指導した。側弯体操は八幡ら(2001)の方法をもとに、8種類の運動を5年間に渡って継続して指導した。定期的な検査を月に1回実施し、体操の方法の確認と身体機能の評価を行った。身体機能の検査項目は体幹屈曲・伸展筋力、体幹側屈・回旋可動域、指床間距離(FFD)とした。体幹筋力の算出はGT-350(OG技研)を用い、等尺性の最大筋力を測定し体重で除した値とした。効果判定は各項目において開始時と5年後を比較し、運動療法の効果を確認した。【説明と同意】対象と保護者に十分に説明を行い、紙面にて内容の公表について同意を得た。本研究は田島医院倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号131)【結果】ホームエクササイズの実施頻度は平均週5回程度実施していた。開始時の体幹側屈可動域は右側40°、左側30°、回旋は右側45°、左側40°であった。体幹筋力は屈曲9.0N/kg、伸展9.7N/kgであった。FFDは-21.0cmであった。5年後の身長は159.3cm(+19.3 cm)、体重は46.0kg(+14.0 kg)、BMIは18.1kg/ m² (+1.8kg/m²)であった。レントゲン所見としてRisser signはgrade 0からgrade 3となり、Cobb角は11°(+5°)に増加した。さらに、立位姿勢も左肩峰の高さが右側に比べて約2横指高くなった。また、体幹側屈可動域は右側45°(+5°)、左側45°(+15°)、回旋は右側50°(+5°)、左側45°(+5°)とそれぞれ拡大した。FFDは±0cm(+21.0cm)と向上した。体幹筋力は屈曲9.3N/kg(+7.7%)、伸展12.3N/kg(+26.8%)とそれぞれ向上した。【考察】AISの治療効果を確認するために5年間の運動療法を行い、本症例は5年間でCobb角が6°から11°へと5°の増加を認めた。AISの治療効果の判定はCobb角の変化によって捉えられており、Cobb角6°以上の増加が「悪化」と定義されている。身長の伸びとCobb角の関係では、身長1cmあたりの伸びに対してCobb角が0.5°進行すると報告されており、本症例でも身長が19.3cm増加したことが変形の進行に影響したと思われる。しかし、今回は5年間で身長は19.3cm増加したにも関わらず、Cobb角は5°と増加は比較的小さかったことから運動療法の影響があると考えた。体幹筋力は明らかに向上しており、運動療法を行わなかった場合さらにCobb角は悪化していたものと考えられ、体幹筋力の向上がCobb角の増大の制限に影響したと考える。また、本症例ではホームエクササイズを平均週5回程度実施したことや運動習慣として水泳を継続したことも体幹筋力の向上に関与したと考える。AISは運動療法を途中でやめてしまう症例があり、気付いた時には増悪しているケ-スも少なくなく、AISでの課題の一つになっている。片山らは自宅での運動療法を開始時から7ヶ月間に渡って毎日継続することができた者は、わずか23.5%しかいなかったと述べており、対象は現在Risser signでgrade 3のため、今後成長が続く可能性が高く、さらに追跡調査をして弯曲の進行を食い止めたいと考える。AISは進行性の疾患であるが、継続的な運動療法により5年という長期間にわたって症状を示すことができた。【理学療法学研究としての意義】Cobb角、身長、体幹筋力、体幹関節可動域など、さまざまな点からAISの長期的な変化を観察して示すことができたことは理学療法上の意味が大きいと考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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