抄録
【はじめに、目的】特別支援学校に関わる理学療法士(以下,PT)の数は2011年4月の理学療法士協会の調査によれば61名であり,全国のPT全体の0.09%と極端に関わりが少ないという現状である.PTが果たす役割について,工藤らは養護学校において非常勤のPT・作業療法士(以下,OT)から教育上の助言・指導を受けた教員らにアンケート調査を行った結果,肢体不自由養護学校におけるPT・OTの導入は教育上の効果があり,今後教員との場の共有,必要な部門へのスピーディーな情報の伝達,仕事上でのお互いの達成感を共有できる連携のしくみを作ることが重要である,と報告している.しかし,特別支援学校でのPTの関与に関する効果についての具体的な介入量や質に関しての報告は極めて少ない.本研究の目的は特別支援学校で必要な理学療法の内容やその程度について,PTの関与の有無による教職員の満足度の程度を検討することとした.【方法】埼玉県の肢体不自由児特別支援学校3校に対し児童・生徒の生活指導に関わっている教職員を対象としアンケート調査を行った.アンケートは無記名で,郵送方式とした.内容は工藤のアンケート結果を参考にし,生活に関連する項目(食事のポジショニング・介助,授業時のポジショニング,車椅子調節,トイレ動作,トランスファー,移動活動)のPTの関与の有無による満足度とした.回答は5段階評定とし,5(優)~1(不)というように数値化した.統計処理は,SPSS statistics 20を用いMann-Whitney検定によりPT関与群と非関与群との差異を検討した.有意確率は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】アンケート記入者には研究に際してその目的の趣旨,プライバシーの保護,参加拒否・中止の自由,分析結果の開示などについて書面にて説明し,アンケートの返送をもって研究に参加するものと判断した.【結果】アンケートの回収率は24.8%であった.教職員の経験年数は,1~5年が47.76%と最も多く見られた.指導量に対する満足度はPT関与群では3.67~4.10,非関与群は3.27~3.81の範囲であった.指導内容の満足度はPT関与群では4.32~4.56,非関与群は3.77~3.95の範囲であった.各項目におけるPT関与群と非関与群との比較では,食事のポジショニング指導量,食事介助指導量,食事介助指導内容,車椅子調節指導内容,トイレ動作指導内容,移動動作指導量,移動動作指導内容でPT関与群が有意に高かったが,それ以外の項目では有意差はみられなかった(p>0.05).【考察】PT関与群で有意差がみられた項目に共通している点は,身体構造や姿勢反射などの神経生理学的知識が必要とされるものであり,専門的な知識を持ったPTによる指導を受けたことで高い満足感が得られたのではないかと考えられた.また有意差がみられなかった項目は,教職員が少ない回数の指導でも理解される内容であることが示唆された.【理学療法学研究としての意義】本研究において特別支援学校における理学療法士の関与は,学校教育に積極的に関与す重要性が示され,今後の理学療法の関与に関する一助になるものと考えられた.