理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-O-11
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一般口述発表
骨格筋の量的増加に作用する微弱電流刺激とその至適条件
大野 善隆後藤 勝正
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キーワード: 微弱電流刺激, 骨格筋, 分化
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抄録
【目的】スポーツ現場では損傷部位の治癒を促すために物理療法の1 つである微弱電流(microcurrent electrical neuromuscular stimulation:MENS)刺激が実施されている。このMENS刺激は、マイクロアンペアレベルの電流を通電するために筋収縮は惹起されず、副作用がないと考えられているが、骨格筋機能に対するMENS刺激の影響については不明な点が多く残されている。我々は、これまでにMENS刺激は損傷骨格筋の再生を促進させること、そしてこの損傷骨格筋の再生過程では骨格筋量が増加することを確認した。さらに、骨格筋萎縮後の回復期にMENS刺激を負荷することで、筋萎縮からの回復が促進することを確認した。したがって、MENS刺激は骨格筋量の増大作用を持つことが示唆される。しかしながら、MENS刺激が正常骨格筋の量的増大にどの様な影響をもたらすかは明らかでない。そこで本研究では、MENS刺激が骨格筋量に及ぼす影響とその刺激条件について、培養骨格筋細胞を用いて検討した。【方法】対象の培養骨格筋細胞にはマウス骨格筋由来筋芽細胞C2C12を用いた。培養骨格筋細胞を対象に実験を行うことで、MENS刺激に対する神経内分泌系など全身的な応答を除いて検討を行うことができる。C2C12 を増殖培地にて増殖させた後、分化培地にて培養し筋管細胞に分化させた。細胞増殖期2 日目ならびに分化期7 日目にTrio 300((株)伊藤超短波、東京)を使用し、MENS刺激を負荷した。MENS刺激条件の電流量(10 μA、20 μA)と刺激時間(0 分、15 分、30 分、60 分、120 分、240 分)をそれぞれ設定し、これらを組み合わせることで複数の刺激量を設定した。各MENS刺激負荷24 時間後に細胞を回収した。回収した細胞をライセートバッファー中でホモジネートし、細胞中のタンパク量をBradford法により測定した。【倫理的配慮】本研究はヒト骨格筋の増量を目的としたMENS刺激条件を設定するための基礎資料を得るために、ヒト・動物実験法の代替法として培養骨格筋細胞を用いて実験を実施した。培養骨格筋細胞において、MENS刺激による骨格筋量増大作用ならびに副作用を明らかにした後、実験動物ならびにヒトを対象とした実験を計画している。【結果】本実験で用いたMENS刺激条件(電流ならびに刺激時間)の変化による筋芽細胞のタンパク量の変化は認められなかった。一方、MENS刺激条件の刺激時間を変化させることで、筋管細胞のタンパク量が変化することが観察された。10 μAの電流を通電した場合、15 分〜60 分間のMENS刺激によりタンパク量の増加が認められたが、120 分間以上のMENS刺激ではタンパク量の増加は認められなかった。また、20 μAの電流を通電した場合、15 分〜30 分間のMENS刺激によりタンパク量の増加が認められたが、60 分以上のMENS刺激ではタンパク量の増加は認められなかった。【考察】本実験で用いたMENS刺激負荷は、C2C12 細胞の増殖に影響を与えないことが示唆された。一方、C2C12 細胞の分化期にMENS刺激を負荷することで、筋細胞の分化が促進された。したがって、MENS刺激は骨格筋分化を促進することで骨格筋量増大を引き起こす可能性が示唆された。またMENS刺激には、骨格筋分化促進効果を引き起こす至的刺激強度および刺激量が存在することが示唆された。【理学療法学研究としての意義】MENS刺激は、骨格筋分化を促進して骨格筋量を増大させることが示唆された。このMENS刺激による骨格筋分化促進効果は、刺激強度や刺激量に影響を受けることから、MENSの刺激条件(強度・時間)を慎重に検討する必要性が考えられた。骨格筋量増大に作用するMENS刺激条件が明らかになることで、安全かつ効率的な骨格筋機能の向上が可能となり、運動器リハビリテーションへ大きく貢献できると考えている。本研究の一部は日本学術振興会科学研究費(若手B,23700647;挑戦的萌芽,24650411;基盤A,22240071)ならびに日本私立学校振興・共済事業団による学術振興資金の助成を受けて実施された。
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© 2013 日本理学療法士協会
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