理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-04
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ポスター発表
長期間の食品摂取量の違いが運動能力や酸化ストレス防御系におよぼす影響
丸岡 弘小牧 宏一藤井 健志木戸 聡史井上 和久
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抄録
【目的】一般的にアンチエイジング対策には、食品摂取や運動などが知られている。特に、抗酸化作用を持つことが知られているユビキノール(還元型コエンザイムQ10:QH)摂取の効果には、老化の遅延などが報告されている。そこで今回は、長期間のQH摂取量の違いが運動能力や酸化ストレス防御系におよぼす影響について検討した。【方法】対象は老化促進モデルマウス(SAMP1、雄)23 匹とし、無作為に高用量摂取群(QH300mg/Kg、n=12:A群)と低用量摂取群(QH30mg/Kg、n=11:B群)の2 群に区分した。マウスは動物飼育室にて馴化飼育した後、週齢36 週目(中年期)より週齢76 週(高齢期)まで研究に用いた(脱落数A群n=5、B群n=3)。運動能力は動物用トレッドミル(TM)を使用し(速度20m/min、傾斜20%)、限界走行時間を測定した。なお、運動の終了基準TM走行面後方の電気刺激の時間間隔が5 秒以内となった時点とした。老化の指標には老化促進モデルマウス連絡協議会の老化度評点により判定を行った。酸化ストレス防御系は活性酸素・フリーラジカル分析装置(H&D社製FRAS4)を使用し、酸化ストレス度(d-ROM)と抗酸化力(BAP)を安静時に測定し、BAP/d-ROM比(BR比:潜在的抗酸化能)を算出した。d-ROMなどの測定には尾静脈を一部切開の上、採血を行い遠心分離後の血漿を用いた。d-ROMなどの測定は研究開始時(週齢36 週):開始時、QH摂取7 ヶ月後(週齢63週):7M、QH摂取10 ヶ月後(週齢76 週):10Mの計3 回実施した。また、電気化学検出器(SHISEIDO社製HPLC)を使用し、酸化ストレスマーカの血漿QH値と血漿ユビキノン値(血漿酸化型CoQ10 値:血漿Q10 値)を測定し、還元比率(血漿QH値/血漿QH値+血漿Q10 値)を算出した。血漿QH値などの測定は、開始時と10Mの計2 回実施した。QH(30%安定化粉末)は給水ビンにて配合し、毎日摂取させた。本研究において得られた数値は平均値±標準偏差で表し、統計ソフトはSPSS(Ver19.0)を用い、有意差の検定は分散分析とFriedman検定、Bonferroniの多重比較、Wilcoxon符号付順位検定を用いて行った。【倫理的配慮】研究に当たっては、所属する大学動物実験委員会の承認を得て実施した(承認番号39)。【結果】走行時間や老化指標、体重は10Mまでの経時的な変化において、両群共にそれぞれ有意な変化を認めた(p<0.001)。しかし、10Mにおいて両群間を比較すると、A群で老化指標のみ有意な低値を認めた(p<0.05)。d-ROMやBAPはB群のみ有意な上昇、BR比ではB群のみ有意な減少を認めた(p<0.01 〜0.05)。なお、10Mにおいて両群間を比較すると、B群でd-ROMの有意な増加、BR比の有意な減少を認めた(p<0.05)。血漿QH値と血漿Q10 値、還元比率はA群でいずれも有意な増加、B群で血漿Q10 値のみ有意な増加を認めた(p<0.05)。10Mにおいて両群間を比較すると、A群で血漿QH値と還元比率の有意な増加を認めた(p<0.001)。【考察】コエンザイムQ10 は抗疲労効果を示し、アスリートのフィジカル面に対する強化に多く活用されてきた。今回、10Mにおいて両群間を比較すると、走行時間は有意差を認めなかったのに対して、老化指標ではA群が有意な低値を認めた。また、B群ではd-ROMの有意な増加とBR比の有意な減少を認めた。このことは、低用量摂取であっても、高用量摂取と同様、走行時間に関わる生理学的効果の持続が明らかになった。さらに、老化指標は高用量摂取によって遅延する傾向を認めた。一般的に老化による生体への影響では、継続的な酸化ストレスの暴露に対する消去機能の衰えを示すことから、QH摂取による老化指標の遅延はQH自身の抗酸化作用による酸化ストレスの減少とATP生産による抗酸化系の維持が考えられた。つまり、高用量摂取では低用量摂取と比較して走行時間に有意差を認めなかったが、酸化ストレスの消去機能と潜在的抗酸化能の維持が図られ、その結果、老化指標の遅延が明らかとなった。今回、A群では血漿QH値や還元比率において有意な増加を認めた。このような血漿QH値などの増加は生体内のQHの動態に変化を生じ、結果として還元酵素系が賦活化されたことが示唆された。このことから、高用量摂取では酸化ストレスの消去などがQHの還元酵素系の賦活化による作用であることが明らかとなった。【理学療法学研究としての意義】食品摂取量の違いは老化指標や還元酵素系などに影響することが明らかとなった。
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© 2013 日本理学療法士協会
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