理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-O-02
会議情報

一般口述発表
足趾エクササイズと足内側縦アーチとの関連性
縦断研究による試み
城下 貴司福林 徹
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】 我々は足趾底屈エクササイズを考案した。第43回および第46回本学術大会で足趾エクササイズの臨床研究および筋電図解析を行い、その根拠を示してきた。第47本学術大会では足趾底屈エクササイズと足内側縦アーチ(MLA)の関係を明らかにするためにMLAの形態学的変化に着目し横断研究を行った、しかしいくつかの限界があった、験者が1人でありバイアスを取り除くことができない、横断研究であるが故に原因と結果を明確にできない等である。 以上から本研究は、コントール群、タオルギャザリングエクササイズ(TGE)群、母趾底屈エクササイズ群、母趾以外の足趾底屈エクササイズ群に振り分け5週間の足趾トレーニングを行った。トレーニング前後の比較し足趾エクササイズとMLAの形態学的関係を明確にすることを目的とする。【対象と方法】 対象は、特に足趾運動をしても問題なく、過去6ヶ月間足関節周囲の傷害により医療機関にかかっていない健常者40名,40足(男性20名、女性20名)、平均年齢20.6±0.64歳、平均身長164.9±8.4cm、平均体重 57.7±10.1 kgであった。コントロール群、母趾底屈エクササイズ群、母趾以外の足趾底屈エクササイズ群、TEG群に被験者を各々10名(男性5名、女性5名)に分類した。 測定項目は、Brody(1982)が考案したNavicular Drop(ND)、Williams(2000)らが提唱しているArch Height(AH)、足関節背屈可動域(膝伸展位)とした。尚、NDは既に我々が信頼性を報告(臨床スポーツ2011)し推奨した坐位足部荷重量20%で計測した、AHとは足趾を除く足長の長さに対する足背部の高さのことである。 各群の抵抗と頻度については、先行研究に従ってTGEは足趾完全伸展から完全屈曲までを1日3分間3回を施行した。各足趾底屈エクササイズについては端坐位姿勢で膝上に重りをのせ、頭部が膝の直上にくるまで体幹伸展位で前傾させた、そして約80%MVC程度の抵抗となるように指導し1日10回3回足趾底屈エクササイズを施行した、母趾群は母趾頭のみ(IP関節中間位、MP関節伸展位)を母趾以外群(DIP伸展位、PIP屈曲位)は母趾以外の趾頭を台の上にのせた。また日常生活上、足趾を意識させるためにポロンソフト2mm厚のパッド(10×10mm)を母趾群は母趾頭に、母趾以外群は母趾以外の趾頭に貼付することも併せて指導した。コントロール群は普段通りの日常生活活動をさせた。すべてのトレーニング期間は5週間とした、トレーニング前後を各々のパラメーターで比較した。 統計処理は、各群のトレーニング前後の比較をWilcoxonの符号順位検定で各トレーニング前後の変化量をKruskal Wallis検定後Mann-Whitney検定で比較した。尚、Wilcoxonの符号順位検定およびKruskal Wallis検定の有意水準は5%未満、Mann-Whitney検定の有意水準は1%未満とし統計ソフトはIBM SPSS Statistics19を使用した。【説明と同意】 すべての被験者に対して、実験説明書予め配布し研究の主旨と内容について十分説明をした後、同意書に著名がされた。また本研究は群馬パース大学および早稲田大学の倫理委員会の承認のもと行った。【結果】 TEG群では、NDは変化を示さずAHでMLAが有意に低下し足関節背屈可動域が9.8°からトレーニング後13.3°となり有意に増加した(p=0.012<0.05)。母趾底屈エクササイズ群では、いずれの測定項目も変化を認めなかった。母趾以外の足趾底屈エクササイズ群では、NDが5.11mmから 3.13mmと約2mm有意にMLAが低下しなくなった(p=0.007<0.05)。 トレーニング前後のND変化量については、コントロール群(約0.47mm)、TGH群(約-0.06mm)、母趾底屈エクササイズ群(0.01mm) に対して母趾以外の底屈エクササイズは1.98mmとなり、いずれの群よりも有意にMLAが低下しなくなった(p=0.001<0.05、p=0.002<0.01、p=0.007<0.01)。【考察】 母趾以外の足趾底屈エクササイズで有意にMLAが低下しなくなった、すなわちMLAの剛性が促通された、その傾向は他のトレーニング群やコントロール群と比較しても顕著であった。解剖学的に第1足根中足関節と2から5足根中足関節は独立した関節包を持つとされている 、母趾と外側4趾は分離してとらえる必要性が示唆された。一方でTGEはNDで変化を示さずAHではアーチが低下する傾向を示したが足関節背屈可動域が増加した、母趾以外の足趾底屈エクササイズ群と対称的であった。我々の臨床研究や横断研究と類似した傾向を示し、今日までの研究の妥当性が示唆された。 一方で、測定結果を予測できない理学療法学科学生が主に測定者とした、測定前に充分な練習を積んだが測定誤差を避けられない、その点も注意して解釈する必要がある。【理学療法学研究としての意義】 臨床上、MLAを促通するに母趾以外の足趾に着目すべきこと、TGEの再考が示唆された。

著者関連情報
© 2013 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top