理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-48
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ポスター発表
内反膝を呈する若年女性の股関節周囲筋力
松崎 秀隆吉村 美香漆川 沙弥香
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キーワード: 内反膝, 若年女性, 筋力
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抄録
【はじめに、目的】加齢と関係し,不可逆的な進行をたどる変形性膝関節症(以下,膝OA)の特徴の一つに内反変形が挙げられる。この疾患の発症危険因子としては,年齢,筋力,関節動揺性,性,肥満など多数報告されている。筆者はこれまでに,内反膝を呈する若年女性の歩行時の特異的な下肢回旋性や足趾屈曲筋力低下,全身関節弛緩性などを報告してきた。そこで今回は,股関節周囲筋力に着目し,下肢機能の特徴を明らかにし,今後の理学療法治療に寄与できる結果を導き出すことを目的に研究を実施した。【対象】下肢に骨・関節疾患や運動器障害がなく,手術既往のない若年女性で,両足関節内果を付けた立位姿勢において両膝関節内顆間が4横指以上の内反膝を呈する者5名(以下V群,19.8±0.4歳),同姿勢で正常の下肢アライメントを呈する者5名(以下N群,19.6 ± 0.5 歳)の10 名を対象とした。両群の属性に有意差は認めなかった。【方法】身長および体重を,それぞれNAVIS社製手動式金属身長計,SECA社製アナログ体重計を用いて測定。同一検査者が股関節の各運動方向に対する筋力を,HOGGAN社製MICRO FET2 を用いて3 秒間の等尺性収縮を3 回計測し最大値を算出,その値を体重で除して正規化を行い,測定値とし両群間の比較検討を行った。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は高邦会倫理審査委員会の承認を受け(承認番号FS-33),対象者への研究説明と同意を得て実施した。【結果、考察】群間比較において,股関節伸展および外転筋力に違いを認めた。平均値(単位:N)にて,N群の伸展筋力は3.8,外転筋力は4.5となった。一方,V群の筋力は伸展が3.5,外転が3.8 と低値であることを認めた。その他の運動方向において,著明な違いを認めることは出来なかった。そもそも膝OA患者のアライメントは内反変形を呈することが多い。この骨性アライメントの変化が,股関節外転筋を短縮させ,伸展筋群を延長させるなど,有効的な筋力発揮能に影響を及ぼしたと推察することができる。また,先行研究において,内反膝を呈する若年女性が歩行立脚期に特異的な下肢回旋運動を認め,膝関節外転,外旋傾向を示したこと,足趾屈曲筋力が低下していたなどの報告がある.つまり,運動連鎖の視点から推察すると,この下肢回旋運動と足趾屈曲筋力が立脚期の股関節伸展筋力に影響を及ぼし,外転筋力発揮能を減弱させた原因にも繋がったのではないかと考えることもできる。【理学療法学研究としての意義】本研究は,内反膝を呈する若年女性を対象としており,膝OAに対する横断的研究となるが看過できない問題として提起させて頂きたい。学会では,より多角的視点から考察を加え報告させて頂く。
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© 2013 日本理学療法士協会
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