抄録
【はじめに】今回、両側肺癌の術後症例に対して呼吸介助及び呼吸法指導を行ったところ深呼吸が可能となり、動作時の呼吸困難感が軽減した。症例の呼吸パターンの変化を日本光電工業社製SAS2100(以下、SAS2100)にて計測し、肺機能検査と共に呼吸リハビリテーション(以下、呼吸リハ)施行前後で比較したので報告する。【方法】測定機器:日本光電工業社製SAS2100についてSAS2100は睡眠時無呼吸障害を検査する目的で使用される機器である。この測定機器は、鼻カニューレからの流速圧を感知して波形(単位:mmH2O)にし、左手指に装着したプロープよりSpO2を測定し表示する。 症例紹介・現病歴:症例は64歳、女性。肺癌にて1年前に左下葉切除し、今回右上葉切除した。術後1日目に縦隔動揺、気管変形し呼吸困難、低酸素血症出現しICU入室。6日目酸素投与中止するが、咳嗽力低下及び呼吸困難感が残存し、術後7日目に呼吸リハが処方された。初回評価時所見:意識清明、コミュニケーション良好だが、声量少ない。会話も呼吸のために途切れる。主訴は歩くと息切れがする、苦しい。身辺ADLは入浴以外自立。胸郭の動き:胸郭が全体的に協調していなく、呼気・吸気共に浅い印象。呼吸パターン:SAS2100による計測(自然呼吸数14/分、深呼吸数5/分、流速圧20~30mmH2O)疼痛:衣服が触れるとヒリヒリする感じ、呼吸介助にて疼痛増強無し歩行:50mにてSpO297→92%、Borg Scale5肺機能検査:VC 1.22(L)、FEV1.0 1.15(L/s)、 PEF 1.90 (L/s) 治療方針:深呼吸の獲得による咳嗽力及び換気能力向上、運動耐容能の向上治療内容:呼吸法指導、呼吸介助、病棟での歩行練習(自主練習)【倫理的配慮、説明と同意】SAS2100の使用について本人に説明し、学術発表に対して同意を得た。【結果】呼吸リハ開始から2週後、肺機能検査上ではVC 1.42(L)、FEV1.0 1.18(L/s)、PEF 2.44 (L/s) へと改善した。SAS2100による計測では自然呼吸数15/分、深呼吸数4.5/分、流速圧30~40mmH2Oだった。歩行は50mでSpO298→97%、Borg Scale2.5と改善が見られた。【考察】理学療法介入1週後にSAS2100において深呼吸パターンの改善が見られ、これと同時に歩行50mでSpO297→94%、Borg Scale3と歩行時の呼吸困難感が軽減した。介入2週後にはSpO298→97%、Borg Scale2.5と軽減し、肺機能上でもVC , PEF で改善を得た。このことから呼吸法や呼吸介助で胸郭の可動性を引き出し、深呼吸を獲得することは咳嗽力及び換気能力を高め歩行時の呼吸困難感を軽減すると考えられた。症例に対し、退院時には深呼吸の自主練習を継続することを指導し、退院1ヶ月後及び半年後の来院時には呼吸パターン及び肺機能において退院時の機能を維持されており、日常生活上でも活動範囲が拡大、復職することが可能となった。【理学療法学研究としての意義】これまで呼吸法や呼吸介助前後における呼吸パターンを比較した研究は少ない。今回、SAS2100を使用することでこれら手技の施行前後の呼吸パターンを客観的に観察することが出来た。本症例は呼吸パターンの改善に伴って呼吸困難感も軽減しており呼吸パターンを観察することはこれら手技の効果検討に繋がると考えられる。