抄録
【はじめに、目的】今日人工膝関節置換術(以下TKA)の後療法として、持続的関節他動訓練器(以下CPM)は有効な方法として数多くの研究がなされ一般化されている。当院でもTKAのクリティカルパスにCPMを取り込み、病棟でも積極的に関節可動域(以下ROM)運動を行っている。しかし患者様1人1人に毎日CPMのセッティングをする病棟看護師の負担が大きいことも事実である。今回病棟看護師の負担を軽減するために、新たに弾性包帯を用いた病棟練習(膝関節屈曲の自動介助運動、以下弾性包帯運動)の指導に取り組み、CPMの代わりとなるのかを検討した。【方法】対象は平成22年5月1日~平成24年3月30日にTKAを施術した入院患者43名に対し、術後弾性包帯運動実施群(以下弾性包帯群)24名、CPM実施群(以下CPM群)19名の2群に無作為に分け、年齢、性別、入院期間(術後~退院)、関節可動域(術前/退院時)、周径、疼痛(フェイススケール:自動可動時痛)を調査し、この2群について対応のないt検定にて比較検討した。CPM群は30分/日の実施とし、弾性包帯群は朝・昼・晩に数回の実施とした。弾性包帯群のうち5名は弾性包帯運動を行うのに必要なROMを獲得していない、認知症など理解力が乏しく自主的に運動ができないなどの理由から除外とした。【倫理的配慮、説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき、本人・ご家族様に対して研究に関する説明を十分に行い、同意を得た。【結果】年齢は(弾性包帯群)77.2±6.01歳(CPM群)79.4±4.22歳であった。性別は(弾性包帯群)男性3名/女性16名(CPM群)男性3名/女性16名と同人数であった。入院期間は(弾性包帯群)29.2±7.13日(CPM群)32.9±7.34日であった。ROMは術前が(弾性包帯群)-10±7.61°~118.8±14.96°(CPM群)-8.7±6.03°~121.1±11.98°、退院時が(弾性包帯群)-6.6±4.53°~ 117.6±11.85°(CPM群)-6.6±5.14°~ 122.1±9.91°であった。ROM獲得日は90°獲得で(弾性包帯群)他動 3.8±2.51日 / 自動 5.4±3.51日(CPM群)他動 4.7±3.84日 / 自動 7.1±5.05日、120°獲得で(弾性包帯群)他動 13.1±5.79日 / 自動 22.1±9.84日(CPM群)他動 16.2±8.29日 / 自動 22.3±10.06日であった。周径は弾性包帯群では腫脹のピークが平均術後翌日で徐々に軽減傾向であったのに対して、CPM群では平均術後3日目に腫脹のピークを迎え徐々に軽減する傾向にあった。疼痛は、両群共に術直後に術創部痛を強く訴え徐々に軽減した。術後1週間目でCPM群と比べ弾性包帯群の方がより軽減する傾向が強かった。【考察】年齢は弾性包帯群の方が若干若いが特に有意差は認められなかった。入院期間としては弾性包帯群の方が短い傾向にあった(p<0.07)ROMに関しては術前・退院時での両群間に有意差は認められなかった。90°獲得・120°獲得では全体的に弾性包帯群が早期に獲得できたものの有意差は認められなかった。周径に関しては全体的に弾性包帯群の方が術後早期に腫脹が軽減する傾向にあったが特に有意差は認められなかった。疼痛に関しては弾性包帯群の方が術後1週間目から軽減しやすい傾向があったが有意差は認められなかった。以上のことから、弾性包帯群・CPM群の両群間には入院期間・ROM獲得・腫脹・疼痛に関して特に差は認められず、弾性包帯運動がCPMの代わりとなると考えられる。しかし対象期間内に5名のみ弾性包帯運動が行えなかった。理由として術後ROMが不良のため弾性包帯運動が行えない、認知症など理解力に乏しい患者様が自主的に行えなかったなどである。そういった場合自主訓練を指導しつつCPMを併用して行っていた。今回全ての患者様に弾性包帯運動を行うことができなかったが、CPMのセッティングする機会が減り病棟看護師の負担軽減に繋がった。【理学療法学研究としての意義】今回CPMのセッティングに関する病棟看護師の負担軽減という視点で研究に取り組んだ。効果として理学療法評価により弾性包帯運動に替えることにより、治療効果を下げず、病棟看護師の負担を軽減し、より患者様が主体的に取り組む治療を提供することができた。しかし患者様の状況(機能面・認知面)により弾性包帯運動を全例実施できたわけではない。今後早期に患者様の状況を把握し、各々にあった運動方法の指導や改良、CPMへの変更時期を検討していく必要がある。