理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-P-27
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ポスター発表
介護予防を鍵とした東日本大震災の被災地支援
高齢者の社会ネットワーク活動の拡充による互助機能向上を目指した取組の初年度のプロセス評価
小島 基永大渕 修一光武 誠吾河合 恒新名 正弥高橋 龍太郎
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抄録
【はじめに、目的】 東日本大震災によって甚大な被害を受けたA市では、複数の地域の入居者からなる仮設住宅地区において、障碍者を排除する様子がみられることなどから、地域の社会的包摂に対するニーズが地域包括支援センターを中心に挙げられている。我々は介護予防を鍵として、高齢者の社会ネットワーク活動を拡充させることで、地域の互助機能向上を目指す取組をこれまで進めており、A市の依頼により今回、被災地支援としてこの取組を展開することとした。また支援初年度の目的を、我々の持つ介護予防の知識と技術をA市へ移転することで、行政と市民(高齢者)リーダが共通の情報を獲得し、これにより彼らの間に協働体制の基盤が築かれ、かつ協働の具体的な目標と行動計画が策定されることとした。本研究では、この初年度の成果をプロセス評価として示す。【方法】 地域の介護予防活動に取り組む市民(高齢者)リーダを養成するための150分・全3回の講座を実施した。この講座は行政等のスタッフも受講するものとし、知識・技術(介護予防活動実践の基礎、介護予防健診・体力測定の実際など)を移転する研修だけではなく、先行して同様の取組を展開するB市の高齢者リーダ2名による事例報告をも盛り込んだ。これらの支援によって、知識・技術が伝達できているかどうか、あるいは、介護予防に関する地域活動に取り組む自信などが醸成できているかどうかについては、講座の前後でアンケート(介護予防の知識・技術及び地域における実践方法の理解、地域活動への自信、活動の困難感に関する5件法)を経時的に4回採り把握した。また講座の3か月後におけるその後の活動状況を、実地にてモニタリングした。【倫理的配慮、説明と同意】 講座でのアンケートを実施するにあたって、口頭ならびに文章にて説明し同意を得た。回答は全て無記名とし、アンケート票毎の固有番号にて統計処理をすることで個人が特定できないように配慮した。【結果】 講座は全体で40名(行政10名、市民ボランティア6名、社会福祉協議会10名、A市復興協会職員10名、その他4名)の参加を得た。このうち3回全ての講座を受けた者は15名(市民ボランティア6名、社会福祉協議会8名、その他1名)であった。この6名の市民ボランティアの年齢構成は、60~64歳が1名、65~74歳が5名で、A市での平均在住年数は46.8年であった。 講座の修了時点で、市内4地域毎の向後6か月の具体的な計画(目標と行動計画)が立てられた。 皆勤者15名を今後の取組の中核的な人的資源と捉え、彼らのアンケート結果を反復測定による分散分析でみると、介護予防の知識・技術及び地域における実践方法に関して有意に理解度が深まっていた(p<.01)。また、地域での活動を実践する自信についても同様の結果であった(p<.05)。一方、地域での活動を実践する困難感については、統計学的に有意な改善は認められなかった。また参照として、皆勤者15名と他の25名で初回の回答内容を比較すると、Mann-WhitneyのU検定で有意な差は認められなかった。 講座から3か月を経た実地モニタリングでは、市民ボランティアが行政と協働して地域のイベントに取り組んでいること、講座で立案された計画が実際に進行していることが確認できた。【考察】 モニタリング及びアンケートの結果から、初年度の支援は所期の目的を達成し、全体として順当なプロセスを辿っているものと考えられた。即ち、我々から移転された知識・技術が行政と市民によって共有されることで、協働体制の基盤が構築され、かつ具体的な活動につながっているものと考えられた。また、他市で先行して活躍する高齢者ボランティアから事例報告を受けたことも、いわゆる代理的体験の功を奏したものと考えられた。ただし、こうした支援によって地域活動への自信は得られているものの、今後想定される困難を乗り切る感覚を得るまでには至っていない様子も伺えており、これには、彼らが実践による成功体験を引き続き積み重ねていく必要があるものと考えらえた。 今回養成された中核的な市民ボランティアについては、前期高齢者が大半を占め、A市での在住年数も長いことから地域活動に適した人材であると考えられた。今後は、今回の協働体制を礎に彼らが拡げる高齢者同士の紐帯や社会ネットワーク活動(介護予防の自主活動)の状況を把握しつつ、こうした社会ネットワーク活動は地域の互助機能の基盤となることが、社会関係資本の観点より知られていることから、最終目標である互助機能向上の有無を、集合的効力感[Sampson,1997]などの指標を用いて追う必要があるものと考えられた。【理学療法学研究としての意義】 理学療法士として介護予防を鍵に地域づくりに取り組む事例を積み重ね、これを一歩一歩明らかにしていくことは、理学療法の可能性を示す点で意義があるものと考えられる。
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© 2013 日本理学療法士協会
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