理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-O-15
会議情報

一般口述発表
パーキンソン病患者における上肢すくみ現象
泰地 治男川道 幸司澤田 侑貴上杉 智子川原 実佳小守 いつみ大江 比楼美有井 敬治川村 和之三ツ井 貴夫
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに】パーキンソン病(以下PD)患者において、すくみ足は疾患の進行と共に頻発する徴候であり、同患者の転倒の重要な危険因子と考えられる。PD患者のすくみ足の発生要因は未だ定かではなく、数々の報告がされているが、主にはPDの主症候である無動や筋固縮がその原因と考えられる。我々は、PD患者に対して5週間入院の独自リハ(以下PD5Wリハ)を提供しているなかで、上肢にもすくみ現象があることを見出した。今日までPDのすくみ足に対しては、種々の研究報告があるが、上肢のすくみについては全く認知されていない。そこで我々は、本研究において、PDの上肢すくみ現象(以下すくみ手と呼称する)がどの程度PD患者に合併するのかを検討した。さらに上肢すくみ現象とパーキンソンニズムの重症度、すくみ足との関連、および上肢すくみ現象と上肢巧緻動作能力との関係についても解析した。【方法】PD患者におけるすくみ足のすくみ比率を独自に算出した。対象は、これまでPD5Wリハ患者に対し、平衡機能計を用いて静止立位から鐘の合図とともに前方へ歩き出し、第一歩Toe offまでの所要時間を測定した。所要時間の1.00秒以上をすくみ足有り、1.00秒未満をすくみ足無しと定義した。同様に上肢のすくみ現象についてもこの基準値を参考とし、PD5Wリハ患者の35名と外来患者19名を対象に、すくみ足およびすくみ手の有無2群に分類した。重症度の指標としてHoehn & Yahr Stage、パーキンソン病統一スケール(以下UPDRS)を使用した。上肢のすくみ評価については四つ這い位で上肢と下肢の協調運動が出ない肢位(荷台用装置に両下肢を固定)で、両上肢のみの交互這い動作を行った。上肢筋力の指標としては、左右の握力を椅子座位で肘関節伸展位にて測定した(デジタル握力計T.K.K5401使用)。また上肢・手指の巧緻機能については、簡易上肢機能検査(以下STEF)を使用し、左右上肢の平均値を算出した。【倫理的配慮、説明と同意】本研究において、当院倫理委員会の承諾を得ている。また対象者には本研究の趣旨を口頭にて説明し、同意と承諾を得た。【結果】すくみ足有群19名のうち17名ですくみ手が見られ、2名ではすくみ手が見られなかった。17名のすくみ手患者のうち白線またぎを実施すると、全例においてすくみ手が改善した。またすくみ足無群35名は全てすくみ手が見られず、2群では非常に強い相関が得られた(p=0.000)。すくみ手有群は男性5名、女性12名の17名で、年齢は49~82歳、罹病期間は2~20年(mean±SD)であった。すくみ手無群は男性18名、女性19名の37名で、年齢は35~89歳、罹病期間は1~22年(mean±SD)であった。また重症度別としては、有群はStageⅢが8名、StageⅣが9名で平均3.7、標準偏差は0.39であり、無群はStageⅡが4名、StageⅢが31名、StageⅣが2名で平均3.1、標準偏差は0.48であった。握力はすくみ手有群が17.3kg、無群が21.9kgと無群が有意に強く(p=0.027)、STEFについてもすくみ手有群が81.5点、無群が88.3点と無群が有意に動作能力は高かった(p=0.037)。すくみ手の有群と無群の合計54名ではSTEF実施時のすくみ動作は見られなかった。UPDRSにおいてもすくみ手無群が有群に比べ有意に重症度が低値(p=0.000)であった。【考察】PD患者においてすくみ足とすくみ手は強い相関があり、PDの重症例で高頻度に発生し、視覚Cueを利用することで上肢すくみ現象は改善した。PD患者における上肢すくみ現象は、すくみ足と共通の運動病態により出現していると考えられ、その発症には無動や筋固縮の関与が推定される。また上肢機能については、すくみ手有群は無群に比べ、握力やSTEFが低値であり、巧緻動作を含む非荷重位での動作ではすくみ現象は出現していない。すくみ足を来たす患者においても踵膝試験を施行した際など、非荷重位での運動ではすくみ現象は全く見られなかった。以上のことから、すくみ手ならびにすくみ足が身体荷重の負荷を受けた移動時に起こる運動開始障害であると考えられる。【理学療法学研究としての意義】PD患者におけるすくみ手と言われる症状は、理学療法士をはじめ、リハスタッフが臨床の中で初めて見出したPD患者の徴候の一つである。
著者関連情報
© 2013 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top