理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: F-S-01
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セレクション口述発表
成長期腰椎分離症に対する低出力超音波パルス治療の効果
照射の有無および頻度が治療期間に及ぼす影響
塚田 雅弘新居 美紗子明本 聡瀧内 敏朗
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抄録

【はじめに、目的】成長期腰椎分離症は、椎弓の関節突起間部の疲労骨折と考えられており、その発生には活発なスポーツ活動が深く関わっている。近年、MRIでの早期診断が可能となり保存療法の成績は向上しているものの、病態などにより治療期間が長期に及ぶ症例も少なくない。活動期間が限られる成長期のスポーツ選手は、一日も早い確実なスポーツ復帰を望んでおり、そのための保存療法確立が重要な課題である。骨折の治療では近年、低出力超音波パルス(low intensity pulsed ultrasound : LIPUS)の臨床利用が広がっている。LIPUSの骨折治癒促進効果は、これまで多くの臨床試験や基礎的研究により証明されているが、本症に対する臨床利用、治療成績の報告は散見される程度である。当院では2010年7月より本症患者全例に対し、従来の保存療法と患部へのLIPUS治療併用を開始し、これまでの治療期間を約40%短縮した。本研究では、症例数を増やしてLIPUS効果の検証を進めるとともに、照射頻度と治療期間との関係を調査し、より効果的な治療法を検討することを目的とした。【方法】2009年4月から2012年9月までに当院を受診し、MRI T2強調像で椎弓根部に高信号変化を認め、初期の腰椎分離症と診断された18歳以下の患者のうち、治療が完結した84例86椎弓を対象とした。全例共通の治療として、従来からの保存療法であるコルセットでの外固定、運動量の制限、運動療法を実施した。LIPUS治療の有無は、当院に治療機器が導入された2010年7月以前の受診か、それ以後の受診かによって決定した。治療機器導入後は対象を限定せず全例にLIPUS治療を併用した。治療機器は日本シグマックス社製アクセラスを用い、通院毎に1回、患部に20分照射した。MRI T2強調像で高信号変化の消失を治癒の条件とし、それまでを治療期間とした。すべての診断は同一の整形外科医が一人で行った。通院治療回数や頻度は全対象者自身が任意に決定した。従来の保存療法とLIPUSを併用して治癒に至った62例64椎弓(男性59例、女性3例、年齢14.5±1.6歳)を超音波群、従来からの保存療法のみで治癒に至った22例22椎弓(男性21例、女性1例、年齢15.1±1.4歳)を対照群として治療期間を比較した。また、照射頻度による影響を検討するため、超音波群を照射頻度が週1回以上であった高頻度群32例33椎弓(男性30例、女性2例、年齢14.3±1.7歳)と週1回未満であった低頻度群30例31椎弓(男性29例、女性1例、年齢14.6±1.5歳)に分け、治療期間を群間比較した。統計処理は、対応のないt検定、χ²独立性の検定を用い、有意差判定基準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】治療開始にあたり、対象者および保護者に口頭での説明と、書面による同意を得て実施した。【結果】超音波群と対照群および高頻度群と低頻度群の年齢、性別、分離椎弓高位、分離椎弓根(右、左、両側)の分布は有意な偏りを認めなかった。平均治療期間は、超音波群98.1±50.8日で、対照群の175.8±89.4日に比べ有意に短く(p<0.01)、その短縮率は、44.2%であった。また、高頻度群の治療期間は82.8±33.8日で低頻度群の114.3±60.6日に比べ有意に短かった(p<0.05)。【考察】本症の保存療法に際し、LIPUSを併用すると、従来の治療期間を有意に短縮することが明らかとなった。その短縮率は44.2%であり、LIPUSが本症分離部の治癒促進に有効である事が示唆された。照射頻度による比較では、週1回以上照射した症例がそれ未満の症例より有意に治療期間が短かったことから、高頻度に照射することが、患部治癒をより効果的に促進する可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】成長期腰椎分離症分離部に対するLIPUS照射の高い有効性を示唆した。また、照射頻度による検討も加えており、より効果的な治療法の確立に向け、新たな知見を示した。

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© 2013 日本理学療法士協会
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