理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-48
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ポスター発表
妊婦の実用的バイオメカニクス研究を指向した下部体幹部分質量比と質量中心比の推定
須永 康代国分 貴徳木戸 聡史阿南 雅也新小田 幸一
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抄録
【はじめに、目的】身体体節の質量比や質量中心比といった身体部分係数は、バイオメカニクス研究を行う上で必須の情報であり、これまでに欧米人男性のものや、日本人高齢者およびアスリートなどのものが公表されている。しかし日本人の妊婦の身体部分係数は報告がない。妊娠経過により形態の変化する妊婦に特化した慣性特性値の推定は、バイオメカニクス研究を行う上で重要な情報である。本研究は妊婦の実用的バイオメカニクス研究を指向した基礎データを得ることを目的として、妊婦の下部体幹部分の体重に対する質量比と質量中心比の推定を行った。【方法】被験者は、単胎妊娠で妊娠経過に問題のない妊娠16 週、20 週、24 週、30 週の妊婦それぞれ1 人ずつの計4 人(平均年齢28.5 ± 2.7 歳)、未経産女性1 人(年齢29 歳)であった。被験者の下部体幹部分に計24 個の赤外線反射マーカーを貼付後、8 台の赤外線カメラにて静止立位姿勢の撮影を行い、三次元動作解析システムのソフトウェアVICON Nexus1.7.1(Vicon Motion Systems社製)を用いてマーカーの座標位置を同定した。下部体幹を、マーカーの座標位置情報より六面体で構成される6 つの部分に分け、さらにそれぞれを4 個のマーカーを結んだ四面体6 個に分けて、Microsoft Excelのワークシート上で体積を算出した。得られた体積より、下部体幹部分の質量、質量中心位置を求め、体重に対するそれぞれの質量比、下部体幹部分長に対する質量中心比(第12 肋骨から大転子の高さまでの距離に対する近位端からの比)を算出した。なお、質量算出には先行研究を基に妊娠16 週、20 週の被験者と未経産女性は1,037kg/m 3 、妊娠24 週、30 週の被験者は1,030kg/m 3 の身体密度を用いた。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は、所属機関倫理委員会の承認(承認番号 第24007 号)を得て、ヘルシンキ宣言に則り、被験者に研究の目的や内容について説明し、同意を得た上で行った。【結果】下部体幹部分の質量比、質量中心比はそれぞれ、妊娠16 週では17.7%、54.1%、20 週では19.7%、54.5%、24 週では16.5%、53.9%、30 週では20.8%、50.0%、未経産女性では13.0%、55.7%で、妊婦は未経産女性と比較して下部体幹部分の質量比は増大し、下部体幹の質量中心比は小さくなっていた。【考察】妊婦では子宮の成長にともない、腹部の前方への突出に加えて子宮底長が増大して胎児の鉛直方向への成長が進むため、下部体幹部分では、質量のより大きい部分が上方へと変位することによって質量中心位置が高くなり、質量中心比が小さくなったと考える。このことから、妊婦では未経産女性とは形態的に異なり、また妊娠経過により変化が生じるため、妊婦を対象としたバイオメカニクス研究を行う際には妊娠週数に適応した慣性特性値を用いるべきである。【理学療法学研究としての意義】これまで、妊婦を対象としたバイオメカニクス研究では欧米人や日本人の妊婦以外の慣性特性値を代用していたため、信頼性に欠ける結果を招く可能性も示唆されてきた。本研究で妊婦に特化した値を提示したことは、妊婦に関する理学療法領域での今後のバイオメカニクス研究に、より高い信頼性と妥当性をもたらす可能性をもつ点で有意義である。
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© 2013 日本理学療法士協会
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