理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: G-S-01
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セレクション口述発表
理学療法臨床実習生の終末期理学療法に対する認識構造からみた終末期理学療法の課題
池田 耕二山本 秀美中田 加奈子黒田 未貴廣瀬 将士
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抄録
【目的】 高度医療,高齢社会を迎えた日本では,衰弱した高齢者をはじめ末期がんや難病患者等の理学療法は増加すると予想される.そのため,終末期理学療法の重要性は増すものと考えられる.しかし,学生の一部は終末期理学療法を無意味なものとして受けとめているという報告もあり,終末期理学療法に対する認識はいまだ不十分だと考えられる.本研究の目的は,終末期理学療法の一端を経験した学生(以下,実習生)の終末期理学療法に対する認識構造を明らかにし,認識を改善するための教育的・実践的課題を検討することである.【方法】 対象者は,終末期理学療法を実施している100床以下の小規模病院で臨床実習を行った9名の実習生(男6名,女3名,平均年齢24.4±5.0歳)とした.その内訳は総合実習(約8週間)4名,評価実習(約4週間)3名,見学実習(約1週間)2名であった.本研究で実習生を対象としたのは,終末期理学療法を体験した後の認識構造を構造化した方が,課題が明らかになりやすいと考えたからである. 分析方法には構造構成的質的研究法(以下,SCQRM)をメタ研究にしたM‐GTAを採用した.手順としては,最初に30分程度の半構造化インタビューを行い,その内容をICレコーダーで記録した.インタビューの項目は,1)終末期医療についてどのような印象をお持ちですか? 2)もし,あなたの大事な家族,友人,恋人が衰弱していき医療処置の手段がなく残り少ない命と分かった時,あなたならその方のために何かできると思いますか? 3)終末期医療に理学療法士が関わることについてどう思いますか?とした.次にインタビューで得られた録音データをテクストデータに変換し,分析ワークシートを用いて概念を生成し,必要に応じてそれらを包括するサブカテゴリーやカテゴリーにまとめつつ,終末期理学療法に対する認識に焦点化しながらボトムアップ的にモデル構築を行った.これらの分析は,終末期理学療法の経験を有する臨床経験19年,8年,5年目の理学療法士3名で行った.【説明と同意】 本研究では,研究依頼に際して対象者に本研究の目的や方法,倫理的配慮について十分な説明を行い,承諾を得た.【結果】 本研究では,終末期理学療法に対する認識は「内面の原動力」と「行動の原動力」によって構成された(≪≫は概念,<>はサブカテゴリー,「」はカテゴリーである).そして「内面の原動力」は,≪経験からくる抵抗感のなさ≫,≪楽にさせてあげたいという思い≫,≪接するということで何か得られるという感覚≫という3つの概念からなる<理学療法士を突き動かすもの>と≪終末期に対する怖さ≫,≪すぐに見つからない“やる意味”≫という2つの概念からなる<理学療法士を制動するもの>という2つのサブカテゴリーによって構成された.また,「行動の原動力」は理学療法士からの働きかけと患者からの働きかけの相互作用の中で,≪理学療法士と患者を取り巻く環境≫,≪状況による対応の違い≫,≪本人の意思の尊重≫という3つの概念によって構成された.【考察】 本研究で用いたSCQRMは視点提示型研究法であり,本構造を視点とすることで事象のとらえ方を変化させることができるとされている.これに従えば終末期理学療法に対する実習生の認識は,「内面の原動力」と「行動の原動力」によって構成されていると考えることができる.つまり,実習生は患者に対する思いや抵抗感の無さという理学療法士を突き動かすものと,怖さややる意味が見つからないという理学療法士を制動するものの間で,内面が揺れていると考えることができ,突き動かすものが強いと積極的に,制動するものが強いと消極的に終末期理学療法の必要性を考えるようになると考えられる.一方,理学療法実践については,終末期患者との関わりの中で理学療法に関わることができる環境,状況にあるのかや,患者は理学療法をしたいという意思を有しているのか等によって行動の積極性が変化すると考えられる. 以上のことから,終末期理学療法に対する教育的課題としては,内面の原動力を向上させるために終末期患者に慣れること,終末期に対する怖さを軽減させ実施する意味づけを丁寧に教育することが必要と考えられた.また実践的課題としては,行動の原動力を向上させるために終末期理学療法を実施しやすい環境,状況を整えること,さらには終末期患者自身の意思を確認できる環境を整備することが必要であると考えられた.【理学療法学研究としての意義】 本研究は,今後需要が高まると予想される終末期理学療法の教育的・実践的課題を明らかにしたという意味において意義ある研究と考える.
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© 2013 日本理学療法士協会
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