理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: G-O-03
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一般口述発表
理学療法士国家試験模擬試験における本学のヒューマンエラーの実態について
三木屋 良輔角田 晃啓澤田 優子開田 千鶴中 正美
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抄録
【はじめに、目的】 理学療法の国家試験や模擬試験において、200問という多くの問題をマークシートで解答する。そして、そのような試験において実際の成績結果が、自己採点結果と一致しないことがある。その原因として問題解答時点で問題内容を見落とすヒューマンエラーがあげられる。過去においてマークシートを用いた試験におけるヒューマンエラーについて検証した報告は、医師国家試験模擬試験に関しては散見されるが、理学療法国家試験模擬試験においては殆どみられない。そこで試験におけるヒューマンエラーの予防教育に発展させるために、理学療法国家試験模擬試験を利用して受験生がおかすヒューマンエラーの実態を調査した。【方法】 調査対象は、理学療法学科に在籍している在学生並びに来年度受験を予定している既卒者、合計75名とした。調査方法として、理学療法国家試験模擬試験(200問280点満点)の受験後に自己採点させた結果を収集し、試験業者の機械によるマークシートの成績結果と相違しているかを調査した。また5つの選択肢から1つの正解肢を選択する問題(以下Aタイプ)と、2つの正解肢を選択する問題(以下X2タイプ)毎にマークシートの記載ミスの発生頻度について比較検証した。統計処理はχ二乗検定を用い、有意判定の基準を5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は、試験成績に関する全ての情報を個人情報として取り扱い、他者に情報が漏洩することがないように留意すると共に、学生に目的の説明と同意を得ており倫理上の問題は生じない。【結果】 模擬試験受験生75名の内、自己採点結果と業者による実際の成績結果において62.7%の学生に相違が生じた。逆に自己採点と成績結果に差がなく、マークシートの記載ミスも無い学生は20%であった。点数が相違した学生では、自己採点よりも成績結果が上がった学生は25.5%(平均2.1点±1.9)、逆に下がった学生は74.5%(平均-4.3点±5.0)であった。マークシート記載に関しては、200問の試験の中で1回以上の記載ミスが、約半数の54.7%の学生に発生した。また2回以上の記載ミスをした学生も33.3%に上った。また出題形式としてAタイプとX2タイプを比較したところ、Aタイプにおいて2肢選択するミスが全体で38回生じ、X2タイプにおいては1肢選択するミスが全体で71回生じ、X2タイプの問題の方にマークシート記載ミスが多いことも判明した(P<0.01)。さらに自己採点と成績結果に相違がある場合とマークシート記載ミスとの関係性、記載ミスの頻度と成績結果との相関、そして在学生と既卒者との間の記載ミスの関係について検証したが有意な差はみられなかった。【考察】 理学療法国家試験は、その対策において学業面を重視していることが多い。本学でも対策委員会を立ち上げて国家試験対策授業を展開している。しかし本学の調査では約半数の学生が1回以上のマークシートの記載ミスをおかす結果となり、また自己採点と成績結果に解離が生じた。原因として、マークシート記載ミスを1つの結果として考えた場合、問題解答時点で問題内容の見落としと、マークシートに転記する時のミスの2つのヒューマンエラーが混在していると考えられる。ヒューマンエラーは一般的に知識、経験、性格、動機付けなどの個人的因子や、作業環境、作業内容、教示、教育訓練などの環境的因子があげられる。今回の結果は、まず知識においては、ミスの頻度と成績結果が相関していないことから因子としては考えにくく、また経験においても、現役学生と既卒者との間にミスの差がなかったことから因子としては考えにくい。むしろ模擬試験とはいえ緊張感のある作業環境、限られた時間で多くの問題を解答する作業内容、またそういう場面で心理的に余裕の無い学生の性格的な要素、そして本学で疎かにされていた記載ミスに関する教育訓練の不足などが複合的に関わり、問題の見落としが生じた可能性がある。しかし本研究では、問題用紙を回収しての分析や、個人への聞き取り調査は実施していないため、今後検証する必要がある。【理学療法学研究としての意義】 今回、試験におけるヒューマンエラーの発生頻度を調査した。本研究において意義を有することは、特にX2タイプの問題解答時にミスが多いことが判明したこと、そして自己採点と成績結果の解離が非常に多くの学生に発生し、特に実際の成績結果は下がることが多いことが明らかになったことである。さらに、それを国家試験対策において、改めて注意喚起する必要性が増したことである。
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© 2013 日本理学療法士協会
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