抄録
【はじめに、目的】理学療法を行う上で日常の動作や歩行を観察し,その状態を解釈することは治療を組み立てるうえで重要になる.しかし,一般的に行われる動作分析では,捉え方には観察者の熟達度により個人差が生じるとともに記録法に関しても標準化が不十分である.そのため,経験の少ない理学療法士や学生にとって,動作分析の結果から障害像の焦点を把握できないことが多い.近年,簡便に使用でき安価である程度の定量化が可能であることから,ビデオカメラを用いた動作分析の信頼性に関する研究報告がなされている.しかし,これらの測定方法は,カメラの設定条件を含めた画像処理の問題・カメラ特有の画像特性の問題,そして測定時に使用する解析システムの問題など考慮するべき点が多いことが欠点となる.特に,動作分析に使用するプログラムの精度により信頼性にも影響がでるため,学生教育や臨床現場で活用するためには検討が必要になる.そこで,我々は学生教育や臨床現場における動作分析の一つの手段として活用でき,さらに測定作業が容易で個人で所持しているパソコンで使用できることを目的とした動作測定プログラムMMP(Motion Measurement Program:MMP)の作成を行った.本研究では,作成したプログラムの測定角度に関する精度に関しての検証を行うとともに測定時の検者間検者内信頼性についても検討し,その有用性について検証することを目的とした.【方法】検者は,研究の趣旨について説明し同意を得た学生12名を6名ずつのA群とB群に分け,それぞれ異なる画像10枚を使用して角度測定を行わせた.使用する画像はEXCELのシート上に640×480ドットの領域を設け,自由な角度で3点のマーカーを描くことができるプログラムを作成し,A群には7度から52度,B群には92度から137度の範囲でそれぞれ5度刻みの10枚のファイルを作成した.MMPの具体的な操作方法としては,静止画像上の3個のマーカー上を選択して座標を検出し,角度を算出した.各検者には事前に実技を交えながら測定方法を説明し,10枚の画像をそれぞれ3回ずつ計測させた.測定順序は,順序の影響を除くため,乱数を使用し設定した.解析方法は,各画像の真の角度と計測値の関連性をみるためにPearsonの相関係数を用い検証した.さらに,一般化可能性理論を用いて,各測定者が測定した画像角度の測定値の分散から級内相関係数Intraclass correlation coefficient(以下ICC)を求め,検者内信頼性ICC(1,1)と繰り返し回数毎の検者間信頼性ICC(2,1)を検証した.すべての検定における有意水準は1%とし,本統計分析にはIBM SPSS Statistics 20を用いた.【倫理的配慮、説明と同意】対象者全員には本研究の趣旨と内容について説明し理解を得た上で協力を求めたが,研究への参加は自由意志であり検者にならなくとも不利益にならないことを十分に説明し,同意を得た後研究を開始した.【結果】10枚の画像における標準誤差の平均はA群が0.13度,B群は0.18度であった.検者内信頼性ICC(1,1)はA群1.00,B群0.99,検者間信頼性ICC(2,1)はA群0.99,B群0.99であった.各画像の真の角度と計測値との相関係数を求めたところ,A群・B群それぞれに有意な強い相関を認めた(γ=1.00;p<0.01).【考察】今回,動作分析を行う一つの手段として使用できる動作測定プログラムMMPの作成を行い,その精度と測定に関する信頼性について検証を行った.ビデオカメラを使用した分析プログラムには,Web上に提供され無償のものから有償のものまで存在し,その有効性について論じられている.これらの研究結果から分析ソフト間の精度や測定の信頼性について比較検討を行うことは難しいが,他の画像分析ソフトに関する報告とMMPの精度を比較しても有益な結果であったと考えている.MMPを作成にあたり,測定作業が容易であり,個人で所持しているパソコンで使用できることを目的とした.さらに,MMPはEXCELのVBAを使用し作成しているので,必要に応じて内容を変更することが可能で,学生や臨床現場の要望にも対応が可能であることも特徴である.今後の課題として,撮影方法・3次元的要素の影響などに関しての検討を行う必要があると考える.【理学療法学研究としての意義】ビデオカメラを使用した動作解析は,簡単に行えるといった利点があるがその適用と限界を理解していくことで更なる臨床応用や教育の場での使用が可能になると考える.