理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: G-P-04
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ポスター発表
臨床実習が社会人基礎力自己評価に与える影響
高島 恵平林 弦大加藤 研太郎眞塩 紀人白石 和也
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抄録
【はじめに、目的】2006年に経済産業省によって提唱された「社会人基礎力」が注目されている。社会人基礎力は「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」と定義され、3つの能力・12の能力要素から成る。本校においても職業教育の一環としてこの指標を取り入れ日々の教育を実施しているが、臨床実習によって社会人基礎力がどのように変化するのかを確認し、臨床実習の効果判定および学内教育の一助とすべく調査を行ったので報告する。【方法】対象は本校理学療法学科第3学年学生30名であり、方法は経済産業省の「社会人基礎力自己診断シート」を用いて、実習前および臨床実習(8週間を2回実施)後に学生による自己診断を実施し、実習前後の差の検定を行った。自己診断項目は、I.前に踏み出す力(①主体性 ②働きかけ力 ③実行力)・Ⅱ.考え抜く力(④課題発見力 ⑤計画力 ⑥創造力)・Ⅲ.チームで働く力(⑦発信力 ⑧傾聴力 ⑨柔軟性 ・情況把握力 ・規律性 ・ストレスコントロール力)の3領域12項目からなり、この12項目を5段階尺度にて自己評価を実施した。5段階尺度の内訳として、12項目別に各尺度の具体例が示されており、例えば①主体性(物事に進んで取り組む力)に関しては 5:いつでも積極的に取り組むことができる 4:積極的に取り組むことが、ややできる 3:内容によって、取り組むことができる 2:指示があれば取り組むことができる 1:なかなか取り組むことができない、とされている。統計処理はR2.8.1を使用し、ウィルコクソンの符号付順位和検定にてp<0.05をもって有意差とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究に関しては本校運営会議の承認のもと、対象者には紙面および口頭にて研究趣旨・データの取り扱いについて説明し、研究に対する同意を書面にて得た。【結果】12項目中、②働きかけ力(実習前中央値:4、実習後中央値3)・③実行力(実習前中央値:3、実習後中央値2)・⑦発信力(実習前中央値:3.5、実習後中央値3)において差があり(p<0.05)、実習前の自己評価より実習後の自己評価が低い結果となった。それぞれの能力の具体例として、②働きかけ力:他人に働きかけ、目的に向かって周囲の人々を動かしていく力 ③実行力:言われたことをやるだけではなく自ら目標を設定し、失敗を恐れず行動に移し、粘り強く取り組む力 ⑦発信力:自分の意見をわかりやすく整理した上で、相手に理解してもらえるよう的確に伝える力、とされている。【考察】臨床実習後にいくつかの項目において自己評価が低くなる結果となったが、その理由について以下に考察する。まず学内教育において各項目に当てはまる内容としては、「働きかけ力」や「発信力」についてはピア学習やグループワークにおける積極的な発言を促したり、講義内の自主的な発言を是としたりすることを日々実践している。また「実行力」に関しては、半期ごとに学生が自分自身に対する目標設定とそれを達成するためのプランを立案し日々の実践を促すことで、学校目標の達成はもちろん、個人に不足している内容の振り返りに基づいた目標達成が実行できるようサポートしている。これらの取り組みも一助となり、学生は学内レベルで求められる上記の能力はある程度身についたという認識で実習に臨んでいるが、実習においては実習指導者・対象者・他職種職員などあらゆる方々と関わり、取り組む姿勢に関しても学内以上に主体性をもって働きかけることが必要である場合が多いことから、「学内での自己認識」と「実習での自己認識」とのギャップを認識する機会となったのではないかと考える。今後に関して、現在社会人基礎力は自己評価のみに留まっており、教員や実習指導者による他者評価には至っていないのが現状である。今回の研究からも示唆されるように自己評価は曖昧なものであり、他者評価との差も当然懸念される。さらに、学内で培った社会人基礎力が実習においてどのように変化するかを捉えるためにも、学内自己評価および学内教員評価だけではなく、同じツールを用いて実習指導者評価も行うことによって教育の一貫性が担保されると考える。【理学療法学研究としての意義】本研究は、理学療法教育の中でも職業教育の一環として「社会人基礎力」の育成について検討したという点で、理学療法士の後進育成という観点から意義があるものと考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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