抄録
【はじめに,目的】日常生活動作能力の獲得は脳性麻痺児のリハビリテーションの重要な目的である。その介入において,児とともに生活する家族との協働は不可欠である。しかし家族への指導や関わりは臨床経験に依存しており,児の日常生活動作能力に応じた家族への関わりの根拠は不十分である。そこで本研究では,リハビリテーションにおける家族へのどのような関わりが脳性麻痺児の日常生活動作能力と関係しているか検討することを目的とした。【方法】対象者は3~15歳の脳性麻痺児35名(男児21名,女児14名,平均年齢8歳6ヶ月±3歳3ヶ月)とその親であった。Gross Motor Function Classification System(GMFCS)はレベルIが3名,IIが14名,IIIが2名,IVが8名,Vが8名であった。日常生活動作はPediatric Evaluation of Disability Inventory(PEDI)の機能的スキルの3領域(セルフケア,移動,社会的機能),リハビリテーションの家族への関わりはMeasure of Processes of Care(MPOC-20)の5領域(「励ましと協力」,「全般的な情報提供」,「子どもに関する具体的な情報提供」,「対等で包括的な関わり」,「尊重と支え」)で評価した。MPOC-20の結果に影響を及ぼす可能性がある親の健康関連QoLはSF-36を用いて評価した。PEDIとMPOC-20の関連を見るため相関係数を求めた。日常生活動作に影響する家族への関わりに関する変数を決定するため,PEDIの機能的スキルの3領域それぞれを従属変数,MPOC-20の5領域,年齢,重症度(移動能力により2区分;GMFCSレベルI,IIと,レベルIII,IV,V),SF-36の精神的側面のQoLサマリースコアを独立変数としたステップワイズ法による多重線形回帰分析を行った。すべての検定における有意水準は5%とした。すべての統計解析はSPSS18.0Jを用いた。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は札幌医科大学倫理委員会の承認を得て行った。対象となる子どもの親には書面と口頭による説明を行い,署名による同意を得た上でデータ収集を行った。【結果】PEDIとMPOC-20の各領域スコアの間に,セルフケアと「全般的な情報提供」(r=-0.34),社会的機能と「全般的な情報提供」(r=-0.44),社会的機能と「尊重と支え」(r=-0.35)でそれぞれ有意な相関を認めた(p<0.05)。多重線形回帰分析では,セルフケア領域の寄与率は48%(p<0.001)で重症度(β=-0.61,p<0.001)と「全般的な情報提供」(β=-0.28,p<0.05)が,移動領域の寄与率は80%(p<0.001)で重症度(β=-0.86,p<0.001)と「全般的な情報提供」(β=-0.17,p<0.05)が,社会的機能領域の寄与率は40%(p<0.001)で重症度(β=-0.45,p<0.01)と「全般的な情報提供」(β=-0.40,p<0.05)がそれぞれ採用された。【考察】脳性麻痺児のリハビリテーションにおいて,家族への関わりと児の日常生活動作能力が関連していることが示された。家族を中心としてリハビリテーションを実施する重要性を示す根拠となりうる。児の機能的スキルが制限されている場合,リハビリテーションの専門家は多くの全般的な情報提供を行い,より家族の思いを尊重し関わっていることが示された。日常生活活動の制限を軽減するため,身体的なスキルの向上だけでなく,環境や社会資源といった全般的な情報を多く提供していると考える。リハビリテーションの専門家は運動機能へのハンドリングなどの技術だけでなく,社会資源や環境を活用するための情報提供に関する知識や技術を向上することが重要と考える。本研究の限界は,対象者数が少ないこと,横断的研究であり日常生活動作能力の獲得と家族への関わりの因果関係までは言及できないことである。【理学療法学研究としての意義】近年,脳性麻痺児へのリハビリテーションは家族を中心として介入することが求められている。日本では家族への関わりは臨床経験に依存して実施されているのが現状である。本研究の結果は根拠を持って家族へ関わっていく上で重要な情報となりうる。