理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-O-07
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一般口述発表
重症心身障害者における四肢周径と粗大運動能力および日常生活活動との関係
重島 晃史野々 篤志
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抄録
【はじめに、目的】 高齢者に関しては身体計測と日常生活活動(以下,ADL)との関係はしばしば検討されており,筋肉量や栄養状態と相関する四肢周径とADLとの関連が報告されている。一方,重症心身障害者(以下,重症者)は重度の運動障害を有するためADLが著明に制限されるが,身体計測とADLとの関係は十分明らかにされていない。重症者では身体計測に関する客観的情報が少なく,身体計測とADLとの関連に関する報告があまり認められないのが現状である。我々は前回の報告において(日本理学療法学術大会,2012),下肢周径が粗大運動能力とADL能力との相関を示し,身体活動量の低下が骨格筋量や栄養の低下を招きADL能力低下を助長する可能性について述べた。しかし,個々のADL能力と粗大運動能力および四肢周径との関連について明らかにすることはできなかった。そこで,本研究の目的は食事や整容,移動能力を始めとする個々のADL能力と粗大運動能力および四肢周径との関連性を比較検討することとし,若干の知見を得たので報告する。【方法】 対象はA病院に入所する重症児・者53名(男性30名,女性23名)であった。対象者の平均年齢(範囲),身長(平均±標準偏差),体重(平均±標準偏差),BMI(平均±標準偏差)はそれぞれ,45歳(18-73歳),142.9±11.9cm,31.2±7.6kg,15.3±3.4であった。診断は脳性麻痺44名,精神遅滞4名,その他5名で,粗大運動能力の重症度は粗大運動能力分類システム(GMFCS)によりレベルIV(9名),レベルV(44名)に分類された。四肢周径では,両側上腕最大周径,両側前腕最大周径,両側大腿周径(膝10cm直上)および両側下腿最大周径を計測し,左右の平均値を算出した。ADLの測定には日本広汎小児リハ評価セット・ADLver3.2(以下,JASPER)を用いた。JASPERは「食事」「排泄」「更衣」「整容」「入浴」「移動」の6項目からなり,自立度および介助度を点数化し,それぞれ点数が高いほど自立レベルあるいは介助レベルが高いことを表す。各対象者の各ADL項目に対し,JASPERの自立度(以下,ADL自立度)および介助度(以下,ADL介助度)を測定し,それぞれの合計点を算出した。統計学的解析ではGMFCSのレベルIVとレベルVとの間で四肢周径,各ADL項目の自立度および介助度をマン・ホイットニU検定で比較検討した。また,四肢周径とJASPERの各項目との関係について,スピアマンの順位相関係数で比較検討した。なお,統計学的解析にはIBM SPSS Statistics Ver.20を使用し,危険率5%未満を有意水準とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は独立行政法人国立病院機構高知病院倫理委員会および当院保護者会の承認を得た上で実施された。【結果】 四肢周径および各ADL能力において,GMFCSのレベルIVとVとの間にはすべて有意差が認められ,GMFCSレベルIVは有意に四肢周径が大きく,個々のADL能力も優れていた(p<0.05)。四肢周径と各ADL能力の自立度との関係において,すべての四肢周径は排泄,更衣,移動と有意な相関を示した(rs=0.271~0.409,p<0.05)。また,すべての四肢周径は各ADL能力の介助度との関係も同様の項目で相関を示した(rs=-0.285~-0.404,p<0.05)。【考察】 本研究における対象の四肢周径は「新・日本人の体力標準値II(2007)」によると日本人の平均値を下回り,著明な周径の低下が明らかとなった。周径は骨格筋量や栄養状態,筋力の指標になると言われていることから,本研究の対象者は標準的な状態に比較して優位に劣っていると推察された。粗大運動能力や四肢周径,ADL能力は互いに関連性を示し,四肢周径が大きいほどADL能力は良好であった。四肢周径とADL能力との関連で特に相関が認められたのは「排泄」「更衣」「移動」であった。JASPERのテストにおいて,これらの動作は姿勢保持や姿勢変換に必要な抗重力活動が要求される。したがって,重症者においてより優れた運動能力やADL能力を発揮するためには,それ相応の栄養状態や筋力,骨格筋量を有する必要があり,四肢周径の発達は両者を反映することが推察された。【理学療法学研究としての意義】 重症者において筋力など身体機能を計測することは困難であることが多いが,今回の研究において四肢周径が粗大運動能力やADLと関連性を示したことは,機能障害や能力障害の一指標として活用できる可能性を示したという点で理学療法学研究として意義があると考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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