抄録
【はじめに、目的】我々が関わる地域高齢者の中には,身体は元気だがデイや病院以外の外出はしないといったケースが多々ある。要支援者においても外出の狭小化が日常として見られている。その中で,外出の阻害因子やQOLとの関係性に関する文献は多数あるが,身体機能や活動性,環境因子を包括的に調査した文献はない。そこで今回,生き生きとした地域生活度を包括的に判断するE-SASとアンケートを用いて外出の現状を調査した。【方法】弊社デイサービスを利用している要支援者からHDS-Rが22点以上の方23名を対象とした。上記の方に対して,E-SASならびにアンケートを実施した。アンケートは外出の目的・手段・外出に必要な要素・心配なこと・外出に対する満足度からなり,満足度以外は複数回答式とした。分析方法として,E-SASの生活のひろがりを軸とし,これとE-SASの各項目ならびに,アンケート内容とを多重回帰分散分析を用いて検証した。また,アンケート調査から外出因子の傾向を導き出すこととした。【倫理的配慮、説明と同意】アンケート調査を行う前に,対象のご利用者様には研究協力とプライバシー保護に関する承諾書を作成し,承諾して下さった方のみ協力していただいた。【結果】E-SASの大項目「生活のひろがり」とその他5つの評価項目(ころばない自信・入浴動作・TUG・休まず歩ける距離・人とのつながり)とを多重回帰分散分析を行ったが,相関はみられなかった。同様に,「生活のひろがり」と各アンケート項目とを多重回帰分散分析を行ったが,これも相関がみられなかった。また,生活のひろがりと上記の各項目とを散布図で表したが,特定の傾向を導き出すことができなかった。一方,アンケートの結果は以下のようになった。外出の目的:医療機関100%,散歩・買い物78%,喫茶店65%,知人61%。外出の手段:徒歩96%,自家用車74%,タクシー52%,その他公共交通機関は各々26%以下。必要な要素:付き添い91%,トイレ自立78%,杖で歩ける73%,勇気65%。心配なこと:バリアフリー61%,荷物・トイレの有無61%,周囲の目35%。満足度:満足27%・我慢している55%・外出に興味がない18%となった。【考察】E-SASにおける「生活のひろがり」とその他項目の相関が得られなかったことから,単一の要因が外出におよぼす影響力は極めて少ないと考えられる。そのためE-SASとアンケートから傾向を探っていくと,回答者の大多数が余暇活動としての外出を行っているにも関わらず,満足と答えた方は27%に留まった。外出に必要な要素として,付き添い,トイレ自立,歩行,勇気が上位であった。また,付き添いの方へのお願いをためらうケースが多く見られた他,車椅子で外出不可と回答した方の73%が他者の目を気にしていた。また,洋式トイレの有無や荷物を持っての移動を心配するケースも多数あった。以上より、多様な生活能力・環境因子・個人因子の3点が中心課題となることがわかった。これらはリハビリテーションによるアプローチが可能と考えられる。環境因子においては,付き添い者(家族や親戚)との関係強化が必要となる。個人因子で上がった問題も含め,いきたい場所・やりたいことをしっかり話し合い,目標や計画を共有する必要があると考える。トイレやバリアフリーの問題に関しては,障害者トイレやバリアフリー環境に関する情報がきめ細かく提供され,十分に認知されている必要がある。生活能力や個人因子に関しては,ご利用者様の課題を的確に把握し,実践していくことが求められる。共通することとして,実際に外出を行うことで,必要な課題や次の目標が見えてくる。時間が掛かることが想定されるが,保険制度の特色を生かし(H24年から訪問看護ステーションからのリハビリテーションが回数制になった)、実践練習日を設定することも可能であり,挑戦するには良い期間であると言えるだろう。まとめとして,今回の調査より外出の阻害因子は単一ではなく多岐に渡っていることが見られた。ご利用者様・ご家族に対し包括的な評価・介入を行い,QOLの向上の支援を行っていきたい。【理学療法学研究としての意義】外出に関する要因は多岐にわたる為,アプローチを行う場合に,問題点の抽出が非常に困難であり,また1スタッフの力だけでは変えていくことが非常に困難な場合がある。そのため,外出に関する要因の傾向を知っておくことで,我々リハビリテーションに関わるスタッフがアプローチすべき点を導きやすくなり,多職種へのアプローチもより速く進めていくことが可能になるのではないかと考える。