理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-49
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ポスター発表
慢性痛患者チーム医療における理学療法的アプローチの有効性に関連する予測因子の検索
森本 温子吉本 隆彦櫻井 博紀大道 裕介長谷川 義修山田 雄士牛田 享宏
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キーワード: 慢性痛, 理学療法, 予測因子
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抄録
【はじめに、目的】慢性痛は身体的問題だけでなく、精神医学的・心理社会的問題が複雑に絡み合って形成されており、その症状や含まれている病態も多岐に渡る。このような慢性痛に対しては単一治療の効果は乏しく、学際的な評価を行った上で適切な治療アプローチの組み合わせを選択する必要がある。治療選択にあたっては、治療効果の予測因子を理解することが重要であるが、慢性痛患者チーム医療の一翼を担う理学療法的アプローチに関して、その有効性に関連する病態および個人因子などの相対的影響度を報告したものは少ない。そこで、本研究では当大学痛みセンターにおける理学療法の有効性に関連する予測因子を調査することを目的とする。【方法】対象は平成19年7月から平成23年6月に本センターにて理学療法的介入を行った患者698名のうち除外基準該当者を除いた167名とした。理学療法的アプローチ(徒手療法、運動療法、ホームエクササイズ指導、患者教育など)は週1回から月1回の頻度で行った。なお、薬物療法などの他の治療は通常通り行っている。評価項目として、基本情報(年齢、性別、既往歴など)、痛み症状(VAS、痛み部位など)、Hospital Anxiety and Depression Scale(以下HADS)、疼痛生活障害評価尺度(以下PDAS)、主観的改善感を問診および質問用紙にて治療前および治療開始5か月後に調査した。治療前後の各評価項目の変化については一標本t検定を行い、さらに各指標間の偏相関係数を算出した。また、有効性に関連する予測因子の解析には、介入5ヶ月後の①VASの変化量、②PDASの変化量、③主観的改善感を目的変数とした重回帰分析による多変量解析を行った。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は、愛知医科大学に設置されている委員会において審議し、了承を得たのち実施した。研究を行うにあたっては、ヘルシンキ宣言に盛られた倫理的配慮を考慮し、インフォームドコンセントを得た上で、プライバシーなど秘守義務を守って遂行した。【結果】母集団は平均年齢56.1歳、女性60.7%、平均罹患期間69.6ヶ月であり、腰殿部痛を訴える患者が40.7%を占めた。理学療法的アプローチ5か月後にVAS、PDAS、HADSの改善が認められ(p<0.05)、主観的改善感では80%以上で「改善」以上の回答を得られた。さらに、主観的改善感と治療前後のVASの変化量には有意な相関が認められた(p<0.05)。また、介入後のVASの変化量の関連因子には、①手術歴の有無、②介入前のPDAS、③主訴が運動時痛であるか否か、が挙げられた(p<0.05)。一方、PDASの変化量および主観的改善感の関連因子には、①年齢、②痛みの拡がり、③手術歴の有無、が挙げられた。【考察】本結果では、理学療法的アプローチ後5ヶ月において、患者の訴える痛みや生活障害は改善傾向にあった。その中で、“術後ではない”、“生活障害が小さい”、“運動時痛が主訴”である症例に対してはより痛みの改善効果が期待できる可能性が示された。特に“運動時痛が主訴”の項目については、運動器由来の疼痛に理学療法が有効であったと考えられた。また、“痛みの部位が限局的”、“若齢”、“術後でない”症例は、本アプローチによって生活障害の改善効果および主観的改善感がより得られやすい症例であることが示唆され、痛みの改善効果に関する予測因子とは異なった。これらの結果は、各患者における理学療法的アプローチの目標が“痛みの改善”および“生活障害の改善”のいずれに設定されるべきかについて、治療前評価の一助になると考える。今回解析した因子は慢性痛を取り巻く因子の中でも一部でしかないことに本研究の限界があるが、今回はその中で理学療法的アプローチの効果に関連するいくつかの因子が確認された。【理学療法学研究としての意義】慢性痛の保有率の高さや莫大な経済的損失などを背景に、慢性痛に対する集学的治療の必要性は高まっている。今回は慢性疼痛患者における理学療法の効果の予測因子について調査を行ったが、これらの結果は集学的治療におけるより適切な治療選択に繋げ、その発展の一助になると考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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