理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: D-P-03
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ポスター発表
回復期心臓リハビリテーションにおける健康関連QOLに影響する因子の検討
健康関連QOLと身体機能・心理状態との関連
岡嶋 雅史日比野 優荒川 聡美倉知 真一柳澤 しより三輪 憲司
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抄録
【はじめに、目的】 心臓リハビリテーション(以下、心リハ)は運動耐容能の増加、日常生活における諸症状の軽減、健康関連QOLの向上など多くの効果が認められている。近年、急性期病院における心疾患患者の在院日数短縮により、心リハは回復期においてもその重要性が確認されており、改善に時間を要する健康関連QOLの向上は回復期心リハの主要な目的の一つに挙げられている。しかし、回復期心リハの健康関連QOLに寄与する要因を明らかにしている報告は少ない。そこで、本研究では回復期心リハ終了時における健康関連QOLと身体機能、心理状態との関係を調査し、健康関連QOLに影響を与える因子を明らかにすることを目的とした。【方法】 当院の監視型回復期心リハ外来に参加し、24回以上継続できた31名(男性22名、女性9名/AMI18名、AP4名、CABG後4名、CHF5名)を対象とした。健康関連QOLの評価にはMOS Short Form 36-Item Health Survey ver.2(以下、SF-36)を用い、回復期心リハ終了時(外来24回参加時)のアンケート結果を身体的サマリースコア(PCS)と精神的サマリースコア(MCS)に分けて算出した。健康関連QOLとの関係を調査する項目として、回復期心リハ終了同日に身体機能(握力、等尺性膝伸展筋力、片脚立位時間、10m最大歩行速度、6分間歩行試験)と心理状態(Hospital Anxiety and Depression Score:HADS)を評価した。また、患者の基礎情報(年齢、BMI、LVEF、回復期心リハ実施期間)をカルテから後方視的に調査した。統計解析は、SF-36(PCS、MCS)と身体機能、心理状態、基礎情報との関連をPearsonの相関係数を用いて分析した。また、有意に相関のあった項目を独立変数、SF-36(PCS、MCS)を従属変数としたステップワイズ法による重回帰分析を行い、健康関連QOLに影響する独立した関連因子を探索した。解析にはSPSS Statistics18を使用し、有意水準を5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究はヘルシンキ宣言に則って、対象者に研究の趣旨、内容、及び調査結果の取り扱い等に関して説明を行い、書面にて同意を得た。【結果】 各項目の測定結果は平均値±標準偏差で示した。対象者の年齢は67.8±6.9歳、回復期心リハ実施期間は118.8±33.8日、PCSは45.6±9.9点、MSCは57.3±5.7点であった。PCSと相関があった項目は、BMI(r=-0.534)、握力(r=0.485)、片脚立位時間(r=0.459)、6分間歩行試験(r=0.582)、HADS(r=-0.641)、MCSと相関があった項目は、6分間歩行試験(r=0.496)、HADS(r=-0.734)で、全て有意な相関を認めた(p<0.01)。また、これらの相関を認めた項目を重回帰分析に投入した結果、PCSではBMI(β=-0.398)、握力(β=0.358)、HADS(β=-0.458)が、MCSではHADS(β=-0.734)が最終的に抽出され、全て有意な影響を示した(p<0.01)。尚、決定係数R²はPCSで0.680、MCSで0.538(共にANOVA p<0.001)と比較的適合性を有し、多重共線性の発生は見られなかった。【考察】 本研究において回復期心リハ終了時のSF-36と関連が見られた項目は、PCSではBMI、握力、片脚立位時間、6分間歩行試験、HADS、MCSでは6分間歩行試験、HADSであった。PCSは身体的健康感を表す指標であり、体組成、筋力、バランス、運動耐容能といった身体機能と関連があることが、またMCSは精神的健康感を表す指標であり、主に心理状態と関連があることが示唆された。一方で、年齢やLVEF、回復期心リハ実施期間とは関連が少ないことも示された。また、関連を有した項目の中でもPCSではBMI、握力、HADSが、MCSではHADSが最終的に抽出された。このことから、全身筋力を反映するといわれる握力などの身体機能だけでなく、BMIに表される肥満や動作負担の軽減などの実感しやすい体組成指標や、HADSに表される不安や抑うつなどの心理状態も、健康関連QOLへ影響を与える独立した因子であることが考えられた。特にHADSの標準偏回帰係数(β)はPCS、MCSともに大きく、影響力が強いことが示唆された。また、本研究の限界として、女性はQOLが低下しやすいと言われているが、本研究では症例数が少なく性差別の検討を行っていない。今後は症例数を増やし、性差による影響の検討も行っていく必要があると考える。【理学療法学研究としての意義】 今回、回復期心リハの主要目的である健康関連QOLの向上に影響を与える因子を検討した。結果、身体的健康感には筋力、バランス、運動耐容能などの身体機能との関連を多く認めたが、精神的健康感を含めた健康関連QOLには体組成や心理状態も大きく影響することが示された。よって、回復期心リハにおける健康関連QOLの向上には、運動療法による身体機能改善だけでなく、栄養指導や心理的支持を含めた包括的な介入が望まれることが確認された。
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© 2013 日本理学療法士協会
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