抄録
【はじめに】近年、末梢動脈疾患(PAD)患者に対するリハビリテーション(リハ)の有効性が示され、重症虚血肢(CLI)の術後患者におけるリハの必要性が高まってきた。CLI患者は併存疾患や疼痛の影響で、術前から活動性が低下していることが多く、術後身体機能の低下を来たしやすい。そこで今回、CLI患者とそれ以外の患者における血管外科術後退院時の身体機能を比較したので報告する。【方法】2012年1月から2012年10月までに腹部・下肢血行再建術または血栓除去術を施行され、術後リハを実施したPAD患者のうち、退院時に身体機能評価を実施できた37例を対象とした。対象者は年齢71.9±8.5歳、男性25例(67.6%)であった。退院時の身体機能は、6分間歩行距離(6MWD)、Medical Research Council(MRC)筋力スケール、Walking Impairment Questionnaire(WIQ)を用いて評価した。MRC筋力スケールは、左右の肩関節外転、肘関節屈曲、手関節掌屈、股関節屈曲、膝関節伸展、足関節背屈筋力を各0-5点で評価した(合計0-60点)。WIQは、疼痛、歩行距離、歩行スピード、階段昇降の4項目を各々0-100点で評価する疾患特異的な質問票で、状態が良いほど得点が高くなる。全対象者のうち、術前に安静時疼痛や潰瘍・壊疽などの症状を呈していたFontaine分類III度以上の16例(CLI群)と、II度以下の21例(non-CLI群)の2群に分け、年齢、性別、手術時間、出血量、術後在院日数、6MWD、MRC筋力スケール、WIQを比較した。各調査項目の順序尺度は、平均値±標準偏差で示した。調査項目の2群間の比較は、間隔尺度はt検定を、順序尺度はχ2乗検定を用いて実施した。有意水準は、p<0.05とした。統計学的検討はSPSS 18.0を用いて実施した。【倫理的配慮】リハ実施にあたり、リハ介入の目的・必要性を説明し、書面にて同意を得た。また、前述の調査項目は診療記録より後方視的に調査し、データの集計は患者名をコード化し、個人を特定できないように配慮した。【結果】CLI群は年齢72.3±9.2歳、男性12例(75%)、non-CLI群は年齢71.7±8.1歳、男性13例(61.9%)で2群間に有意差を認めなかった。手術時間はCLI群244.6±87.6分、non-CLI群170.5±76.0分、出血量はCLI群229.3±271.6ml、non-CLI群204.8±202.7ml、術後在院日数はCLI群40.1±25.4日、non-CLI群15.5±7.4日で、手術時間(p<0.05)と術後在院日数(p<0.001)において2群間に有意差を認めた。6MWDはCLI群182.2±145.2m、non-CLI群317.5±116.1mでCLI群の方が有意に短かった(p<0.01)。MRC筋力スケールはCLI群51.1±10.0点、non-CLI群58.4±4.3点でCLI群の方が有意に低かった(p<0.01)。WIQでは、痛みはCLI群76.6±33.5点、non-CLI群75.0±29.6点、歩行距離はCLI群34.7±42.9点、non-CLI群67.9±37.0点、歩行スピードはCLI群28.8±25.2点、non-CLI群51.5±30.5点、階段昇降はCLI群44.8±45.2点、non-CLI群68.7±34.5点で、歩行距離(p<0.05)と歩行スピード(p<0.05)において2群間で有意差を認めた。【考察】本研究の結果、CLI群の方が退院時の6MWD、筋力、歩行能力が低下していることが示された。手術時間や在院日数においてもCLI群の方が有意に長いことから、手術・術後治療に時間を要すことが退院時の身体機能の低下を助長している可能性もある。また、CLI患者は肢切断や血管イベントの発生リスクが高く、予後不良とされている。過去にPAD患者の身体機能と予後との相関がいくつか報告されており、CLI患者の身体機能の低下が予後不良の一因であることが示唆された。以上より、CLI患者に対して退院後も継続してリハ介入する必要があると考えられた。【理学療法学研究としての意義】CLI患者における術後身体機能の低下が示され、継続的なリハ介入の必要性が示唆されたため、本研究結果は臨床上有益である。