理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-36
会議情報

ポスター発表
走行運動及び足関節筋力低下状態での走行運動が膝関節軟骨に及ぼす影響
小澤 淳也金口 瑛典木藤 伸宏田中 亮森山 英樹
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに、目的】我々は、第47 回本学術集会にて、ラットに対し低強度走行運動を行うことで、関節軟骨の主要タンパクであるⅡ型コラーゲンの代謝が走行6 週で同化に傾くこと、さらに腓腹筋へのA型ボツリヌス毒素 (BTX) 投与により足関節底屈筋力が低下した状態では、Ⅱ型コラーゲンは走行1 週で一過性に同化に傾くものの、その後は消失したことを報告した。しかし、その研究では血清軟骨代謝マーカーを指標としたため、軟骨代謝の変化が生じた関節部位を同定することが出来なかった。本研究では、「走行や足関節筋力低下状態での走行による軟骨代謝の変化は膝関節で生じる」との仮説を立て、膝関節軟骨の組織学的ならびに形態定量学的解析による検証を行なった。さらに、BTX投与後のラットの歩行動作解析を行うことで、歩容の異常と膝関節軟骨の形態学的変化との関連を運動学的な観点より検討することを目的とした。【方法】14 週齢雄性ウィスターラットを使用した。ラットを対照群、走行群、BTX+走行群の3 群 (各5 匹) に分けた。走行群とBTX+走行群には、5° の上り傾斜、12 m/minで合計60分のトレッドミル走行を5日/週行った。BTX+走行群には、走行開始3 日前に0.2 U/kg体重のBTXを右腓腹筋に注射して足関節底屈筋力を低下させた。対照群は自由飼育とした。6 週間後にラットを屠殺し、腓腹筋の筋湿重量を測定した。膝関節を採取し、固定、脱灰後、パラフィン切片を作製した。サフラニンO染色後、脛骨外側プラトーの軟骨厚を計測した。ラットの歩行動作解析には、三次元動作解析装置キネマトレーサーを用いた。BTX+走行群の注射前および注射後1、3、6 週のラットの両後肢の膝関節裂隙、外果、第5 中足骨頭にマーカーを添付し、トレッドミル上を走行する動作を記録し、歩行時の足関節可動域の変化を算出した。得られたデータは一元配置分散分析もしくはクラスカルワーリス検定およびその後の多重比較を行なった。統計学的有意判定の基準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は、広島国際大学動物実験委員会の承認を得て行った (承認番号AE12-015)。【結果】右腓腹筋湿重量/体重比 (mg/g) は、対照群で4.9 ± 0.3 に対し、走行群で4.9 ± 0.3 とほぼ同様 (99%) であった。一方、BTX+走行群では2.2 ± 0.2 (45%) と対照群に比べ有意な筋萎縮を認めた。BTX+走行群の歩行立脚期における足関節最大背屈角度は、BTX注射前が右側 (投与側) vs 左側 (非投与側) で37 ± 4° vs 33 ± 11°(右 /左 = 110%) に対し、注射後1、3、6 週ではそれぞれ51 ± 8° vs 29 ± 4°(175%、 P < 0.05)、47 ± 7° vs 33 ± 11°(168%、 P < 0.05)、35 ± 9° vs 24 ± 11°(142%、 P = 0.20) といずれもBTX投与側で増加もしくは増加傾向がみられた。組織学的観察では、対照群と同様、走行群で軟骨基質にプロテオグリカンを豊富に含むことを示す高い染色性が認められた一方、5 標本中3 標本で嚢胞が観察された。BTX+走行群では、両膝ともに重篤な損傷は観察されなかったが、一部に基質染色性低下、軟骨表面の不連続性やタイドマークの消失が観察された。軟骨厚は対照群では320 ± 57 μmに対し、走行群では329 ± 53 μm(103%) と両群間に差は認められなかった。一方、BTX+走行群では、BTX投与側で247 ± 20 μm (77%)、BTX非投与側で283 ± 48 μm (88%) と、共に対照群と比べ有意な減少を示した。【考察】BTX+走行群の立脚期の足関節最大背屈可動域が、BTX投与側で非投与側より増加した原因として、荷重時の脛骨の前方モーメントにより生じる足関節背屈を底屈筋で抑制することが出来なかったためと考えられた。膝関節軟骨厚は、走行群では維持されていた一方、BTX+走行群では、両側の膝関節軟骨に菲薄化がみられた。BTX投与側では、足関節の床反力に対する衝撃緩衝機能が足関節筋力低下により消失し、膝関節へのメカニカルストレスが増大した結果、軟骨代謝を異化に導いたと考えられた。さらに、BTX非投与側では、歩行時の荷重量が代償的に増加し過負荷となったため、軟骨代謝が異化に傾いたと考えられた。【理学療法学研究としての意義】運動は膝関節軟骨代謝を維持・促進させる一方、下肢筋力が低下した者の歩行や走行は条件によっては悪影響を与える可能性がある。本研究は、膝関節疾患の運動療法の禁忌や適応を判断するうえで有用なデータとなる。
著者関連情報
© 2013 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top