理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-O-12
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一般口述発表
脳損傷患者の手摺り把持部位の持ち換えによる重心移動距離について
小暮 英輔前田 眞治山本 潤櫻井 好美
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抄録
【はじめに、目的】車椅子移動を主とする脳血管障害患者が、快適な日常生活活動(ADL)を送るために、安全で確実な移乗動作を身に付ける必要がある。特に移乗には体幹回旋を伴い、正面立位のみならず、その際の立位保持能力を安定させることは安全確保の観点から必須である。しかし、その実行に必要な左右脳損傷別での立位保持・体幹回旋について詳細に言及されている文献は調べうる限りない。ADL上必要となる移乗動作時の立位保持能力・立位動揺と左右脳損傷の関連をみることは、立位保持能力障害を呈した患者のADLを把握、またリスク管理や介助・指導方法につながる上で必要不可欠のものと考えられる。そこで、脳血管障害片麻痺患者の移乗時のリスク管理・介助方法等の具体的な方策を検討するために、左右脳損傷別に正中立位・体幹回旋時の立位での手摺り把持部位の違いによる重心移動距離について調べた。【方法】A病院回復期リハビリテーション病棟に入院し、脳血管障害で片麻痺を呈した25例(右片麻痺11例、左片麻痺14例)を対象とした。なお、手摺りを把持した状態での立位保持が困難な者、整形疾患等により著明な下肢アライメント異常をきたしている者は除外した。課題条件として正中立位と体幹麻痺側回旋位15°立位保持(回旋立位)で行い、手摺り把持は、麻痺側肩峰の前方・正中・非麻痺側肩峰の前方に位置した3箇所を非麻痺側上肢で把持させた。計測方法として、手摺りを把持した後、被験者は正面の鏡に映った自分の目を見た際の重心動揺を計測した。片麻痺患者は1)麻痺側寄りの手摺り2)正中手摺り3)非麻痺側寄りの手摺りの順に手摺りを把持させた。したがって左右麻痺側によって左右の順は逆になっている。最初は正中立位で3箇所の把持ごとに15秒間、次に15°斜め前方の鏡で確認させた回旋立位で3箇所の把持を15秒間計測し、計6条件での立位重心を計測した。その際の手摺りごとの重心位置間での距離1)→2)、2)→3)、1)→3)についてBonferroni補正を行った上で、Wilcoxon符号付き順位検定で比較した。解析には、IBM SPSS statistics ver.19を使用し、有意水準は1.67%未満(5%/3)とした。計測には重心動揺計として使用できることが認められており、臨床で簡便に使用できるバランスWiiボード(サンプリング周波数:100Hz)を使用した。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は国際医療福祉大学倫理委員会の承認を得ており、被験者に計測前に十分な説明した後に了承を得て実施した。【結果】右片麻痺患者は平均年齢66.0±6.7歳、発症後経過日数73.0±32.8日、左片麻痺患者は平均年齢70.0±9.9歳、発症後経過日数64.6±34.8日であった。正中立位の手摺りごとの重心移動距離は、1)→3)が最も重心移動距離が長く右片麻痺患者は2.2±1.3cm、左片麻痺患者では2.4±1.0cmであり、2)→3)が最も短く右片麻痺患者は1.1±0.4cm、左片麻痺患者は1.1±0.7cmであった。回旋立位でも左右片麻痺患者ともに1)→3)が最も重心移動距離が長く、左右片麻痺患者とも2.6±1.6cmであり、2)→3)が最も短く、右片麻痺患者では1.5±1.0cm、左片麻痺患者では1.4±0.8cmであった。正中立位の右片麻痺患者は、2)→3)と1)→3)で、左片麻痺患者は、1)→2)と1)→3)、2)→3)と1)→3)で有意差を認めた。回旋立位では、右片麻痺患者は有意差を認めなかった。左片麻痺患者は、正中立位と同様に1)→2)と1)→3)、2)→3)と1)→3)で有意差を認めた。【考察】手摺りごとの移動距離では、麻痺側から非麻痺側に把持部位が移動することで、重心移動距離が長くなり、手摺り把持部位を大幅に変えることは姿勢への崩れにつながる。手摺り把持部位を変える時は、正中立位・回旋立位ともに正中→非麻痺側といった短距離の持ち換えが、重心移動距離が短く、安全であると考えられる。回旋立位では、左片麻痺患者の場合、空間認知障害を伴う者が多く、重心保持のための注意集中力や身体位置感覚の低下などの影響で、手摺りごとの重心移動距離に差が生じたと考えられた。以上より、手摺り把持部位により重心位置が異なることを認識し、麻痺側の左右差などに応じた対応が必要と思われた。【理学療法学研究としての意義】本研究により、左右脳損傷により移乗動作時の対応が異なることや、手摺り部位の違いや手摺りの大幅な持ち換えが転倒リスクを高くし、理学療法を行う上でのリスク管理や安全な移乗動作の患者・介助者への指導につながると考えられた。
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© 2013 日本理学療法士協会
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