理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-07
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ポスター発表
表面筋電図による低強度筋持久力評価の再現性,安全性の検討 タイプⅡb線維に着目して
岩渕 慎也鈴木 康裕入江 駿石川 公久江口 清
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抄録
【はじめに、目的】筋持久力は,ADL,QOLの観点から重要度が高いと考えられるが,評価方法については確立されておらず,臨床的に広く普及していないのが現状である.これは,重錘や等速性筋力測定器を用い,最大随意収縮を繰り返すといった作業成績を指標としたものが主であるため,評価における再現性,安全性に乏しいことが原因と言える.一方,近年では筋持久力評価に表面筋電図(以下,EMG)を用いた報告がなされている.これらの報告は主に周波数解析を用いており,この方法は筋の質的評価が可能であり,動員される筋線維タイプを特定すると同時に,周波数の移行も確認できるとされている.さらに,永田らが定義した筋疲労を評価する方法では,筋疲労を呈すると周波数は低い周波数帯域へ移行すると述べている.そこで,我々は高周波帯域であるタイプⅡb線維(以下,FG)に着目し,FGの割合が変化し低い周波数帯域へ移行するかを確認することで,EMGでの低強度負荷による筋持久力評価の再現性,安全性を検討することを目的とした.【方法】対象は,健常成人男性10 名(平均年齢29.8 ± 4.7 歳)とした.測定肢は利き脚とし,測定肢位は膝関節軽度屈曲位(5 〜10°)とした.運動負荷は,BIODEX system2 を用い120 秒間の最大トルク50%の等尺性運動とし,その際のEMGデータを記録した.測定は2 日以上あけ2 回行った.EMGの記録には,多チャンネルテレメーターシステムWEB-1000(日本光電社製)を使用し,サンプリング周波数1000Hz,バンドパスフィルターは30Hz〜350Hzとした.被検筋は大腿直筋とし,電極は筋線維の走行に可能な限り平行とし,神経−筋支配帯による誘導の妨害を避けるため,筋腹中央より停止腱側にずらし,かつBIODEXの大腿固定ベルトと干渉しない位置とした.さらに,測定中の心拍数を20 秒ごとに心電図モニターで記録した.EMGデータ120 秒のうち2 〜7 秒をpre、113 〜118 秒をpostとして抽出し,高速フーリエ変換(以下,FFT)による周波数解析にて高周波帯域(81 〜350Hz)であるFGを割合として算出した.統計にはSPSS version 20.0jを用い,抽出されたFGの割合から2 回のpre/postの差の検討に対応のあるt検定,2 回のpostの再現性の検討には級内相関係数(以下,ICC)を用い,全ての有意水準は5%とした.さらに,カルボーネンの式を用い,測定時の心拍数データから心肺運動強度を求め中央値(最小値—最大値)を算出した.【倫理的配慮、説明と同意】被験者に研究の目的や内容を説明し,同意を得た上で測定を行った.【結果】被験者全てにおいて生波形データでは経過時間が進むにつれて振幅の増大が確認され,FFTデータではFG減少が確認された.2 回のpre/postでのFG割合の平均値は,1 回目は51.3 ± 8.2%/44.1 ± 8.5%,2 回目は48.2 ± 7.6%/44.8 ± 7.0%であり,FGの割合はpreと比べpostで有意な減少を認めた(p<0.01).さらに,2 回のpostに着目しFG割合の再現性を検討した結果,ICC(1.1)で0.692(p<0.01)と有意な再現性を認めた.また,測定中の心肺運動強度は中央値13.3%(6.0%—24.4%)で低強度負荷であることが示された.【考察】2 回ともFGの割合がpostで減少したことは,筋疲労に合わせ低い周波数帯域へ移行したことを示す結果となった.さらに,2 回のpostでのFGの割合には一定の再現性がみられ,本研究の臨床応用の可能性を示す結果となった.一方で,本研究では高い再現性を示すことができなかった.これは,BIODEX大腿固定ベルトの影響で末梢部への電極装着となり,内側広筋とのcross talkが生じたことや評価機器によるノイズを十分に除去できなかったことが考えられる.また,被験者の活動レベル,測定期間を統一できなかったことも原因として考えられ,今後の検討課題となった.安全性の検証においては,正保らは40%程度の心肺運動負荷では運動中の自律神経に与える影響が少ないとしており,本研究における心肺運動負荷は低強度であったことが示された.そのため,本研究はリスクの高い心疾患患者あるいは高齢者,低体力患者でも使用できる筋持久力評価の可能性を示した.【理学療法学研究としての意義】EMGを用いた低強度での筋持久力評価の可能性を示せば,疾患,年齢によらず定量的評価が可能であると考える.さらに,筋線維タイプの移行が明確となれば,適切なトレーニング方法,強度,頻度,持続時間など選択できる可能性がある.理学療法として,本研究の手法は臨床応用の可能性を示すものであった.
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© 2013 日本理学療法士協会
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