理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-22
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ポスター発表
急性期における施行単位数の増加が大腿骨頸部・転子部骨折術後患者の身体機能と歩行能力に与える影響
岩佐 太一成瀬 由季子和田 真明小林 啓美尾倉 朝美山瀬 薫北島 宏和川勝 邦浩
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抄録
【はじめに、目的】日本整形外科学会がまとめた大腿骨頸部・転子部骨折のガイドラインには加速的リハビリテーションは有効であると推奨されており多くの急性期病院でクリニカルパスが導入されている.しかし,集中的リハビリテーションについては研究そのものが少なく,その有効性についても賛否両論である.大半の回復期病院では集中的リハビリテーションが行われているが,急性期病院では1日に1単位しか施行できていない所がほとんどである.本研究の目的は大腿骨頸部・転子部骨折患者に対して,急性期における理学療法の一日の施行単位数増加が身体機能や動作能力の改善に影響するかを明らかにし,集中的リハビリテーションの有効性と問題点について検討することである.【方法】対象は2011年4月~2012年6月の間に当院に入院し,大腿骨頸部骨折・転子部骨折に対し人工骨頭置換術および骨接合術を施行された急性期の患者である.このうち「受傷前から歩行困難な者,多発骨折の者,術後に合併症を発症し安静を余儀なくされた者,従命困難な者」は除外した.上記の対象期間を前半と後半に分け,前半に入院してきた患者を従来通りの1日1単位施行群(29名)とし,後半を1日2単位施行群(23名)とした.施行する理学療法の内容については従来通りのものとし,2単位施行群については午前と午後の2回行った.また,医師の了承を得た上で両群ともに可能であればクリニカルパスよりも早く進めて良いものとした.測定は退院・転院する前日に行うこととして,この時にT字杖歩行以上の歩行を獲得できた者のみを測定した.そして歩行を獲得できた1単位施行群をコントロール群とし,同様に2単位施行群を介入群とした.測定項目は5分間の歩行距離(以下,5分間歩行テスト)・10m歩行テスト・立ち上がりテスト・Timed Up & Go Test(以下,TUG)でありその結果を2群間で比較した.また歩行器歩行とT字杖歩行の病棟での自立時期についても手術からの経過日数を比較した.統計学的解析はMann-Whitney’s U testを用いて行い,危険率0.05未満を有意差ありとした.【倫理的配慮、説明と同意】患者には十分な説明を行い,個人情報保護の徹底と不参加による不利益を被らないことを伝えた上で書面で同意を得た.なお,本研究を実施するにあたり当院の倫理委員会から承認を得ている.(承認番号2011001).【結果】1単位施行群の29名(82.3±8.7歳)中歩行を獲得できたのは19名(コントロール群,79.9±8.7歳)であり,これに対して2単位施行群の23名(76.3±10.1歳)のうち歩行を獲得できたのは21名(介入群,75.0±9.6歳)であった.この2群間の各測定項目について比較すると,5分間歩行テスト・10m歩行テスト・立ち上がりテストでは介入群の方が有意に良い結果であった(p<0.05).TUGでは有意差は見られなかったが介入群の方がより良い傾向にあることが確認された(p=0.06).さらに各歩行の病棟自立時期は介入群の方が有意に早かった(p<0.01).平均をみると介入群が歩行器歩行は5.2日,T字杖歩行も5.2日早く病棟で自立していた.【考察】対象群であった1単位施行群(29名)と2単位施行群(23名)を比較すると1単位施行群の方が歩行獲得に至らなかった者が多かった.その原因は1単位施行群の年齢が有意に高く,さらに歩行非獲得者を個別に調べてみると受傷前から活動量が低下していたものがほとんどであった.そのため歩行獲得率に差が出たことが2単位施行による影響とは断言できない.しかし,コントロール群と介入群は男女比・年齢・術式に有意な差はなく,また測定を実施した日(術後からの経過日数)にも有意な差が認められなかったことからほぼ同じ属性の群を同じ条件で測定できたと言える.その上で2群を比較したところ急性期において理学療法を集中的に施行することが身体機能・能力の改善に有効であることが証明された.その要因として,各歩行の自立が早まったことで病棟での活動量が増え廃用の予防や運動学習の促進につながったのではないかと考える.参加したセラピストにアンケート調査を行ったところ,2単位施行するメリットとして「歩行のレベルを上げるタイミングを1単位施行群では翌日にしていたことが,2単位施行群ではその日の午後にすることができた」という回答が得られている.また「充分な筋力トレーニングができる」など,セラピストに余裕ができることでより質の高い理学療法を提供できたことが今回の結果に影響したのではないかと考える.しかし、デメリットとして「2単位を続けるには人手不足」といった問題点が挙げられた.【理学療法学研究としての意義】本研究の結果から,急性期の大腿骨頸部・転子部骨折術後に対しての集中的リハビリテーションの有効性が認められたと考える.本研究が急性期における理学療法の施行単位数を増やす体制作りを検討するきっかけになればと考える.
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© 2013 日本理学療法士協会
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