抄録
【はじめに、目的】近年、スポーツ障害予防に関する重要性が叫ばれているが、ミニバスケットボール選手(小学生)を対象とした報告は少ない。そこで、障害予防活動の一助とするために、群馬県ミニバスケットボール選手の障害発生状況を調査した。【方法】群馬県ミニバスケットボール選手451名(4年生男子:68名、4年生女子:79名、5年生男子:151名、5年生女子:153名)を対象に障害発生状況に関するアンケート調査を実施した。内容は、学年、年齢、性別、疼痛の有無と程度(足関節・膝関節)、既往歴、医療機関受診の有無、練習日数と時間について等である。【倫理的配慮、説明と同意】アンケート調査により得られたデータの利用について、書面にて説明し同意を得た。【結果】アンケート回収率は61.1%であった。足関節痛について、過去に足関節痛を有した経験のある選手は全体の199名(44.1%)で、4年生男子28名(41.2%)、女子31名(39.2%)、5年生男子74名(49.0%)、女子66名(43.1%)であった。現在、足関節痛を有している選手は全体の35名(7.7%)で、4年生男子6名(8.8%)、女子6名(7.6%)、5年生男子10名(6.6%)、女子13名(8.5%)であった。各群における有意差は認められなかった。膝関節痛について、過去に膝関節痛を有した経験のある選手は全体の167名(37.0%)で、4年生男子22名(32.4%)、女子23名(29.1%)、5年生男子65名(43.1%)、女子58名(37.9%)であった。現在、膝関節痛を有している選手は全体の55名(12.2%)で、4年生男子6名(8.8%)、女子9名(11.4%)、5年生男子21名(13.9%)、女子19名(12.4%)であった。各群における有意差は認められなかった。また、過去・現在の経験を含め、足関節または膝関節痛を有した経験のある選手は全体の263名(58.3%)であった。医療機関への受診率は、過去に受診した選手35名(9.6%)、現在受診している選手13名(14.9%)であった。平均練習日数は週4±1.02回、1回の平均練習時間は1日2時間53分±1時間14分であった。【考察】成田ら(2001)は、バスケットボールは競技特性から下肢関節に多大な負荷がかかり、足関節や膝関節に外傷や障害が発生し易いと報告している。また、狩野ら(1998)は、近年、スポーツ選手の低年齢化が進み、成長期においてスポーツ選手の障害は高頻度で発生していると述べている。今回の調査結果より、58.3%の選手が過去・現在の経験を含め足関節や膝関節に疼痛を有していた事が分かった。10~11歳頃は骨格の活発な発育によって身長が急速に伸びる時期である。今回の疼痛経験者の割合からも、成長期を迎えるミニバスケットボール選手にとって足関節や膝関節の障害が高頻度に発生する危険性を持っていると考えられた。その他に、ミニバスケットボール選手の平均練習日数と時間を調査したが、日本臨床スポーツ医学会における青少年の野球障害に対する提言の中では、「小学生の練習は、週3日以内、1日2時間を超えない事が望ましい」とされている。今回の群馬県ミニバスケットボール選手の練習量を比較すると、日数・時間ともにミニバスケットボールの方が上回っていた。この事も、疼痛の起因となっている可能性があると推察する。今回、アンケート調査のみを実施したが、アンケート結果だけでは障害発生と身体特性の関連等の精査は困難である。また、「運動器の10年」における「成長期のスポーツ外傷予防啓発委員会」では、成長期のピッチャーを対象とした障害予防の取り組みを行っている。一方、ミニバスケットボール選手を対象とした障害予防活動や報告は、未だに少ないのが実状である。今後の関わりとして、障害発生状況を調査するだけではなく、身体状況を定期的に把握する為にメディカルチェックを実施する事、バスケットボール特有の障害や成長期特有の障害、身体能力・練習内容や量との関連を明らかにし情報提供をしていく事で、成長期のミニバスケットボール選手の障害予防を図っていきたい。また、それらの活動を通し、選手、保護者、監督・コーチの障害予防に対する認識の向上を促していきたいと考えている。【理学療法学研究としての意義】ミニバスケットボール選手の障害発生状況を調査する事で、成長期である選手の障害予防を図る為の一助とする。