理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-O-13
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一般口述発表
男子バスケットボール選手に対する予防プログラムの効果
栗原 智久大見 頼一尹 成祚川島 達宏長妻 香織土井 朋美吉本 真純川島 敏生栗山 節郎宮本 謙司遠藤 なな服部 紗都子野口 恵
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抄録

【はじめに】近年、膝前十字靭帯(以下ACL)損傷を中心とした予防プログラムの効果が諸家により報告されており、我々も女子バスケットボール選手を対象に予防プログラムを行いACL損傷の発生率が減少したと報告している。女子バスケットボール選手に対する予防プログラムの効果は散見されるが、男子スポーツ選手を対象としたものは少なく、男子バスケットボール選手に対する予防プログラムの効果についての報告は見られない。また、下肢スポーツ外傷予防を目的として作成された予防プログラムによって下肢スポーツ障害が減少するか否かを検討した報告も見られない。本研究の目的は、男子大学トップレベルのバスケットボール選手に対する予防プログラムが下肢スポーツ外傷と下肢スポーツ障害の発生状況に及ぼす効果について検証することである。【方法】対象は関東大学1部リーグの男子バスケットボール選手、コントロール期44名、介入期43名とした。介入前2年間をコントロール期とし、介入後2年間を介入期とした。傷害の定義として、下肢スポーツ外傷は1回の急激な外力によって発生するものとし、下肢スポーツ障害は度重なるストレスによって発生するものとした。発生件数は練習・試合を1日以上休んだものを1件と定義した。介入方法として知識教育と実技の講習会を選手と指導者を対象に年間3回行った。正しいアライメントや動作方法を画像と動画を用いて講義し、実技として二人一組でのアライメントチェックやジャンプ着地、ストップ動作などの動作指導を行った。予防プログラムはジャンプ・筋力強化・バランス・ストレッチングの4種類で構成し、頻度はトレーニング期が週2~3回以上とし、試合期は週1回以上とした。練習・試合時間と傷害が発生した人数を記録し、1000player-hour(1000PH)当たりの傷害発生率を算出し、相対危険度を用いて比較した。【倫理的配慮】対象には本研究の趣旨を説明し、ヘルシンキ宣言に基づく倫理的配慮を十分に行い、実施した。【結果】コントロール期の下肢スポーツ外傷は69件、下肢スポーツ障害は41件であった。介入期の下肢スポーツ外傷は31件で下肢スポーツ障害は13件であった。1000PH当たりの発生率は、下肢外傷がコントロール期0.019/1000PH、介入期0.009/1000PHであり有意(リスク比0.482,p<0.05)に減少した。下肢スポーツ障害はコントロール期0.011/1000PH、介入期0.004/1000PHであり有意(リスク比0.340,p<0.05)に減少していた。【考察】今回、男子バスケットボール選手を対象に予防を行った結果、下肢スポーツ外傷、下肢スポーツ障害ともに有意に減少した。今回、我々が作成した予防プログラムはACL損傷を中心とした下肢スポーツ外傷予防を目的したが、下肢スポーツ障害も減少が見られた。我々の先行研究では、女子バスケットボール選手における予防プログラムの効果として片脚着地時の股・膝関節屈曲角度の増大と垂直方向最大床反力が減少したと報告している。このため、予防プログラムによって筋力強化やバランスなどで股関節の動きと使い方を学習し、動作指導により正しいアライメントでのジャンプ着地やストップ動作を行うことで床反力が減少し、下肢の各関節へのストレスが軽減され下肢スポーツ障害が減少したと考えられる。大学トップレベルの男子バスケットボール選手においても下肢スポーツ外傷と下肢スポーツ障害の減少に予防プログラムが有効であることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】近年、傷害予防は理学療法の分野においても注目を受けており、男子・女子選手ともに予防プログラムの効果が得られたことは傷害を有する患者に対する再発予防の理学療法の発展にもつながると考えられる。

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© 2013 日本理学療法士協会
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