理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-P-20
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ポスター発表
慢性期病院における長期入院患者の栄養状態把握と理学療法介入によるリスク
木村 大輔前田 朱里村田 味菜子木村 祐子布谷 尚大林 義孝阿部 和夫
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抄録
【はじめに、目的】 超高齢化社会の到来に伴い、基礎疾患や合併症を有するために介護療養型医療施設(介護型病棟)への長期入院患者が増加しており、慢性期理学療法に対する需要は増加している。慢性期理学療法は、いくつかの点で通常の理学療法(PT)とは異なっており、患者の栄養状態に対する配慮が必要であることは見逃されがちである。介護型病棟に多く入院している介護度5の患者の60%以上が低栄養状態にあると言われている。疾患別には、慢性肺疾患の20~70%、脳血管障害の50%、認知症患者の12~50%が栄養障害を有しているという報告がある。こうした患者にPTを実施する際には、消費されるエネルギーを考慮に入れてPTを行うべきであるが、慢性期PTでの栄養状態に関する研究は少ない。本研究では、当院の介護型病棟入院患者を対象として、各患者の栄養状態とPT1回あたりの活動消費エネルギー(PT消費エネルギー)、食事などによる供給エネルギーおよび入院生活での必要エネルギーを栄養摂取方法・動作レベル別に算出し、慢性期PTを行う上で配慮すべき点について考察した。【方法】 平成24年8月での当院入院患者の中でPTを実施した45名(一般病棟6名、介護型病棟39名)を対象とした。対象を栄養摂取方法と動作レベルから経管栄養ベッドサイド群8名(A群)、経管栄養座位保持群11名(B群)、経口栄養座位保持群11名(C群)、経口栄養歩行練習群9名(D群)、経口栄養歩行自立群6名(E群)の5群に分類した。 栄養状態と供給エネルギー、必要エネルギー、PT消費エネルギーを算出した。栄養状態は、Body Mass Index (BMI)および血清中アルブミン値(alb値)を指標とした。供給エネルギーは、当院栄養科の記録から推定した。必要エネルギーは、Harris-Benedictの予測式を用いて計算した。PT消費エネルギーは、大森らのエネルギー消費量から、エネルギー消費量(kcal/kg/min)×体重×活動時間×補正係数の計算式を用いて算出した。必要エネルギーとPT活動消費エネルギーの総和を総消費エネルギーとした。この総消費エネルギーと供給エネルギーの比較を対象とした5群間において行った。統計はSPSSを用いて、Bonferroni法により各群間で比較した。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は、当院の倫理審査で承認された。【結果】 対象者のBMIおよびalb値は群間で差がなく、r=0.11と有意な相関は認められなかったが、alb 値からは患者の81.6%が低栄養と判定された。供給エネルギーは、D、E群のみ他群と有意な差を示し、平均値はA群876.9±308.8、B群872.7±113.5、C群1162.7±269.8、D群1339.4±217.3、E群1450.0±180.3kcalであった。必要エネルギーは、群間で差がなくA群1113.8±302.2、B群1153.5±178.7、C群1171.2±162.7、D群1229.0±169.5、E群1443.8±241.7kcalであった。PT消費エネルギーは、E群のみ他群と差を示し、A群8.9±3.0、B群10.2±4.3、C群14.4±5.6、D群28.5±13.4、E群65.7±35.4kcalであった。総消費エネルギーはA群とE群間で有意な差を示し、A群1122.6±304.1、B群1163.8±180.7、C群1185.6±161.5、D群1257.5±178.7、E群1509.6±269.6kcalであった。総消費エネルギーと供給エネルギーを比較すると、エネルギー出納は群間に差はなく、経口摂取で歩行練習を行っているD群以外は負であった。【考察】 必要エネルギーに対する供給エネルギーのエネルギー出納は、動作レベルに関係なく経管栄養摂取患者で負となっており、PTにより総消費エネルギーを増加させ、低栄養状態をさらに進行させてしまう可能性がある。また、D群ではエネルギー出納が正であったが、E群では負となっていた。このことは、経口栄養歩行練習群が歩行自立を獲得することで総消費エネルギーを増加させ、PTを行うことが栄養状態を悪化させる可能性を示しており、歩行能力を獲得した段階で、栄養科を交えて供給エネルギーの見直しを行う必要があることを示唆していた。 本研究では、歩行自立群が少なく、今後はより対象者を増やす必要がある。さらに、健常者の資料に基づきPT消費エネルギーを算出したが、慢性疾患を有する高齢者においては、健常者よりも多くのエネルギーが必要となることが予想され、PT消費エネルギーを過少に評価している可能性がある。【理学療法学研究としての意義】 今後の需要増加が見込まれる慢性期リハビリテーションにおける長期入院患者の栄養状態とPTとの関連性に注目することで、安全で有効な慢性期PTの創出が期待される。
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© 2013 日本理学療法士協会
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