抄録
【はじめに、目的】回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期病棟)は集中的医療サービスにより機能回復および日常生活動作(以下、ADL)能力の向上、家庭復帰を目指す医療である。回復期病棟において直接ADL動作へ介入することが在宅復帰やADL能力獲得に大きく関わると言われている。それに伴い活動向上訓練の重要性が指摘されている。そこで今回活動向上訓練の取り組みのひとつとして、統一したADL介入を挙げ、ADL手順・方法獲得の学習効果を狙った統一したADL介入がもたらす効果を明らかにすることを目的とした。【方法】当院回復期病棟124床のうち1病棟44床を対象とした。2010年4月から2012年3月までに回復期病棟を退院した脳血管疾患患者224名を対象とした。この中で、2010年4月から2011年3月に退院した患者(以下、2010年度群)と2011年4月から2012年3月に退院した患者(以下、2011年度群)に分け、更に看護必要度10点以上の群(以下、重症群)と看護必要度10点未満の群(以下、軽症群)に分類した。方法は、2010年度群と2011年度群に分け2010年度のからのADL介入のテーマを、1.ICFモデルを用いて「活動全体を見る」、2.目標指向的アプローチのもと考えることを挙げた。2011年度は上記のテーマに加え、3.ADL介入一覧表の作成、4.ADLフォロー表の作成、5.ADL検討会の実施を挙げた。年度ごとに重症群と軽症群別に、看護必要度の改善率、FIM利得、在院日数、在宅復帰率を比較・分析した。【倫理的配慮、説明と同意】当院委員会において、今回のデータを使用する目的を説明し、許可を得た。【結果】重症群の割合は2010年度群35.9%、2011年度群30.2%であった。看護必要度の改善率は2010年度群の重症群3.0ポイント、軽症群3.0ポイント、2011年度群の重症群3.5ポイント、軽症群2.7ポイントであった。FIMは2010年度群の重症群入院時合計点は33.5点、退院時合計点47.1点で利得が13.6ポイントとなった。軽症群入院時合計点は77.3点、退院時合計点92.0点で利得が14.7ポイントであった。2011年度群の重症群入院時合計点は41.5点、退院時合計点55.8点で利得が14.3ポイントとなった。軽症群入院時合計点は78.1点、退院時合計点96.3点で利得が18.2ポイントであった。重症群は看護必要度の向上が認められ、軽症群はFIM利得の向上がより大きいことが分かった。在院日数は2010年度群の重症群117.5日、軽症群96.2日、2011年度群の重症群115.9日、軽症群102.1日であった。在宅復帰率は2010年度群の重症群43.4%、軽症群80.4%、2011年度群の重症群51.7%、軽症群80.5%であった。【考察】看護必要度では重症群の改善率向上が認められた。これは統一した介入によりできる項目が増加したことが考えられる。FIM利得では軽症群・重症群共に向上が認められた。中でも、軽症群の向上が大きく動作の要素的改善が得やすいことが考えられる。看護必要度の評価は可否の評価となり、FIMの評価は介助量の評価となっている。FIMの合計点から考えると、重症群は全介助の状態から中等度介助レベルになっている。全介助が中等度になりできる項目が増えていることは看護必要度が向上しやすいと予測される。一方、軽症群は最小介助から見守りレベルに変化している。最小介助から見守りになるとFIM利得は向上するが自立には至っていないため看護必要度の向上は得にくいことが考えられる。このことより重症群の看護必要度がより多く向上し、軽症群のFIMがより向上したと考える。同一環境での統一したADL介入は、繰り返し動作を行うことで運動の学習が促される。効率よく介入できていることがFIMの向上の要因であると考える。在院日数と在宅復帰率はADL介入だけでは向上が難しいことが推測される。これには家族環境や介護保険申請の時期など社会的側面の影響もあると考える。リハビリスタッフとして心身機能・活動評価を明確に実施し、ADL介入を行いADL能力の向上、ADL能力に必要な心身機能の向上を図ると共に他職種と協業して退院後の生活にスムーズに移行できることが必要である。【理学療法学研究としての意義】統一したADL介入が回復期病棟の入院評価として使用される看護必要度やFIMに与える影響を知り、より効率の良い介入方法を考えるきっかけとなる。