理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-O-03
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一般口述発表
タッチによる姿勢安定化に荷重の加え方が及ぼす影響
安田 圭佑古名 丈人井平 光水本 淳牧野 圭太郎
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抄録
【はじめに、目的】立位時に固定物に触ることで指先の皮膚を介して機械受容器が興奮し,体性感覚入力が増加することでCOP(Center of Pressure)の動揺が減少すると報告されている。特に,固定物に指先が加える力(コンタクトフォース)が1N以下であると,指先による力学的な支持の影響は小さいと報告されている。このようなタッチを用いた立位姿勢の安定化に関する研究の中で,触圧覚の重要性について報告されている一方で,固定物への荷重の加え方がCOP動揺の減少に影響するかについて明らかとされていない。先行研究のように固定物に触る時のコンタクトフォースを任意とした場合身体の動揺が大きくなると皮膚の変位が大きくなるが,コンタクトフォースを一定にする課題を与えた場合皮膚の変位が小さくなるために従来の方法に比べてCOP動揺が増加する可能性が予想される。本研究では,従来の方法によるタッチの場合とコンタクトフォースを一定とした場合のCOP動揺の比較を行うことで,固定物への荷重の加え方がタッチによる姿勢安定化に影響を与えるのかどうか検討することを目的とした。【方法】対象は健常成人男女16 名(平均年齢22.5 ± 1.3 歳,男8 名,女性8 名)とした。対象者には,床反力計(Kistler社製)の上で左足を前としたタンデム立位を取らせ,体側に垂らした右示指の位置に設置したピンチメータ(Biometrics社製)に示指の指腹を接触させた。被験者の前にはディスプレイを設置し,ピンチメータから得たコンタクトフォースをリアルタイムに掲示した。測定条件は,ピンチメータに触る条件を1)1N以下の任意の力で触るPrefer条件,2)0.2Nの一定の力で触る0.2N条件,3)0.5Nの一定の力で触る0.5N条件の3 条件に設定した。0.2 条件と0.5N条件では,ディスプレイ上の0.2Nおよび0.5Nの位置にターゲットとなるラインを掲示し,出来る限りそのラインにコンタクトフォースを合わせるよう教示した。試行はブロックランダマイズ化し,各4 試行測定した。床反力計およびピンチメータのサンプリング周波数は1000Hz とし,測定した30 秒間のうち最初と最後の2 秒間を除く20 秒間を解析区間とした。床半力データからCOPを算出し,COPおよびピンチメータのデータはフィルター処理後,COPデータから動揺速度および実効値面積,前後・左右方向の平均動揺振幅を算出し,ピンチメータデータから平均値および変動係数を算出した。統計学的分析として3 条件で得られた全ての変数に対し反復測定分散分析を行い,主効果の検討を行った。また,有意性が確認された場合Bonfferoniによる事後検定を行い有意性の検討を行った。統計解析にはSPSS19.0 を使用し,有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】対象者にはヘルシンキ宣言の趣旨に沿い本研究の主旨および目的を口頭と書面にて説明し,書面にて同意を得た。なお,本研究は札幌医科大学倫理審査委員会の承認を受けて実施した。【結果】コンタクトフォースの平均値は,Prefer条件が0.191 ± 0.020N,0.2N条件が0.215 ± 0.005N,0.5N条件が0.498 ± 0.004N であり,Prefer条件および0.2N条件に比べて0.5N条件で有意に大きい値であった(p<0.05)。実効値面積および左右方向の平均動揺振幅は,Prefer条件に比べて0.2N条件および0.5N条件でそれぞれ有意な減少がみられ(p<0.05),0.2N条件と0.5N 条件の間では有意差はみられなかった。動揺速度および前後方向の平均動揺振幅は,3条件の間で有意差はみられなかった。【考察】従来のタッチ課題に比べて一定の力で触る課題を課すことで,左右方向の動揺の大きさおよび重心動揺面積が有意に減少した。動揺速度については3 条件で有意な差がみられなかった。これらのことから,固定物への荷重の加え方の違いは,身体動揺の振幅の大きさに影響を与える一方で,身体動揺の速さには影響を与えない可能性が考えられた。先行研究では0.2-0.5N程度の力が指先に加わったときにCOP動揺が減少すると報告されており,指先に加わる力が変動せずに一定であっても0.2-0.5N程度の力が指先に加わるということが身体動揺の安定化に重要である可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】感覚障害や加齢によるバランス機能低下に対してアプローチする際に,上肢からの体性感覚入力による姿勢安定化の有用性を考える上での基礎的な知見を得ることが出来る。
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© 2013 日本理学療法士協会
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