理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-O-03
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一般口述発表
一次体性感覚野への陰極経頭蓋直流電流刺激が短潜時および長潜時求心性抑制に及ぼす影響
小島 翔宮口 翔太菅原 和広桐本 光田巻 弘之大西 秀明
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抄録
【はじめに、目的】末梢からの体性感覚入力は大脳皮質の興奮性を抑制することが報告されている.正中神経刺激の約20 msから40 ms 後に一次運動野上に経頭蓋磁気刺激(Transcranial magnetic stimulation:TMS)を行うと,皮質脊髄路の興奮性の指標である運動誘発電位(Motor evoked potential:MEP)の減弱が認められる.この現象は短潜時求心性抑制(Short latency afferent inhibition:SAI)といわれている(Tokimura et al. 2000).また,正中神経刺激の約200ms後にTMSを行った場合においても同様の現象が起こり,長潜時求心性抑制(Long latency afferent inhibition:LAI)といわれている(Chen et al. 1999).SAIおよびLAIに関する先行研究では,パーキンソン病やジストニアなどの疾患によって変動することが報告されており,運動評価の指標として応用できる可能性が示唆されている.またSAIおよびLAIは,一次体性感覚野(S1)の関与が示唆されているが,詳細なメカニズムについては未だ不明な点が多い.経頭蓋直流電流刺激(transcranial direct current stimulation: tDCS)の陰極を大脳皮質上に貼付した場合,電極直下の大脳皮質の興奮性を抑制させることが可能である.そこで本研究では,S1 への陰極tDCSがSAIおよびLAIに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.【方法】対象は健常成人6 名(22.2 ± 0.4 歳)であった. MEPの計測には磁気刺激装置Magstim 200(8 の字コイル)を使用した.TMS刺激部位は左大脳皮質一次運動野手指領域とし,導出筋は右第一背側骨間筋とした.磁気刺激強度は,安静時に1mVのMEP振幅が50%以上の確率で誘発される強度とした.末梢電気刺激にはring電極を使用し,刺激部位は右示指とした.刺激強度は感覚閾値の3 倍とし,0.2Hzの矩形波を使用した.末梢電気刺激とTMSの刺激間隔は40 ms(SAI)および180ms(LAI)とした.陰極tDCSは陰極電極(3mm× 3mm)を一次体性感覚野,陽極電極(5mm× 7mm)を右眼窩上部に貼付した.刺激強度は1mAとし,刺激時間は15 分間とした.SAIおよびLAIの測定は,tDCS介入前(pre),tDCS介入直後(post1),tDCS介入15 分後(post2)に行い,磁気刺激のみの条件を含めた3 条件の刺激を各12 回ランダムに行った.MEP振幅値は12 回の計測波形のうち,振幅が最大および最小の波形を除いた10 波形を加算平均し,その波形のpeak to peakの平均値とした.各刺激条件におけるMEP振幅値の比較には,反復測定による一元配置分散分析を用い,有意水準は5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】本研究は所属機関の倫理委員会の承認を得て実施した.また,すべての対象者には,本研究の目的や実験内容等について十分な説明を行い,書面にて参加の同意を得た.【結果】磁気刺激のみ条件で得られたMEP振幅値(mean±SEM)は,0.91±0.08mV (pre),0.87±0.06mV (post1),0.88±0.09mV(post2)となり,tDCS介入による有意な変化は認められなかった.また,LAI条件時においても,tDCS介入による有意な変化は認められなかった.しかし,SAI条件時のMEP振幅値は,0.47±0.10mV (pre),0.51±0.10mV (post1),0.66±0.10mV(post2)となり,preに比べpost2 においてMEP振幅の有意な増加が認められ(p<0.05).【考察】本研究において,SAI条件時のMEP振幅が増加したことから,S1 領域への陰極tDCSがSAIによる抑制効果を減弱させることが示唆された.tDCSに関する先行研究では,S1 領域に陰極tDCSを行うことで末梢電気刺激による体性感覚誘発電位の減少が報告されている(Dieckhofer et al. 2006).また,SAIの抑制効果は,電気刺激強度の増加に伴い抑制効果が増大することや(Fischer et al. 2011),SAIにはS1 が関与している可能性が報告されている(Chen et al. 2004).本研究結果もこれらの先行研究を支持するものであり,陰極tDCSにより末梢からS1 への体性感覚入力が減少した結果として,SAIの抑制作用が減弱したのではないかと考えられる.【理学療法学研究としての意義】SAIおよびLAIの詳細なメカニズムを解明することは,運動評価の指標として応用するための基礎的データの提供となると考えられる.
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© 2013 日本理学療法士協会
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