理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-02
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ポスター発表
非外傷性多発性椎体骨折の特徴
川鍋 和弘指本 一正石井 陽峰篠原 淳依田 克也宮川 さゆり渡邊 直樹関田 真透嶌野 敦子川島 明岩本 潤
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抄録

【はじめに、目的】椎体骨折は最も頻度の高い骨粗鬆症骨折であり、わが国では70歳代前半の25%、80歳以上の43%に認められる。椎体骨折は疼痛、脊柱アライメント変化によるADL・QOLの低下、さらに消化器・呼吸器系の機能障害など様々な障害を招く。今回、我々は非外傷性多発性椎体骨折の特徴を知ることにより、椎体骨折の予防策を明らかにできないかと考え、調査を行った。【対象および方法】対象は当院を受診し、調査に同意を得られた閉経後骨粗鬆症患者27名(平均年齢:78歳、範囲:65~92歳)である。方法は1)評価表を作成し他記式の質問紙法にて骨折時の状況・現病歴・生活習慣の調査、2)脊椎X線写真による椎体骨折の評価(semi-quantitative assessment:SQ評価法)、3)CM-100による踵骨超音波骨量測定を実施した。【倫理的配慮、説明と同意】本臨床研究の目的を患者に十分に説明し、患者の自由意思による同意を口頭にて行った。【結果】<初回骨折時の状況(複数回答可)>1 気づかないうちに骨折(原因不明)21名 2 重い物を持ち上げたとき 7名 3 シャッター・ドアを閉めたとき 2名 4 マッサージなどを受けた後 2名 その他:掃除・草取り・椅子に座ったとき・介護・手をのばした時など・・・<平均椎体骨折数>3.3個3個以上の椎体圧迫骨折患者の37%は1年以内に2個目の新規椎体骨折を発症。<初回骨折時レントゲSQ評価>Grade I(軽度変形)8名 Grade II(中等度変形)4名 Grade III(高度変形)6名 Grade判別不可: 9名(初回複数骨折などのため)<骨量>骨粗鬆症(1479 m/s未満)14名 骨量減少(1470 m/s以上、1501 m/s未満)8名 正常(1501 m/s以上)1名<現病歴・生活習慣>1 現病歴・腎機能障害 74% ・高血圧 48% ・脂質代謝異常 33% ・糖尿病 22% ・心疾患 22% 2 過去に骨粗鬆症治療薬を服用したことがある者 5/27名 3 ステロイド使用者 0/27名 4 過去の運動習慣(~20歳頃まで) 習慣あり 1/27名 ・習慣なし 26/27名 5 飲酒あり 5/27名 ・なし 22/27名 6 喫煙あり 1/27名 ・なし 26/27名【考察】1 非外傷性椎体骨折患者は、骨強度が著しく低下しているため新規椎体骨折を発症する可能性が高い。特に3個以上の椎体骨折を有する患者の37%は初回骨折から1年以内に2個目の新規椎体骨折を起こしており1年以内に2個目の骨折を発症した患者は多発性椎体骨折を発症する可能性が高い。2 初回椎体骨折時SQ Grade I・IIの軽度な骨折においても骨強度が著しく低下している可能性がある。また、骨量においては「骨量減少・正常」が39%存在し、骨量・レントゲンのみで骨強度を判断することには注意が必要である。このため、腎機能障害・糖尿病・高血圧などの現病歴・生活習慣を考慮しながら総合的に治療法・治療薬を検討していくことが重要である。3 理学療法(徒手療法・運動療法)を行う上では、骨折の危険性を念頭に入れ胸・腰椎への過剰なストレスをかけないように注意しながら実施することが必要である。また、日常生活においても胸・腰椎への過剰な負担を減らすための患者への生活指導も重要となる。4 今回の研究では喫煙の影響は認められなかった。運動習慣においては、過去に運動習慣がない患者が多かった。【理学療法学研究としての意義】骨粗鬆症による骨折を予防し、生活の質を維持・改善することは理学療法士としての責務の一つである。今回の調査結果を念頭に置いたうえで、理学療法を実施していくことが肝要と考える

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© 2013 日本理学療法士協会
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